禍話リライト「ヤンボシ」【怪談手帖】
某登山口でふた昔ほど前に噂されていたという話。
宵の口、山の傍から降りてくる人影として、山伏のようなものが現れることがあったという。
本物の山伏、所謂修験者というわけではない。
それは、下ってくる人影の姿かたちを見れば分かる。
装いこそ、一般的に連想される伝統的な修験者の様子なのだが、その顔を見ただけで宗教に詳しくない登山者や若い人にもそれが異様な存在であることが分かるという。
輪郭の内側の真っ黒な顔の形にヌラヌラと煌めく幾つもの光点と、棚引く雲のような紋様が蠢き、渦巻い