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2021.10.19 いちばん好きな歌人

わたしの一番すきな歌人は、
笹井宏之さんである。

高校を卒業したくらいに
インターネットではじめて読み、
彼の言葉に宿る「いのち」の透明感に圧倒された。
自然や生き物、静物とのゆるやかな一体感、
同時に人間の理解を拒むかのような、
傷つきやすさが垣間見える歌たち。
短歌を読んで、涙が出るなんて初めてのことだった。

彼の訃報を知ったのは、
それから十年経ってからのことだったが
笹井さんの歌は、今も胸の奥底で
ふとした瞬間にこだましてくる。

ここ最近読みかえしていたのは
第一歌集の「ひとさらい」だ。
好きな歌を10首抜き出し、
眠れない夜のためのシェルターとしたい。

・からすうりみたいな歌をうたうから すごい色になるまでうたうから
・四ページくらいで飽きる本とかを背骨よりだいじにしています
・焼き鮭な人とグラジオラスな人どっちか選べ今すぐ選べ
・一生に一度ひらくという窓のむこう あなたは靴をそろえる
・日めくりをはがすと君の顔が出る 見飽きないので出てもよろしい
・一刀のナイフを深く刺すように朱肉の底へ沈めた苗字
・ゆるせないタイプは<なわばしご>だと分かっている でてこい、なわばしご
・「ねえ、気づいたら暗喩ばかりの中庭でなわとびをとびつづけているの」
・ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす
・晩年のあなたに窓をとりつけて日が暮れるまで磨いていたい


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