見出し画像

【私の読書記録】#5 博士の愛した数式/小川洋子

 みなさんこんにちは、春の空気を感じるようになって幸せな気持ちでいるツキです。
 みなさんの地域でも春を感じるなぁというところはありますか?私は都内に住んでいて随分前から春の陽気を感じることが多かったのですが、私の地元は3月に入って雪が解けはじめ、地面に少しだけ緑色が帰ってきています。

 大学の春休みも終盤に差し掛かっていますが、最近読んだ本の記録をしていきたいと思います。お時間ある方はどうぞお付き合いください(^^)

 私の読書記録、記念すべき(?)5冊目はこちら

『博士の愛した数式』著:小川洋子

 本屋さんや学校の図書館で1度は目にしたことのある方も多いのではないでしょうか?私はその1人でしたが、実際に読んだのは今回が初めてです。有名な作品で、映画化もされているそう。

 この作品を一言で表すとするなら、「愛」。
 愛はいつだって、どんな関係性だって、あたたかいものなのだということを感じることができる作品です。

 この作品は、家政婦の、その息子であるルート、私の勤務先に住む博士が、数字という毅然とした存在によって結ばれた縁が紡ぐあたたかい物語です。いえ、もしかすると、縁よりももっと頼りなくて、それでいて確かに存在する「運命」と言った方がいいかもしれません。


 依頼主である、母屋に住む博士の義姉から、家政婦として雇われた私は依頼された家へと足を運びます。しかし、その場所は他の家政婦が何人も辞めた場所で、不安を抱えながら初めての勤務に向かいました。
 依頼された家は、静寂のみが存在し、そこにひっそりと住んでいたのが博士でした。

 博士の背広には、びっしりとメモ用紙が留められていて、それだけで衝撃を受けます。しかし、それ以上に衝撃を受けるのは、メモ用紙が何枚も何枚も留められている理由。
 それは、「博士の記憶は80分しかもたない」ということ。

 でも博士は、80分しか記憶がもたなくとも、数学に関する知識は呼吸と共にあるほど、常に存在していました。
 子どもがいると話すと、子どもは母親といた方がいいと息子も招きます。初めて息子に会った時に、博士は彼にルートと名付けました。理由は、彼の頭のてっぺんがルート記号のように平らだから。
 どんなときでもやはり、博士は数学と生きています。数学に真正面から向き合い、そして、丁寧に触れていく。まるで愛する者に触れるように、大切に数学を愛しているのです。

 ですが、彼が愛したのは数学だけではありませんでした。ルートという子どもは、博士にとってはいつまでも守るべきか弱き存在でした。どんなに数学に没頭していてもルートが博士に話しかければ、いつでもルートの方に顔を向け、数学と同じように丁寧に関わるのでした。

 物語の終盤、家政婦の私もルートも博士から離れなければいけなくなるときがやってきます。
 彼らを繋いだ数学というもの、数字というもの。距離が変化しても、関係性が変化しても、永遠に続くもの。
 どんな変化が訪れたとしても、わたしは数字を見る度に博士を思い出します。


 この作品を読み終えたとき、わたしがこれまで目を合わせようとしてこなかった日常に息づく数字に意味が生まれました。
 作品中ののように、数字を見ると博士を思い出します。その数字も博士が愛したもののひとつであると思うと、それだけで尊いものに感じるのです。

 最後になりますが、

「数学と文学は相容れるか」

 その答えは……。

 作品を読んで感想を教えてくださいね

 今回はこのあたりで失礼します🌙

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?