期間限定の恋草
「恋なんて壮大な勘違いだよ」
と、あなたは言った。だから忘れるよ、今だけだよ、と。
期間限定だった。あなたがすぐにここを去ることはわかっていたから。
「期間限定品って逃したくなくなるじゃん。そういうことだよ」
と、あなたは言う。わたしが好きになった笑顔で。残酷な人だ。わたしは小さくにらんだ。
勘違いでもなんでもよかった。だから、わたしがいいのかダメなのかを言ってほしかった。それなのに、あなたは最後までイエスもノーも告げてはくれなかった。ずるいなあ。
「大人になったら、今よりもっと誰かを好きになれると思うよ」
そんなことない。……と、大人じゃないわたしは言えない。言いたいのに、言えない。長く生きていくなかでのひとつの想いだなんてことはわかっているけど、そんなこと言わないでほしかった。
教育実習で来た田川先生。わたしは先生がいなくなった今でも、先生が好きだよ。今だけかもしれないけれど。
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