奇偉な進路
千帆が東京の専門学校に行くと言い出したのは、高2の終わりだった。
「お母さんにはめっちゃ反対されたんだけどね」
あっけらかんと笑う千帆が眩しい。わたしは、専門に行こうかどうか迷って、結局無難な四大に進路先を決めたから。
「ナナは賢いんだから、大学行った方がいいじゃん」
と千帆は言うけど、千帆の成績はわたしとは変わらない。「一応行っておいたら」という周りの声に飲まれた選択をしてしまったようで、忠告に耳を貸さなかった千帆が大人に思えた。
そんなことをちらりと伝えると、千帆はゲラゲラ笑った。
「ナナは買いかぶりすぎなんだよ。あたしが賢かったのは中学までだもん。大学行って勉強するより、専門行って絵を描きたいだけだからさ。あたしが偉かったらナナも偉いよ。というか、みんな偉いんだよ」
そう言い切る千帆はやっぱり眩しくて、わたしは「進路って、進む路って書くんだもんねえ」だなんて、とんちんかんなことを言った。
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