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いつか振り返る場所


昔好きだった曲。好きだった本。好きだった映画。

そういうものに触れると、ふわあっとその当時のことが思い出される。


春の甘やかな匂い。夏の夕立の蒸し暑さ。秋の夜風。冬の張り詰めた夜中の空気。

そういうものに触れるたび、心が揺らいで、今いる場所がわからなくなる。


目の前には、「僕」を詰め込んだ、やわらかな「何か」が浮かんでいる。

出会った人、起きたこと、住んでいた場所。


辛かったこともたくさんあったはずなのに、キラキラ小さく輝いている良い思い出が、ふんわりとやさしく包んでいるせいで、それはとても綺麗だ。


キラキラが壊れないように、やさしく抱きしめる。苦しいのに温かいような気持ちが広がっていく。


後ろを振り返る。いつの間にか、とても遠いところにきたんだな。


前を見る。今いる場所を、キラキラを抱きしめて振り返る日が、いつかきっとくることを、僕は知っている。



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