はたらく

 ずるずると長い期間就活中の身だったが、いよいよ本格的に動き出さなければ生きていけなくなるので、動き出してみたものの気が進まない。

 新卒のころ、一度だけ正規で働いたことがある。雇用契約書と実際の労働条件が異なることに入社1日目に気づいてしまってから、絶望の二ヶ月間過ごした。朝5時半に起床、7時過ぎに家を出て、勤務先から遠すぎる更衣室で着替えを済ませ出勤。明るいけど重い空気の埃っぽい休憩室、壁を向いて食べる添加物味の弁当。食品を扱っているとは思えないバックヤードの風景。ラッシュの電車から吐き出され、キリキリと歩く人に向けて大声で呼び込むのが一番苦痛だった。締め作業を終え、退勤して家に着くのは22時頃。新入社員だったので週休2日は守られていたが、先輩社員の中には月の休日が片手にも満たない人もいた。人手は永遠に増えないが、店舗をどんどん増やそうとする会社。給料は良くない、売り上げ手当のようなものも、もちろんボーナスもない。数少ない休日も事務作業をする先輩の姿、わたしより早く出勤してわたしより遅く退勤するその先輩は、どこでそのモチベーションを保っていたのか、5年経った今もさっぱりわからない。ワーカーホリックというのはちょっと違う、ある意味洗脳のような、休日も会社と会社の人たちに時間を捧げるのが当たり前だよねとされる日本っぽい会社だった。個を殺して全てを上長に捧げよ、と。窮屈だった。
 一番面倒を見てくれていた上司に電話で訴えてみたら、訳のわからない提案ばかりされ、同期の男が使ったあとの、清掃も入っていない名古屋のウィークリーマンションの部屋でギャンギャン泣いた。その月に会社を辞めた。

 それからずっと非正規で働き、生活をしてきたけれど、いつまでもこの生活は続けるわけにはいかないよな、生活水準もあげたいし。仕事をするのは嫌いじゃないし、真面目にこなす自信はある。就活は全然うまくいってないけど、はやく仕事がしたい。自分にできることが増えていく喜びを知ってる。

でも、東京生活一発目の記憶がまだ頭にこびりついていて、就職するのが怖いのが本音です。


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