「西洋人が想像する日本酒」
UoCの「クリエイティビティ with AI」の、このマガジン担当の須田和博です。連載第2回も、試しに書いてみます。
「画題」を開発することで、生成AIを使ってクリエイティビティを創発してみようという「試み」の2回目は、行きがかりの生成物で考えたことを紹介します。
UoCでは、マンダラ(公開トークセッションや勉強会のようなもの)をサイト告知する際に「キービジュアル」と呼ばれる画像が必要になります。従来はアリモノの写真と告知タイトルをレイアウトして作っていましたが、今回「日本酒の基本の基本」の勉強会と試飲会ということで、生成AIでキービジュアルを作ってみることにしました。
講師をお願いする土居将之さんが、このたび「日本酒のエバンジェリスト」として、ヨーロッパに移住するというので、
「西洋人が想像する日本酒」
と、プロンプトを打ちこんで、Adobe社の「Firefly」で生成してみました。それが、この記事のヘッダーにも入れている、コチラです。
この微妙な感じは、なかなか出せないなぁ、と思いつつ、1点選ぼうと吟味しましたが、「コレは、お茶だよね」とか、「この太いのは、ソバつゆ入れだよね」とか、「なんで全部、ざる蕎麦のザルにのってるんだろう?」とか、「ざる蕎麦のザルの上に、さらに茶タクを置いてるなぁ」とか、、よく見ると、パターン化された思考の中に、ちょっと採用する訳にはいかない間違いがあり、かつ遠目に見ると「意外と普通」で、キービジュアルとしては弱すぎる。
というわけで、生成AIの画像を選ぶ人間CDとしては、これは「全ボツ」として、再度、パラメーターを変えて生成することにしました。
と言っても、ファイアフライをそんなに使い慣れているわけでもなく、「コンテンツタイプ」の「写真」か「アート」かのラジオボタンを切り替えたただけです。
そして、出て来たのが、コチラになります。
なるほど!欧米のデータベースを学習しているAIにとって「日本」って「桜と富士のある中国」なんだなぁーと、感心しきり。
「西洋人が想像する日本酒」というプロンプトで生成した画像ですが、これはつまり、「欧米のAIが想像する『西洋人が想像する日本酒』」なんだな、と気づいた次第。
俗に、生成AIにはデータベース由来の「偏見」が含まれると言いますが、まさにそれが、わかりやすく可視化されたということです。
ただ、画像としてはインパクトがあるので、キービジュアル向きではあるな、と思いセレクトすることにしました。
コレは、なかなか描ける絵じゃないわ。桜(ただし、枝ぶりは松)、富士、金閣、むこう正面ヌケにレインボーブリッジ?まである。しかも、なぜか腰まで水につかって、デカい壺を3回まわしている「お作法」の最中でしょうか?
そうだ、思い出しました。80年代の頃、当時、生意気な高校生だった自分たちは「日本を勘違い表現している映画」を「国辱ムービー」と称して面白がっていました。有名な例は、「ブレードランナー」(82)の雨のチャイナタウンの「2つで十分ですよ」のうどん屋のシーンや、浜美枝さんや丹波哲郎さんが出る「007は二度死ぬ」です。
結局、ある意味「キル・ビル」まで連綿と続く「日本勘違い表現」の最新版が、この「生成AI」の作り出す「コレ、どこの日本?」表現なんだろうな、と思います。
トンチンカンの味わい深さで、決勝候補に残った上の「アートA」ですが「コレは、どう見てもお茶だろう」と思ったので落として、最終的に採用にいたったのが、コチラです。
コレは、間違いなく「酒」ですね。4合ビンのスクリューキャップかな。ちょっとビンの肩が「いかり肩」で焼酎っぽいですが、それは問題ではない。この画像を採用し、こんなコピーを付けました。
「日本酒のコト、正しく理解して飲んでますか?」
アート担当の生成AIが、誤解ビジュアルを仕上げて来たら、コピー担当の人間が、それと響き合うコトバを付けて、1つの表現に仕上げる。アート&コピーの現在形のコラボレーション。
そして、出来上がったサイト用告知画像が、コチラです。
ちなみに、2023年12月20日(水)17:00〜19:00に、UoC会場にて実施します。参加希望の方は、コチラからお申し込みください。
この記事を書くのには、60分くらいかかりましたが、この告知画像は10分くらいで作りました。生成AIと人間CDのコラボは、このような形ですでに始まっているという、連載第2回目でした。ひきつづき、よろしくお願いいたします。
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