【現地レポ】新たな図書館
先日、新しくなった石川県立図書館を訪れた。7月中旬に移転オープンしたばかりの“本の宝庫”は、これまでの図書館のイメージを打ち破るものだった。
1.めぐりめぐる知と未来。
まずこの図書館に関する印象深い言葉に“めぐりめぐる知と未来”がある。図書館のホームページには、以下の一節がある。
本の文化が廃れつつある昨今、その価値と可能性を論じた、図書館の真理だと思う。この考えを根本に、この図書館は設計されている。
2.美の設計
吹き抜けから差し込む柔らかな光に、円形に並ぶ本棚...正面入り口を進み閲覧エリアに入ると、そこは大きな円形劇場だ。「小説」や「実用書」といった一般的な本の分類は用いず、「暮らしを広げる」や「世界に飛び出す」など12のテーマからなり、本の配架や見せ方に関する工夫は、どれも好奇心揺すぶるものばかりだ。
開架冊数は以前の11万冊から30万冊へ、地下書庫収蔵は200万冊...国内の公立図書館の中でも最大規模。広いが故に、今どこにいるのかわからなくなるかもしれない。そんな時は上を向こう。円形の館内には、加賀五彩を用いた 大きな旗が目印となる。東は「草」、西は「黄土」、南は「臙脂」、北は「古代紫」。
さらには3階中央部に架かる「ブリッジ」から全体を見渡すことができる(写真中央)そこでは本や雑誌、高級家具屋と言わんばかりの椅子があり、ダイナミックな吹き抜け空間を眺めながらゆっくりと過ごせる特別な読書空間が広がる。
一番上部の4階部分は、「リング」という1周約160mの回廊式の本棚に囲まれた空間。そこはまるで屋根裏の隠れ家のよう。
その他にも館内には、図書館という枠を超えた、様々な場所がある。正面玄関を入ってすぐの「屋内広場」は、中心に向かって引き込まれるような天井が印象的。イベント、催し物の会場としても使用できるようになっている。
その屋内広場と隣接するのが、階段とソファが一体となった「だんだん広場」。普段は休憩や読書など自由に利用できる「休憩スペース」として開放されているが、間仕切りを用いると講習会や研修会、上映会にも活用できるそう。
3.なぜ今、図書館が必要か
2階中央部の企画展示コーナーでは、開館特別展「絵本でたどる、ながいながい進化のはなし」が行われていた。数枚のパネルとデイノニクスの全身骨格標本(複製)。その展示の最後には、監修の国立科学博物館副館長・真鍋真氏による力強いメッセージが記されていた。
図書館とは、「温故知新」の現場である。真鍋氏は恐竜研究と絡めて、その大切さを述べた。本の文化が廃れつつある今、なぜこうして図書館を更新し、これからも続けていかねばならないのか。その答えは、ここにあったのだ。
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2022年9月24日
〈出典〉
▽石川県立図書館ホームページ
https://www.library.pref.ishikawa.lg.jp/index.html
▽石川県立図書館について
https://www.weekend-kanazawa.com/entry/ishikawa-prefectural-library
▽石川県立図書館レポート記事
https://ayc.hatenablog.com/entry/2022/07/20/182421
▽石川県立図書館の設計について
http://hokuriku.aij.or.jp/h2ah/entry-349.html
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