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全力知らずのオンナ

先日、4泊の自然学校を終え帰宅したちゃっかり。

合宿途中に一度はがきが届いたのである。

「ゆったりには5人しかいなかったから、写真ばっかり撮ってもらったよ。」

こう書かれていた。

「ゆったり」とは、登山のコースの一番楽なコースのことである。

児童が100人以上いる中、ほとんどの子が急な勾配を頑張って登る「ぐんぐん」を選択していたのであるが、ちゃっかりはやはり楽な道を選んだのであった。

「なぁなぁ。ぐんぐんやってみれば?頑張って登ったらすごい綺麗な景色が見れるらしいよ!」

「ううん、いいの。山の上にトイレがあるか心配だし、5㎞も坂道なんてちゃっかりには無理!ゆったりの2㎞にする!」

出た。毎度ながらのマイペースぶり。

そういえば学校の3分間走という休み時間に運動場を走る時間があるのだが、そのときもこう言っていた。

「3分間走って嫌い!3分走ったら口が血の味する。」

これを聞きつけ飛んできたのが全力オンナのドカ弁である。

「は?3分間走で血の味する!?なんでやねん!!3分間ゆーたらカップラーメンが出来あがるまでの時間やで!そんくらいで血の味て!体力どんだけないねん!しっかりしーよ!」

「ドカちゃんは頭まで筋肉ってママが言ってたもん。ちゃっかりは全力が疲れるの。嫌なの。」

糠に釘、暖簾に腕押しである。

しかしここがちゃっかりの面白い所というか上手いことなるようにできているのだ。

ここで全力を出していない分をどこかで小出しに発揮するという子どもらしからぬ力配分が本能でわかっているようなのである。

この休み時間の3分間走で走った直後、授業で50メートル走のタイム測定があったそうだ。

3分間走るのは血の味がして嫌だが、数秒で終われる短距離ならそこそこ頑張れるちゃっかり。もちろん3分間走で全力など出していないので体力も足も温存している。

そして、クラスの女子の中で2番という好タイムを残したりするのである。

「本当は〇〇ちゃんのほうがちゃっかりよりずっと速いのに調子悪かったみたいで。」

淡々とした口調で本当の実力は自分より友達の方が上なのにと首をかしげるちゃっかり。

これがドカ弁なら?

3分間走はもちろん全力、そしてその直後に50メートル走のタイム測定があることなど考えもしないので、息が上がったまま、足もパンパンになった状況でタイム測定する羽目になり、1番になれるはずの自慢の駿足を活かし切れず、2番になったりして、地団太を踏んで悔しがるという空回り劇場である。

全力オンナのドカ弁と全力知らずオンナのちゃっかり。

二人がそれぞれに生まれ持った個性は変えられないが、短所を補って余りある長所を活かし切れる日はくるのであろうか?

#エッセイ #文章

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