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詩ことばの森(70)「冬空をまえに」

冬空をまえに

いたたまれぬ思い
灰色の雲に閉じられた
過ぎ去りし日の記憶

散る花もまたしかり
おだやかな季節には
天の香気となって
中空に漂い
わたしを酔わせたもの

今はもはや
冷たい風の
吹きゆく町を歩く
わたしの前には
冬の空ばかりが
思い出をすっかり
閉ざしてしまった

      森雪拾

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