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詩ことばの森(86)「ひとりの駅」

ひとりの駅

駅には自分以外に
だれもいなかった

列車が到着するまで
まだ小一時間はあった

駅に早く着きすぎたことを
自分は少し後悔した
けれども考え直して
誰もいない駅から見える
風景を眺めることにした

駅の周辺は最近開発されたのか
まだあちこちに空き地が見えた
空き地には芒が生えていて
昔の田園の名残りを思った

遠くに形の良い山が見える
かつては風光明媚な場所だったか
そんなことを考えた

列車はなかなか来なかった
駅には誰もいなかった

取り残された景色の一部に
自分はなったような気がした
どこかで鴉の声がきこえた

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