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詩ことばの森 森 雪拾(もり ゆきひろ)

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複雑で変化の激しい時代ゆえに 優しさと癒やしの詩の世界を伝えていければと思います
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2024年5月の記事一覧

詩ことばの森(172)「夏の木」

夏の木 硝子の珠をゆらし 夕日に輝いた緑葉が 火のように燃えている 川上から風が吹くたび …

UNWIND&KOMOREBI
4週間前
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詩ことばの森(171)「あの日のユリ」

あの日のユリ 夏闇に浮かんでいる 白く灯った百合の花 彼女の涼し気なリンネルの袖口 山から…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
42

詩ことばの森(171)「霧の高原で」

霧の高原で 去りゆく日々を 追うことはもう無いだろう 愛はけして裏切らなかった 明け方の空…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
53

詩ことばの森(170)「空いちめんに」

空いちめんに 空いちめんに鐘の音 語りつづける鳥たち 君が信じた永遠は夢のなかに 眠りのう…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
46

詩ことばの森(169)「夕暮の湖で」

夕暮の湖で 樹木に宿る 火の命が燃えている たがいに競い合い 傷つけさえもいる 湖水は涼し…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
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詩ことばの森(168)「ひかり」

ひかり 光 白いかがやきの真空 脳内物質の変化 目がいたい 夏空に反射して 音のない轟音で …

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
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詩ことばの森(167)「初夏の庭で」

初夏の庭で 初夏の庭は花盛りです 朝は爽やかな香りに満ちています あなたの緑色の服はよく似合います 風の訪れに日差しは清らかです エチュードが耳に残ったまま 少し疲れを浮かべた頬に 幸いを祈らずにいられないのです 過ぎ去る季節に恨み言は言わずとも ふたたび出会うことのない時は 私を無力にするばかり (森雪拾)

詩ことばの森(166)「岬の風」

岬の風 古の人びとが夢見た 沖にあるという幻の国 誰も見たことのなかった 理想の世界から 今…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
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詩ことばの森(165)「砂の記憶」

砂の記憶 古びた机のうえに 置かれたままの 夏が残っていた だれかの語りつづける 言葉が漂…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
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詩ことばの森(164)「ふたたび」

ふたたび 静けさの部屋のなかで ふたたび 変化の波が漂い始めている また いつかの翻弄さ…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
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詩ことばの森(163)「深い水」

深い水 わたしの魂は 深い水のなかに潜んでいる だれかが 岸辺をさまよっている 足音も無く…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
50

詩ことばの森(162)「懐かしい庭」

懐かしい庭 自分は見たらしい 点滅する幻影の街を そこでは何も生まれず 繁栄もなければ衰退…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
50

詩ことばの森(161)「美しい街」

美しい街 孤独は空から降ってくる 雨模様ではなく 青空だったりする 都会の街並みに あるいは…

UNWIND&KOMOREBI
1か月前
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詩ことばの森(160)「朝の森で」

朝の森で 神奈備の木に花が咲き 天が喜び 地が潤い 依代は輝きを灯しつづけた あれから季節は巡り 緑の季節となり 木々は自らの葉の重みに 軋んだ声をあげている 強い風に髪を振り乱した姿は まるで鬼神だ 私が思っているのではない 木が教えているのだ 成長とは犠牲を伴うのだと 朝の森をひとり歩き 闇の名残に湿った道に 散乱している枝葉の 鈍い音を踏みつつ行けば ちぎれた鬼たちの腕 (森雪拾)