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夏の木 硝子の珠をゆらし 夕日に輝いた緑葉が 火のように燃えている 川上から風が吹くたび …
あの日のユリ 夏闇に浮かんでいる 白く灯った百合の花 彼女の涼し気なリンネルの袖口 山から…
霧の高原で 去りゆく日々を 追うことはもう無いだろう 愛はけして裏切らなかった 明け方の空…
空いちめんに 空いちめんに鐘の音 語りつづける鳥たち 君が信じた永遠は夢のなかに 眠りのう…
夕暮の湖で 樹木に宿る 火の命が燃えている たがいに競い合い 傷つけさえもいる 湖水は涼し…
ひかり 光 白いかがやきの真空 脳内物質の変化 目がいたい 夏空に反射して 音のない轟音で …
初夏の庭で 初夏の庭は花盛りです 朝は爽やかな香りに満ちています あなたの緑色の服はよく似合います 風の訪れに日差しは清らかです エチュードが耳に残ったまま 少し疲れを浮かべた頬に 幸いを祈らずにいられないのです 過ぎ去る季節に恨み言は言わずとも ふたたび出会うことのない時は 私を無力にするばかり (森雪拾)
岬の風 古の人びとが夢見た 沖にあるという幻の国 誰も見たことのなかった 理想の世界から 今…
砂の記憶 古びた机のうえに 置かれたままの 夏が残っていた だれかの語りつづける 言葉が漂…
ふたたび 静けさの部屋のなかで ふたたび 変化の波が漂い始めている また いつかの翻弄さ…
深い水 わたしの魂は 深い水のなかに潜んでいる だれかが 岸辺をさまよっている 足音も無く…
懐かしい庭 自分は見たらしい 点滅する幻影の街を そこでは何も生まれず 繁栄もなければ衰退…
美しい街 孤独は空から降ってくる 雨模様ではなく 青空だったりする 都会の街並みに あるいは…
朝の森で 神奈備の木に花が咲き 天が喜び 地が潤い 依代は輝きを灯しつづけた あれから季節は巡り 緑の季節となり 木々は自らの葉の重みに 軋んだ声をあげている 強い風に髪を振り乱した姿は まるで鬼神だ 私が思っているのではない 木が教えているのだ 成長とは犠牲を伴うのだと 朝の森をひとり歩き 闇の名残に湿った道に 散乱している枝葉の 鈍い音を踏みつつ行けば ちぎれた鬼たちの腕 (森雪拾)