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ロスタイム

適度に憂鬱な人生において時々、読み切り番外編の物語が日々に挟まっている。
僕が人生を辞めない理由の一つ。

きっと、この先僕がどんな状態になっても
今日を忘れないんだと思う。

何もない休日、夕方に鳴ったiPhone、突然始まった番外編、言われてしまった「もう全部遅いよ」、
心が息を返した、いつも大切なことだけが言えない、体温の残穢、ふたりの痕、一階の部屋、もう残っていない口実。

指輪を貰いにいく綺麗な後ろ姿は夕日に乱反射していて直視できなかった。

今日の最高気温は17度。
体温は春風と溶けていった。


半端な位置に栞を挟んだまま忘れかけていた小説を見つけた。内容を思い出しながらなぞるように読んで閉じるつもりだった。
最後の最後、あとがきを涙で濡らした。
ゆっくりと閉じ、押し入れの奥に閉まった。

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