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喫煙所の右側

夜を乗り越えたらまた次の日がやってくる。はじめまして、次の日。会った事ないよね。けど、君によく似た奴を知ってるんだ。君の先代の「昨日」っていう奴。会った事ある?あの人、本当に良い人だったなぁ。また会えるかな。会えると良いな。とにかく一日よろしくね。次の日。あ、名前の襲名はもう済んでるんだね。それじゃあ、よろしく、今日。

そんな風に毎日新しい奴に、はじめましてって言うけど。どいつもこいつも似たような奴らでいい奴らだ。いやほんと、毎日面白い奴らに会えて嬉しい。なんかこう、、楽し過ぎるっていうか。なんで同じ様な奴らが毎日来てくれるんだろう。たまには違うタイプの友達が欲しいなと思ったりもするけど、この幸せな毎日には感謝しなきゃなぁ。まぁとりあえず一服しよう。ん、なんですか?ライター貸してくれって?もちろん、どうぞどうぞ。
うん、今日もタバコが美味い。今日も変わらず美味い。

漠然とそんな事を考えていたら、頭の良い友人が教えてくれた。人が同じ様なタイプで群れるのは本能に従っていて自然な事だって。だから1人の人間のところに、同じ様なタイプの人間が集まってグループを作る。ほら、中学の頃の昼休みの教室見てたら分かるだろ。イケイケ女子。本好き男子。テレビっ子。あれは趣味が一緒だから集まってるんじゃなくて、性格とか、もっと言えば本質が似てる子達なんだよ。

そうか、だから俺の元には毎日同じ様な奴らが来るのか。やっと分かった。だからこう、どうすればみんなの事を大事に出来るか考えた時、自分が変わらずにいればいいって事に気付いた。よっしゃ、変わらずにいよう。もしかしたらいきなり、明日には全く知らない奴が来たりして。そのうち、めっちゃダサい奴とか、貧乏な奴が来たりして。それはちょっと怖いな。

あれ、待てよ、そういえば
今まで歳を重ねるごとに、俺はその都度変わり続けて来たよな。
あれ、待てよ、そういえば
変わり続けて来たからこそ、この日常を守ってこれたのか。
あれ、待てよ、そういえば
俺が俺であり続ける為には、俺が変わり続けなきゃいけないってことか。


変わらない、という事は絶望でもある。いつまで経っても理想の明日なんてこない。けれど、同時にそれは希望でもある。同じ日常を繰り返す。等身大の幸せが明日も迎えに来てくれる。自分が昨日の自分と何一つ変わった所が無いからだ。あるとすれば、昨日より肌が少し荒れた気がする。肌荒れ程度の変化で、素敵な明日は奪われない。そこまで考えた時、もうすぐ日付が変わる頃だった。今日にさよならを伝えた。

布団に潜って次の日が迎えに来てくれるまでの時間、今日出したいた結論が、明日の僕の背中を押してくれる気がした。
朝になって今日が起こしに来てくれた時、やっぱり僕は僕だった。幸せだ。

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