夏にクリスマスの曲聴くよね

人生で、もうダメかもと思ったことは幾度となくある。あれは高校三年生の12月15日、共通テスト一ヶ月前を切っていた日だった。前日に母と弟と父の怒号、からの突然仲良くなるといういつものパターンに疲れ果て、涙が止まらなくなった。いつもより家族の状況は複雑だったことも相まって、受験勉強に疲弊した私には、家族がその後楽しそうにしていることなど、なんの慰めにもならず、泣き続けた。

毎日8時半に起きていたので次の日も8時半に目が覚めた。そのままダラダラ過ごし、渋谷で好きな本を読んでいるときふと、友達に会いたいと思った。友達に会わないともう家には帰れないと思った。

親友に突然、新宿で蕎麦食べない?と無理を言った。彼女も受験生であるにも関わらず、紀伊國屋で落ち合い、一日を過ごしてくれた。

クリスマスの十日前、街はクリスマス仕様になっていた記憶がある。彼女は何も聞かずにいつものように都庁上の夜景を見て、日本の今後なんかを話し合ったりした。忘年会シーズンで、夜の新宿の街は騒々しく、お兄さんに怒られたりしながら、全てを忘れて浮かれることができた。

本当に帰るのが寂しくて、山手線のホームで本を読んで気を紛らわせた。

もうダメだと思った時、人に頼るべき、だとは思う。辛い時辛いことに向き合う必要はなく、その話をする必要も一切ないと思う。忘れるために、逃げて逃げて、友達と忘れるくらい大声で騒ぐこと。逃げること。逃げるために、人を頼ること。これが大事だと思う。


負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと。ダメになりそうな時それが一番大事。 

こんなに強い人は、そもそもダメにならないんじゃないの?って思う。本当にダメになった時、忘れていい、全てを忘れてもいい。

医学部受験生であったにも関わらず、一日を遊んで過ごした私は、逆に試験が近すぎて罪悪感すら湧いてこなかった。もうどうでもいいやと思ってその後試験を受けられた。結果的には受からなかった。でもそれでよかった。あの時の友人には感謝しても仕切れない。確かに助かった、と思った。

登って登って、六合目にきて、八合目までの辛さに耐えきれずに全てをやめるくらいなら、七合目の景色で満足すればいいんじゃない?

そうやって言ってくれれば、どれだけ楽だろうか

そんなことを考えながら、私は今日も思い出す、会いたい、と思う。

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