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鞄を縫って、納めた

「学ぶ」は「まなぶ」とも「まねぶ」とも読むそうな。
手元にある日焼けした辞書によると「まなぶ」には何かを「まねる」ことからだそうで。
もっとも、この説も「諸説あります」のひとつらしいですが。

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この数年、どうしたわけか年末年始のまとまった休みはというか、ひたすら鞄を縫ってるような気がする。
2023年から2024年にかけての休みはどうだったかというと、例に漏れず鞄を縫っていた。

実は、昨年夏以来、母から折りに触れ何度となく鞄を作って欲しいアピールをされていたが、型紙作るの苦手だし、責任持てんからと聞こえないふりをしていた。

それでもなお。
選挙カーが候補者名を連呼するがごとく。

曰く、随分と以前にZARAで買った本革のリュックを気に入って使い続けていたが革が傷んでしまって使えない、と。どうにかならんか、と。
伸び切った不定形の鞄っぽ何かを手渡されつつ、参ったなと。

手渡されたそれは、たしかに本革っぽくはあるのだけれども、触ると表面がボロボロと崩れるし、なにかと毛羽立つ。
おそらくは革床に塗装と型押しを施してシボのある革のように仕立てた素材で、革といえばたしかに革なんだけど……という代物。

とりあえず持って帰って考えるから期待するなと伝え、自宅でバラす。

初日

こんな時ぐらいしか使わないリッパーで縫い目をひたすら切っていき、バラした結果、パーツは大きく9つ。
袋部分が4枚、かぶせが1枚、閉じ紐が2本、肩紐が2本。
まぁ、昨年自分用に縫った鞄に比べれば凝ってないだけあって、少ない。そんなに多くない。

バラし終わったパーツに霧吹きで水を吹いてから平らに伸ばし、上にカッティングマットを乗せ、重しになるものをいくつか、使ってないケトルベルとか、近々捨てるつもりでまとめてた本とか、を、おいてしばらく放置。

半日ばかり放置してあらまし革が乾いたら、100均の工作用紙に重ねて大雑把に型取り。その際、長年の使用による伸びや歪みをなんとなく調整。
この歪み、多分おんなじ場所にずっと本入れてたやろ……みたいな歪みがあったので、見た目に差上下左右均一な形状に描き直してから工作用紙をカットする工程を何度か繰り返す。

そういえば、「この肩紐、細すぎるからあと1センチほど幅広いと楽なのよ」と言ってたな、と肩紐、25ミリ幅から35ミリ幅に変更して型紙作成。
めんどくさい。
乱視あるから直線引くのがつらい。

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型紙をあらまし作り終わり、この日に買った「黒くて2ミリ弱の厚みでシボのある柔らかい半裁の革」の上に厚紙を並べ、それなりに肌目というか革目というか、シボの雰囲気が揃うように調整して、銀ペンでトレス。
その後、革包丁で線に沿ってひたすら断裁。

狭心症持ちの運動不足。
断裁時に息を止めてしまってることが多いので、実はこれが結構しんどい。

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断裁が終わったら、切り出した部材を部品に変換していく作業。

  • 80センチほどある対になった部材を縫い合わせて、ベルト状に。

  • 25センチほどある部材を縫い合わせ、これまたベルト状に。

  • 長短日本のベルトに日カンをセットして加締め、調整可能な肩紐に。
    これらを一対。

  • A4よりは小さな角丸の部材の裏面をアメブタで裏打ちして1辺を残し縫い合わせて、かぶせ部分に。

  • 2センチ×40センチほどの革2枚をそれぞれ二つ折りにして縫い合わせ、1センチ×40センチほどの紐を2本

  • タグ用に別に用意した滑革に2024と刻印を打っておく

実は35歳位から発症?していて、現在、名実ともに老眼の自分には結構堪える作業。
とはいえ、作るとなると一気に作ってしまいたい。
ただ、それなりに丁寧に作ろうとすると、そこそこ時間がかかる。
そもそも、集中力が続かないので、ここまで。

2日目

GWに作った鞄と比較して、今回は構造が簡単であることと、これまでの反省から作成順を多少とも考えていたこともあって、ここまでは割と順調。
部品になるかぶせ、肩紐、閉じ紐はもうできている。
あとは本体になる袋部分を形にしつつ、各部品を合体させていけばよし。

たいていここで、部品を先につけるか後につけるかの判断を誤って面倒な感じになってしまうので、落ち着いて再考。

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で。反省&再考の結果

  • 袋にしてから縫うと必要な労力がとんでもなく跳ね上がる肩紐を、力布的な端革を追加して背に当たる部分に先に縫い付け、加締める。

  • 同じく背に当たる部分に綴紐を、これまた端革を追加して背に当たる部分に先に縫い付け、加締める。

  • さらに、かぶせを同じく背に当たる部分に縫い付け、縫目の両端を隠すように加締める。
    この段階で、ペラペラの何かを背負えるようになる。

  • 然る後に、残りの革を内縫いになるように縫い合わせて袋状にする。

  • その際、作っておいたタグを仕込む

  • 縫い終わったら裏返して、革の銀面が表になるようにひっくり返して出来上がり。

革の厚みによるけれども、縫う長さの3から4倍の糸の長さが必要。
私が何かを縫うときは、縫目=3ミリを基本にすることが多いこともあって、手縫いでひと針ひと針ちまちま縫うから進みがそんなに早くない。
袋は4枚接ぎなので、だいたい3メートル前後を縫う必要がある。

……1000目。両面なので2000目。

手縫いの作業を好んで選んでいるとはいえ、若干心折れる。

革の表面をヤスリで少し荒らし、接着。
縫い代を3ミリとって、ひたすら10本刃の菱目打ちで穴を穿ち、後はひたすら縫う、縫う。数時間に渡って縫う。

たまに思い出したように数十キロを走る自転車が動く禅なら、手縫いはひとつところでじっとしている静かな禅。
縫いはじめの雑念だらけの状態から、縫い終わり直前の何も考えていない状態を目指してひたすらちくちく。
それにしても単純な直線の手縫いの良いところは、「時間さえかければ必ず終わる」ことだと思っているが、大抵の場合、縫い終わる頃には使いこなせない確信があるにも関わらず腕ミシンが欲しくなるというね……

形になった

肩紐に芯を入れないかわりに、外側を「わ」にして食い込みを減らすなど
2024年1作目のタブ


なで肩にも対応

例によって、なんともリミナルというかグランジというかデカダンというか。
とにかくウキウキしない雰囲気の写真やね。

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