凪の夜
今日は1月1日 元旦
いつものように道路を走っても、街中はいつもと違う景色が広がっている。
乗ってくるお客さんは、初詣などで神社に出かける人々くらい。
出勤する会社員や、買い物にいくお母さん、おばあちゃんの姿、部活動に励む学生、いつも乗ってくれるお客さんたちの姿は、そこにはない。
公園でいつも遊んでいる子供たちの姿もない。
みんな自宅で思い思いの日を過ごしているのだろう。
お正月なんて、くだらない風習だなんて、少し前に考えていたこともある。
365日の中の、いつもと変わらないただの一日じゃないか。
地球が太陽の周りを一周しただけの、ただの一日じゃないか。
なんでわざわざ、新年という名前をつけて、新鮮な気持ちになる必要があるのか。
元旦だろうが、大みそかだろうが、タッピーはいつもと変わらないように、過ごそう。
そんな風に考えていたこともあった。
元旦の街が初めて迎える夜。
そこに灯っているのは、信号と街頭の灯りのみ。
いつも開店しているはずのスーパーは、今日は一日中シャッターが開くことはない。
病院も薬局も、会社も、学校も、珈琲屋さんもお休み。
それはまるで、街全体がお休みを取った姿。
空には雲がないはずなのに、なぜだか今日は星が見えない。
街は暗くなり、灯りを消した。
街全体で新しい年を迎え、街全体で新しい年に祈りをささげているようだった。
こんな日が、一年の内に一日ぐらいあるのも悪くないなとタッピーは思った。
今年がみんなにとっていい年でありますように。
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