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Transdisciplinary Designの教科書

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Transdisciplinary Designについて学びたい方のための記事です。
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#デザイン思考

Transdisciplinary Designとは? (パーソンズ美術大学留学記 総集編) #184

パーソンズ美術大学のTransdisciplinary Designに留学し、1年生の全課程を終えました。デザイン初心者&海外生活も初めての生粋の日本人の私が、なんとかアメリカのデザインスクールで1年間過ごすことができました。我ながらあっぱれ。 こうした節目ということで、Transdisciplinary Designで何を学んできたのかをまとめてみることにします。自分の復習のためというのもありますが、「デザインって何?」という疑問を持つ方や、「海外でデザインを学んでみたい

【卒業制作】デザイン倫理を、禅で問う。質疑応答編 #304

前回の記事では、私の卒業制作についてご紹介しました。「禅をデザインに取り入れる」をテーマに設定し、New York Zen Centerでのフィールドワークから得られた学びを「Paradoxical Prototyping」というワークショップでデザイナーに伝えたというものです。 その後、Takram NYでの公開イベントやACTANTの社内イベントで私の卒業制作を共有する機会をいただいています。そこでの質疑応答でいただいたコメントがどれも的を射ていて、卒業制作の立ち位置や

「問題解決のデザイン」から、「共に生きるデザイン」へ。 #257

パーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designでの学びも2年目に突入。日々「デザインとは何か?」への答えが更新されていく日々を過ごしているが、今回は「なぜデザインをするのか? 何のためにデザインをするのか?」に対する答えが大きく変わったので、節目として現時点での私なりの考えを記しておく。 反・デザイン思考Transdisciplinary Designで学んでいるデザインは、いわゆる問題解決型のデザインではない。パーソンズ美術大学はニューヨークにあり、

オルタナティブストーリーを求めて (パーソンズ美術大学留学記 番外編) #242

パーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designでの二年目が始まって一か月ほどが過ぎました。二年目に突入してもまだまだ新しい学びがあるので、引き続きどんどん吸収していきたいと思います。 この記事は、これまで『パーソンズ美術大学留学記シーズン3 Week1-4』に書いてきた学びを整理することを目的としています。個別の授業で学んだ知識を自分なりに体系化することができそうな予感があったので、見切り発車ですが書いてみます。 一か月の学び=社会構成主義的デザイン

「『デザイン』ではないデザイン」をデザインする ―Transdisciplinary Design実践例— #225

これまでの記事では、パーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designでの学びをまとめています。特にフレームワークやマインドセットについてご紹介してきました。 ただ、実践例を書いていなかったので、今回はTransdisciplinary Designの手法を使えば何ができるのかを具体例を使って説明してみます。選んだ具体的は、ズバリ『デザイン』です。『デザイン』をTransdisciplinary Design的に解釈すると、新たなデザイン像が見えてきます。

Transdisciplinary Designとは?:方法論編 (パーソンズ美術大学留学記 総集編) #223

以前、「Transdisciplinary Designとは?」についてまとめた記事を書きました。Transdisciplinaryとは境界を取り除くことによる破壊であり、Designとは新たな事物の創造である。また、Transdisciplinary Designを実践する人が持つべき心構えはあるものの、方法論はないとしていました。 以前の記事は私がパーソンズ美術大学・Transdisciplinary Design1年目での学びを夏休みに入ってすぐの記憶が鮮明な時に書き

ニューヨークの中心で、未来を演じる #222

204X年、ニューヨークのマンハッタンはラットたちの戦場と化していた。特にタイムズスクエアを舞台に、北部に生息するラットと南部に生息するラットはその遺伝子的な違いを理由とする争いが絶えない状況なのだ。 2021年頃からその兆候は現れていた。というのも、ニューヨーク市の北部と南部でラットに遺伝子的な違いがあることは判明していた。ラットの数自体の増加も確認されていたが、ニューヨーク市はこの事実を問題視せず、十分な対策を講じることはなかったのだ。 しかし、ラットの世代交代は予想

デザイナー、政治学と人類学を学ぶ。 (Intersecting Mobilities) #205

パーソンズ美術大学のTransdisciplinary Designでデザインを学んでいます。選択科目で「Intersrcting Mobilities」という政治学と人類学の視点からMobilitiy(移動、移動する能力)を考える授業を受講していたので、その学びをまとめてみます。気づいたのは、デザインと文系分野の融合の可能性でした。 ネイティブに英語で敵うはずがなく毎週「パーソンズ美術大学留学記」と題して、その週の授業で学んだことをnoteに書いていたのですが、「Inte

デザインに哲学者を招いてみる。(Designing in Dark Times) #201

パーソンズ美術大学のTransdisciplinary Designでデザインを学んでいます。選択科目で「Designing in Dark Times」という授業を受講していたので、その学びをまとめてみます。気づいたのは、デザインに哲学的思想を導入することの意味でした。 ハンナ・アーレントの思想をデザインにこの授業は「Designing in Dark Times」という同名の本を書いたEduardo StaszowskiとVirginia Tassinariによる授業で

メンタルが「健康」な状態とは? (Global Mental Health) #200

パーソンズ美術大学のTransdisciplinary Designでデザインを学んでいます。選択科目で「Global Mental Health」という授業を受講していたので、その学びをまとめてみます。気づいたのは「診断と治療は科学的なものではなく、文化的なもの」ということでした。 Global Mental Healthとは?授業名のとおり、世界中の人のメンタルヘルスを考える授業です。この授業で教わったのは、精神医学や心理学の知見だけでなく、文化や社会といった構造的な文

デザインリサーチとは? (その5:結果報告編) #199

前回はこちら 前回の「その4:試行錯誤編」では、デザインリサーチにおける行き詰まりを克服する方法を紹介しました。今回の「その5:結果報告編」では、デザインリサーチで得られたインサイトを報告するためにまとめる方法を見ていきます。 リサーチを終える時基本的にデザインリサーチは、問題設定⇒情報収集⇒センスメイキングの3つのステップを繰り返すことで、調査対象をより深く理解していきます。途中で行き詰まったら「その4:試行錯誤編」で紹介したように、残しておいたリサーチプロセスの記録を

デザインリサーチとは? (その4:試行錯誤編) #198

前回はこちら 前回の「その3:センスメイキング編」では、「その2:情報収集編」で集めた情報からインサイトを得る方法を紹介しました。今回の「その4:試行錯誤編」では、得られたインサイトがイマイチな時の対処法を見ていきます。 行き詰まりから脱出するコツデザインリサーチでは「問題設定⇒情報収集⇒センスメイキング⇒問題設定⇒(以下繰り返し)」とひたすら繰り返すことで、問題の本質に近づくことを目指します。基本的にはこの3つのステップを繰り返していけば、デザインリサーチは進んでいきま

デザインリサーチとは? (その3:センスメイキング編) #197

前回はこちら 前回の「その2:情報収集編」では、質的調査の方法としてProvotypeやSemi-Structured Interviewなどのデザインツールを紹介しました。今回の「センスメイキング編」では、集めた情報から新しいインサイトを得るセンスメイキングについて紹介します。 なぜ、センスメイキングをするのか?ここまでは情報収集に専念してきました。デザインプロセスのダブルダイヤモンドで言えば一つ目の探索のステージにいました。センスメイキングは、この図の二つ目の定義のス

デザインリサーチとは? (その2:情報収集編) #196

前回はこちら 前回の「その1:問題設定編」では、リサーチで明らかにしていきたい問題を設定する方法を見ていきました。今回は、「その2:情報収集編」と題して、設定した疑問に答えていくために情報収集をする方法を見ていきましょう。 なぜ情報収集をするのか?問いを設定したということは、何かがわからないということです。特にリサーチにおける疑問は、インターネットなどで調べても答えがわからない問いを設定します。そのため、デザイナー自身で調査をしなければなりません。 また、問いを設定した