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【感想】『死にたがりの君に贈る物語』そして綾崎隼先生のオススメ作品紹介_非実在女子大生、空清水紗織の感想Vol.0007

全国に熱狂的なファンを持つ、謎に包まれた小説家・ミマサカリオリ。だが、人気シリーズ完結を目前に訃報が告げられた。奇しくもミマサカの作品は厳しい批判にさらされ、さらにはミマサカに心酔していた16歳の少女・純恋が後追い自殺をしてしまう。純恋の自殺は未遂に終わるものの、彼女は「完結編が読めないなら生きていても意味がない」と語った。
やがて、とある山中の廃校に純恋を含む七人の男女が集まった。いずれもミマサカのファンで小説をなぞり廃校で生活することで、未完となった作品の結末を探ろうとしたのだ。だが、そこで絶対に起こるはずのない事件が起きて――。
著者自身の根源的な問いを内包する、痛切な青春ミステリ!

死にたがりの君に贈る物語
著/綾崎 隼

ポプラ社公式サイトより引用

 小説家かどうかに関わらず、クリエイターなら一度は直面する苦悩を、丁寧に掬い上げて、美しいものへと浄化させた、そんな作品だ。
 クリエイターはモノを作らずにいられない。そして、それを誰かに見てもらって、喜んでほしい。
 だが、その見てくれた誰かが喜んでくれるとは限らない。「つまらない」「クソ」「〇〇の方が良い」、そんな言葉がかけられることも往々にしてある。ファンの人数が増えるほどアンチも増えて、心ないコメントに遭遇する頻度も増えるだろう。
 それでも、本当のファンは陰に陽に支え続けていてくれるし、そのファンのために作品を出し続けることで得られる喜びは至上のものであると、本作品は教えてくれる。

 綾崎隼先生の作品はどれも読みやすいが、本作品は特に読みやすかったように思う。
 場面の切り替わりが、その段落の視点となる人物の感情から入ることが多いからだろうか、どういう心境で読めば良いのかが分かりやすく、物語にすっと入り込める。
 各段落、各章の長さもコンパクトにまとまっており、普段あまり活字を読まない方や、私よりも若い中高生の方でも、3~4時間あれば読み切れるのではないだろうか。この読みやすさであれば、TikTokで話題になって広まるのも頷ける。

 最後に、この『死にたがりの君に贈る物語』で初めて綾崎作品に触れた方に、別の綾崎作品を二つご紹介したい。
 一つ目は『命の後で咲いた花』という作品。『死にたがりの君に贈る物語』と同様、『命の後で咲いた花』も二度読み必須だ。むしろ、こちらの方が一回目の衝撃度は大きいかもしれない。切ないラブストーリーが堪能できる。
 二つ目は『君と時計』シリーズ。こちらは全四冊からなるシリーズもので、タイムリープを扱った作品だ。『死にたがりの君に贈る物語』や『命の後で咲いた花』と比較すれば、多少難解かもしれない。だが、四冊すべて読み終わった後の爽快感は格別だ。是非読んでみてほしい。

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