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それは幻の

2024/08/21
引き続き箒木を読みすすめる。空蝉登場。なんて劇的なんだろう。舞台がパッと暗転して、ゆっくりと、月夜の白っぽい照明が空蝉と光源氏を照らすさまが頭に浮かぶ。しかしよくもまあ噂に聞いていた程度の女に対して、ずっと思い続けていましたなんて言えるものよ、ゲンジくん。

2024/08/22
箒木から空蝉へ。各章段ごとにA.ウェイリーの原注と訳者の訳注があって、そこも読み応えがある。原注で初めて文章技巧を理解した。朝顔って誰だっけ、読み飛ばしたっけと思いながら進んでいたけれども、さも知っているかのように書くやりかたらしい。

これはマルセル・プルーストも用いた手法である〔プルーストの小説『失われた時を求めて』では、物語が記憶を辿る形で進み、必ずしも時系列ではない。そのことをさしている〕

源氏物語 A.ウェイリー版 ブルーム・ツリー

『失われた時を求めて』に挑戦する時が来たのか。そういうメッセージか。時系列ではないといえば、思い出したのはオッペンハイマー。あれも最初観た時はいつの話してるんだかわからなかったな。本を読んでいるとずるずると思い出すことがあって、あっちこっちに寄り道している。垣間見が一方的に「見る」行動ならば『箱男』のそれと似てるなあとか。「見る・見られる」といえば『燃ゆる女の肖像』は良い映画だった。セリーヌ・シアマは新作撮らないのかしら。

2024/08/23
空蝉終了。もっと読みたかったけど、場面が大きく変わって夕顔に入るので本を閉じる。『あさきゆめみし』が面白いのは女性側にもしっかりフォーカスされているからなのかな。光源氏という眩い殿方の誘いに応えたいという思いと、そんな立場にないと自制する空蝉の葛藤。胸をかき乱されている様。

ふと、ゲンジの纏う高貴な香りが、ウツセミのベッドにまで漂ってきました。

源氏物語 A.ウェイリー版 ウツセミ

"香りを纏う"って好きな表現だ。私を体現する香りを纏いたい。昨年、ずっと憧れていた香水をいざ手にしたのだけど、どうも爽やかすぎてしっくりこない。TPOで上手に香りを変えられる人にも憧れる。でも今は「これが自分の香りです」と言えたら、ひとつの香水を自分の定番にできたらかっこいいなあ、なんて思う。

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