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なべて雲居のあはれなるかな

2024/09/14
葵(アオイ)を読む。

侮辱を受けたロクジョウの尋常ならざる虚栄心と傷つきやすさを、ゲンジはよくよく知っています。どんなに彼女を苦しめただろう。胸が痛み、ゲンジはロクジョウ邸へと急ぎます。

A.ウェイリー版 源氏物語 アオイ

これは完全に私の主観なのだけど、どうして光源氏は葵の苦しみを想像しようとせずに、正妻ではない六条御息所のことを先に慮るのですか。そりゃあ六条だってプライド傷ついたでしょうが、それが想像できるのならば、普段は足を運ばないようなイベントに体調がまあまあ上向きだからと光源氏を見に行った葵の健気さといいますか、つれない態度の中の戸惑いや愛情が少しも想像できませんか。葵だって胸を痛めているだろうと思ったらまず葵、その次に御息所じゃないのかい。
なぜだか私は葵を擁護したい。しかし私のこのムカつきも、この先の物語の流れに上手く回収されていくことを知っているから、私がムカつくほど、紫式部のしたり顔が目に浮かぶようで。

2024/09/16

とそのとき、突然アオイが起き直り、子どもを生み落としました。

A.ウェイリー版 源氏物語 アオイ

こんなにすぽーんと子ども生まれたっけ?!とあまりの唐突さに驚く。さっきまで葵の姿のまま生霊の声で光源氏に語りかけるという、緊張感あふれるホラーだったのに。読み流せない「!」があるのがウェイリー版の楽しいところだ。

2024/09/17
ついに葵が死んでしまった。

ゲンジはようやく自分の部屋に戻ります。が、横になっても眠れません。想いはいつの間にか、アオイとはじめて会ってからの日々に帰って行きます。

A.ウェイリー版 源氏物語 アオイ

悲しみに打ちひしがれる光源氏の姿を読んでいると、3日前にやいの言ってごめんという気持ちになる。なぜか女房になった私の姿が浮かぶ。(大河ドラマで女房たちが集って源氏物語を読み聞きしているシーンが好き。)口元を隠して「あら…まあ…光源氏もそうね、お辛かったわね…」などとばつが悪そうにしている女房の私…。光源氏は葵を蔑ろにしているんじゃありません?と眉をひそめていたけど、すみません、へへ。最愛の定子を亡くした一条天皇の悲しみに寄り添うようつもりで書いたのかしらと思ったけど、それだけでなく、愛する人を失った全ての人に自分事と思わせる力があるような。

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