【映画感想文】君たちはどう生きるか:宮崎駿
「どう生きるか」
これは「進路」の話ではない。
昔、進路は重要だと思っていた。でも今考えるとそれは意外に後でどうにでもなることだった。それよりも若い頃に身についた考え方や価値観の影響は今も大きい。良くも悪くも。
宮崎監督は前作に続き戦時中の日本を舞台に選んだ。矛盾を暴力で正す試みが戦争だとすれば、想像力で整合を図る試みがファンタジーかもしれない。本作中ではその両方が並行している。しかし、大人達はいずれにしろ仕事と家庭、理想と現実、感情と思考がせめぎ合う世界を泳いでいる。矛盾にどう向き合うか。そこに人の本質が表れるのだ。11歳の眞人はひと夏の冒険を通じて、そんな大人達の剥き出しの姿を見ることになる。
その上で亡き母が問う。
「どう生きるか」
矛盾に満ちた恐ろしい世界より空想の世界の方が、或いは母の胎内の方がよっぽど心安らぐ。しかし、自分が愛されていることを知った眞人は現実に立ち向かう道を選ぶ。
若い時は「よく学びよく遊べ」という。でも「どう生きるか」考えることはそれ以上に大切ではないか。無論「君たち」には大人も含まれる。一体私達の生き方は次世代を担う「眞人」達にどんなメッセージを伝えているのだろうか。