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真冬の夜の夢(3)北天の夜空

ここにいたら遭難する。
たった数分外にいただけなのにそんな恐怖を感じ、慌ててプレハブ事務所に駆け込んだ。

決して目を合わそうとしない女性事務員に案内されて、会議室に入った。そこは会議机と椅子しかない至ってシンプルな部屋だったが、エアコンが効いているだけでありがたかった。

部屋の中では例の外国人と上品な年配の女性が待っていた。
外国人が何か話した。ロシア語だろうか。案外、声が高い。通訳によると彼はミハイルというらしい。そして彼女自身は木村と名乗った。

「吹雪が止むまでここで待つように」とミハエルが言っている。それだけ告げて二人は出ていった。手持無沙汰になった私は置かれていたペットボトルのミルクティーを勝手に飲み、窓の外を見た。そこには何の変哲もない会議室と、何十年も付き合ってきた自分の困り顔が映っているだけだった。

ドアをノックする音に起こされた。いつの間にか眠ってしまったようだ。ミハイルと木村さんがドアの所に立っている。ミハイルが「外に出ろ」と言っているようだ。

さっきまでの吹雪は嘘のように止んで、空には無数の星が瞬いていた。私は猛烈な寒さもこの奇妙な状況も忘れ、一時、北天の夜空に目を奪われた。