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【映画「mellow」】 実ることがすべてじゃない。

田中圭主演の映画「mellow」が年明け1月に公開されると知ったのは昨年秋頃だっただろうか。

ドラマと違った圭くんが観れる!と公開を待ちわびていたが、気づいたらあっという間に公開日になっていた。

年明けから思いのほか仕事が立て込み、「あれ? これってもしかしたら意識的に時間を作らないと映画館で見れなくなるパターンかも」 と、本日、子どもたちを夫にお願いし、映画館にmellowを観に行ってきた。

街で一番オシャレな花屋「mellow」と、廃業寸前のラーメン屋を舞台に、その周辺の様々な人々のたくさんの実らない恋が描かれていく。
不器用な片想いたちの物語。

表面上はその通りだけど、そもそも「実る」ことを望んでいた片想いだったのか?

描かれていたのは、それぞれの登場人物のとるにたらない日常と感情の機微。

一般的には女性の花屋さん、男性の店主で描かれそうなところを、男性の花屋さんと女性のラーメン屋店主とし、不登校気味の姪っ子や女の子から女の子への告白も描かれている。取り立てることもなくフラットに日常として描いたところに、今泉監督の意図や寛容さをうかがえた。

今泉監督の映画はmellowが初めてなんだけど、好きと言っている人が多い「愛がなんだ」ぜひ観ないと。

そしてこの映画のもうひとつの主役は「花」。花のシーンが圭くん演じる夏目の所作とともにていねいに描かれている。

花ってモノではなくて、命あるもの。いつかはなくなるし、はかない。だからこそその瞬間の気持ちを込めることができるんだと思う。

ラーメン屋を畳む最後の日、バラを一輪ずつプレゼントして、お客さんが顔をほころばせながらお店から出てくる場面は、花の偉大さと花の使命を感じた(義実家が生花の専業農家だからなおさらそう思ったのかも。もっと日常に花が溶け込めばいいのに)。

あらためてmellowの意味を改めて調べてみると、「円熟な、芳醇な、まろやかな」という意味で、スラングでは「リラックスした、心地よい」という意味らしい。

夏目はどちらの意味も網羅した存在だった。そしてそれを圭くんが見事に演じていた。人に好かれちゃうのは圭くん自身ともダブるところでもある。

ともさかりえ夫婦のゴタゴタに巻き込まれたあとに、イライラしてタバコを吸うシーンだけが唯一メロウでなかったシーン。鼻からタバコの煙を吐いていて「男」を感じられた(ちょっとうれしかった)。

この映画の自分の想いを伝える告白は、実ることを望んだものではなくて、それが一歩踏み出すきっかけとして作用していたんじゃないだろうか。

結局、夏目の想いはどこにあったんだろう。それはわからないまま。知りたい気もするけど、感動させられたり、オチが用意されてなくても、観ることで心地良くなるというのも映画の大事な要素。そんなことを改めて理解した。

エンドロールがエンディング曲と相まって、切ない中にも温かくて、明るくなってもしばらく余韻に浸ってしまった。

目に見えないウイルスに緊張で凝り固まった身体をほぐしてくれたきょうの映画鑑賞。

最後に文章の中ではまとめきれなかったけど残しておきたい感想を箇条書きアップ。

・圭くんのオーバーオール姿がナイス!
・さほ役の白鳥玉季ちゃんが子役というより女優の存在感(「凪のお暇」のときもよかった!)
・木帆の美容室に行ったあとのあのヘアスタイルは「あり」なのか?


時間が許せばもう一度映画館に観に行きたい。

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