企業の目的を自覚することの大切さ
「企業は人なり」という言葉がありますが、どのような人が企業にとって望まれる人なのでしょうか?
結論的に申し上げれば、それは企業の目的と本質を、正しく理解納得し、自覚でき得る人のことなのです。しかも、企業が目的とするものを、行動に移し結果を出し得る人のことであり、言われなくても行動に移し、しかもその行動の中に、仕事の喜びや生きがい、やりがいを感じることのできる人のことです。
優れた人は、以上のようなことを仕事をとおして実践している人を人材と呼ぶのです。故に、企業としての正しい経営理念、正しい目的観の存在しない法人群には、人材は発生し得ないし、頭数、人員数が何人いても、人材は育たないのです。
ーアンリミテッドクリエーション出版書籍「創立者・鈴木昭二」より
トップが何を考えているか知ってますか?
先日、あるクライアントでのこと。何気ない会話の中で、幹部の皆さんにお聞きしました。
「皆さんはインスタやフェイスブック、ツイッターをやってますか?」
「・・・」
「SNS・・知ってますか?」
「もちろん知ってはいますが・・・仕事上で使ったことはありません」
「以前はやってましたが、売上に繋がらないので放置したままです・・」
その会社は、地域で数店舗を営む優良企業の一つ。各店を任されている責任者・幹部の皆さんの反応だったため、少し戸惑いを感じました。
その会社のトップは、今の時代状況をよくご存知で、時代の流れに意識の高い方でしたから、それだけに少し違和感を感じました。
弊社アンリミテッドのテキスト・ヒューマンスピリッツVOL2の第2章「時代は変化しています」の中に、顧客が求める商品価値を、会社が提供している商品価値が上回った時に、売上アップといった形で顧客から評価を受けるということが図解されています。会社が提供している商品価値とは、ここでは、結論的に『トップの考え方と哲学』に起因すると説かれています。
サービス業を営むその会社は、一人ひとりのスタッフ(更には、その方々が創り出すもの)が商品であり、その会社に来るお客は、そこにどのような人が居るのか?商品の中身は?と期待と興味を持って来店しているはず。その期待と興味に応えるべく、提供物と共に、様々なツールを使っていくことで、信頼と安心へ変えていく。そして商品提供後に、期待以上の満足を与えることが出来たならば、リピーターへと変わっていくはず。それだけに、先のSNSの件では、なぜ幹部の方々が問題意識を持たないのか。少し疑問を抱いたのでした。
SNSや流行のツールを使えば結果が必ず変わるということではありません。が、その会社の場合で言えば、トップと幹部との意識がちょっと離れてしまっていることが本質的原因でした。ですから、お互いの心の距離を近付けるために、例えば幹部との合宿をし、寝食をともにしながら、夢や会社の方向性を語ったり、全社でのスポーツ交流など、様々に提案をしております。
トップが何を考えているのか、何を思っているのかを周囲のスタッフが理解していないケースは、今も昔もよく見受けられます。コミュニケーション不足が原因であったりするわけですが、互いに相手を知ろう、理解しようとの信頼関係が無ければ、例えコミュニケーションの場だけを設けても、うまくいかない場合が多いものです。
また、多くの会社には、存在意義や目指すものを明文化した経営理念があると思います。朝礼などで毎日暗唱している会社もあるでしょう。しかし、それらを理解し、そこに向かってスタッフ一人ひとりが日々挑戦している会社には、なかなか出会うことが少ないように思います。なぜでしょうか。
弊社と契約して基本となる考え方学び始めた製造業を営むY社。初めて訪問した時の印象は、社内が非常に冷めきったものでした。我々が訪問しても、事務所に居るスタッフは、立ち上がろうともせず、パソコンに向かったままで“誰か来たな”といった程度に、ちょっと視線を向ける位でした。どこかギスギスした雰囲気。聴くと、顧客からのクレームも多く、その原因を製造部門と営業部門が互いになすり付けているような状態でした。
その会社のY社長は、社内を活性化したい、そして売上を上げたい、そうしないと経営が厳しいと話しました。
社長のデスクの後ろには、古びた額縁の中に経営理念が掲げられられていました。顧客を大事にすることや、周囲の仲間を思いやろうとの文言が書かれていました。しかし、会社の実態はそれとは全く逆の状況になっていました。
経営理念=トップそのもの
経営の神様と言われた松下幸之助氏。会社経営をどういう目的で、またどのようなやり方で行っていくのかという点で、しっかりとした基本の考え方を持つこと・・・つまり経営理念の大切さを述べられています。
中小零細企業ともなれば、トップ自身は会社そのものと言っても過言ではありません。トップの一念でその会社は動いています。アンリミテッドが言うトップが変われば会社は変わるとは、経営者自身の考え方・哲学が如何なるものかということを問いかけたのでもあります。
また、その一方人生経営というスタンスで言えば個々人における“人生経営理念”が必要となります。言い換えて人生観ともなります。何のために生きるのか。その人生観が、仕事上での目的観(仕事観)と一致もしくは深くリンクした時に、その人の力が発揮されるのだと思います。
一人ひとりにおいては、会社の目指すところは何なのか、何を求められているのかを正しく理解し、現場で結果を変えていくことが求められます。そのためにも、自身を磨き続けることと、社のトップと呼吸を合わせる(目的を共有する)ことが非常に大切です。
先のY社のY社長には、今一度、掲げている経営理念と今の自身の考え方、実際の姿を見つめてみてはとの提案をする中で、そのようになっていない自分に気付かれたようでした。何より、スタッフを大事にといいながら、結果を残せない営業スタッフや、人を育成できない部署長を怒鳴りつけるばかりで、大事にしなければと思ってはいたものの、全くそのようにはしていなかったことを反省されたようでした。
その後、Y社は、どこか温かさの感じられる職場となっていきます。社長のスタッフに対する声がけは「元気か?何か困ったことは無いか?」と変わっていました。
先に述べた「時代は変化してます」の中に、
「成功しつづける習慣(原因)を身につけなければ、結果は変わりません。一般に、分かってはいるけど出来ないという話をよく耳にしますが、それは当然、分かっていない、変わらない事実の表現です。貴方(会社)が過去の習慣を一新しようと感じるほどの、重要なことに出合えば、時間差はあっても習慣は変わります。その時に、『正しい目的と使命の自覚』が自然のうちにバックボーンになるのは当然の事です。」
とあります。なぜ、我々はこの仕事を、今の職場で行っているのか。その裏付けとなる考え方(経営理念)はどういったものなのか。“行き詰ったら原点に帰れ”とあるように、社の目的を、立場を越えて、普段から確認しあえる職場作りを目指して参りましょう。