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七転び八起きの人

オーボエ吹きたいなと思って、オーボエを買いに行ったんです。
でも、私の町には大きな楽器屋さんがなくって、結局家に帰ってきて、インターネットの通販サイトで買いました。いくらだっけ? 失念しました。あいすいません。
で、しばらくして。
しばらくして。
しばらくして。。
しばらくして。。。
しばらくして。。。。
しばらくして。。。。。
しばらくして。。。。。。
しばらくして。。。。。。。
しばらくして。。。。。。。。
家に届きました。買った翌日に届いたんです。でも、中には誰もいませんでした。届いた段ボール箱の中にですね。箱庭を作っています。中には人はいません。届いた段ボール箱をかぶって、外にでてきました。前は見えません。後ろも見えません。
私はマンションに住んでいました。私の部屋のマンションの玄関の扉のノブを回して外にでると、マンションの廊下なのです。
マンションの廊下に、たまたまそのとき人がいて。
(そのときというのは、届いた段ボール箱を頭からかぶって外にでたときですよ。)
人がいたようで、わあ! と叫び声をあげていました。おどろいたんでしょう。私が段ボール箱をかぶっていたんでね。
段ボール箱を頭からかぶっているひとは、なにしろ、この国では珍しいですから。
ということで本日の無名人インタビュー始めます。
【まえがき:栗林康弘(無名人インタビュー主催)】

今回ご参加いただいたのは 新島アヤノ さんです!

はじめに

オンキ:アヤノさんは今どんなことをして、どんな状態でいらっしゃるんですか。

アヤノ:20年前かな、精神障害になって。それから4年前に障害者枠の仕事で、W社ってあるじゃないですかドラッグストアの。そこの品出しの仕事に就いてるんです。一昨年の12月の30日に父が亡くなってしまって、それから1年以上経つんですけど、調子が向かなくて、不眠やら胃腸痛やらで大騒ぎしてたんですよ。病院行って検査したりね。結局異常はなかったんですけど、なぜか不眠症だけ治らなくって。

オンキ:それは体の不調なのか、心の不調なのかって。

アヤノ:あ、もう自律神経と言われました。「あれだけサポートしてもらってたお父さんがいなくなるとそれはきついわ」って先生に言われました。

オンキ:なるほど。今、自分を改善していくとか、良くしていく活動をしてらっしゃるんですか。

アヤノ:まあそうですね、カウンセリングには通えてないんですけど。自分でスマートウォッチの機能使って睡眠を記録したりとか、時間決めて。そういうこともしますね。『習慣化』っていうメンバーシップにも入って。そこで読んだことを実行していくとかするんですけど。

『習慣化』はこちら

自分の中でルール作って続けていこうとかね。私はとりあえず身を改善するってのが一つ前提にあるんです。そこから仕事に復帰するとかね。いま週3なんです仕事が。本当は週5なんですけど、週4に戻して週5にっていう話にはなってるんです。

オンキ:それはこれからですね。

アヤノ:そうです。はい。

オンキ:その『習慣化』ってところでは、具体的にはどんなことをなさるんですか。

アヤノ:不眠症対策が一番ですね。あと創作、物語を書いたりしてるんで、それを長く続けるとか。あと漢検・英検・ITパスポート取るとかね。

オンキ:ITパスポート?

アヤノ:以前はシスアドって名称で、その次にITパスポートって名前になったパソコンの入門編みたいな試験なんです。漢検・英検・ITパスポート、その3つを生活の中に取り入れてる。

オンキ:なるほど。それは体を動かすっていうより自分のスキルをアップしていくっていうか。

アヤノ:そうですね、はい。

オンキ:能力値を上げていくお勉強を習慣化してらっしゃる?

アヤノ:そうですね、はい。

オンキ:創作にはクリエイティブっていう面もありますけど、きちんとした生活のリズムとか、睡眠を作るためていう側面が大きいんですか。

アヤノ:睡眠は削りません。

オンキ:自分なりのペースをつかむってことですね。

アヤノ:そうそう、そうです。

アバターの死から

オンキ:応募メールによるとアヤノさん、昔は神学を勉強なさったと。

アヤノ:そうですはいそうです。同志社大学の神学部です。私はもう、神学部に入って良かったのか悪かったのか最近わからなくなってきましたね。

オンキ:神学部に入るっていうのは珍しくはないですけれども、割と思い切った事な気がしますが。

アヤノ:受験期のときに高校で「カトリック信者なんです」ってポロっとこぼしたら神学部を受けなさいって言われて、受けただけなんです。でもそしたらポロっと受かったので。

オンキ:ポロっとですか。

アヤノ:受験勉強しなかったんです。前日に赤本だけ解いて受けて、受かっちゃったんです。

オンキ:それはすごいですね。そうは言っても同志社はきちんと難しい学校なのに。

アヤノ:でも神学部の偏差値はそんな高いもんじゃありません。今は違いますけど当時はね。20年前やねもう。

オンキ:とはいえ神学部でかなりきちんとお勉強なさったんじゃないですか。

アヤノ:そうですね。勉強好きなんだよね。

オンキ:神学は、ヨーロッパじゃ哲学と並ぶ学問の王様じゃないですか。

アヤノ:外国では1番目に神学部が来るんですけど、日本の場合は1番目に法学部が来るんですよね。

オンキ:そうですよね。それは実学っていうか、はっきり言ってお金が儲かる面が大きいですよね。

アヤノ:あと経済学部はすごい就職の話来るっていいますよね。神学部は本当来ないんですよ、就職の話題が。そうこうしてるうちに院に受かった時に、ちょうどネットで揉めごとがあって、そこで精神が悪化したんですよ、自律神経が。

オンキ:それはいつぐらいに、どんなことがあったんですか。

アヤノ:大学院入ったときやから22か3ですね、現役でしたからね。あのPBWってネットのゲームがあるんです。Play by Webっていうのかな、頭文字とって。あのRPGのネット版なんです。そこでキャラクターを勝手に作って動かして会話していくっていうんですけど、そこで恋人役の子と揉めたんですよ。

オンキ:恋人役、はい。

Play by Webはこちら

アヤノ:キャラクター作るんです。色んなキャラクターを作って遊ぶ、なりきってセリフを言ったりとかするんですね。そこで恋人役の子に振られて、そのときに私のキャラクターも傷ついたんですよ、かなり。今思えば、何であんなんで傷つくんやろっちゅうぐらい傷ついて。で、自分の心の中やと思いますけど、キャラクターが死んじゃったんですよね1回。そのときに自分の心も死んだような感じして。そのときに自律神経がおかしくなったと言われましたね。

オンキ:それが原因なんですか。ゲームの中でアヤノさんのアバターみたいな女の子のキャラクターが、恋をして破れて、そして死んじゃったんですね。

アヤノ:はい死んじゃったんです。

オンキ:それは冥界に行って、また霊として生き返るみたいな事はできなかったんですか。

アヤノ:あ、生き返りました。何年か経ってから生き返って、別のキャラと自分の小説の中で結婚させました。それで幸せに暮らしました。チャンチャンで精神戻りました、だいぶ。

オンキ:それで自律神経も復活したんですか。

アヤノ:割とね。日常生活がうまくいくようになりましたね。

オンキ:そのキャラクターが死んでから復活するまでの間は、かなり落ちてたんですね。

アヤノ:落ちてました。はい。

オンキ:その落ちてる期間は数年間だったんですか。

アヤノ:10年ぐらい落ちてました。

オンキ:10年落ちてたんですか!

アヤノ:結婚したのは5年ぐらい経ってからでしょうけど、最近になってそのときの場面を思い浮かべて「じゃあこの人と結婚するわバイバイ」っていうようなセリフを言うシーンが浮かんだのはここ数年ですね。だからそのときの未練が断ち切れたっていうかね。

オンキ:そうなんだ。

アヤノ:すごい扱われようやったんで。

オンキ:ひどいですねその恋人役の人。その人、他のとこでも色んなことヤラかしてますね、きっと。

アヤノ:そうなんでしょうかね。なんか他の子もその子を庇ってましたしね。

オンキ:あ、そうなんですか。

アヤノ:ICQって知ってます?ICQはチャットなんです、ダイレクトの。当時そこで何人かグループ作ってたんですけど、そこで文句言われました、別の子にも。

オンキ:その恋人役の子に「つらく当たるんじゃないよ!」ってことですか?

アヤノ:いや、もう関わらないでくれって。

オンキ:それはちょっと病みますね。

アヤノ:そうですね。リアルで顔を見せて喋ることができなかったんです、当時は。ブロードバンドの時代でした。

オンキ:今や「アバターで」とか「メタバースで」が当たり前になってますけど、ずいぶん早いですね。

アヤノ:そうですね。流行ったのが本当、もうだいぶ昔ですね。今はチャットとかしますね。今はどないな形式でやってるのか知りませんけどね。

オンキ:その頃、今みたいに「バーチャル世界は自分のリアルとは違うもの」と割り切ってやってたのか、それとも自分の実人生にガンと影響があったり、健康にまで影響があるものとして受け止めてたのか。早い時期だったから、アヤノさんはモロにかぶっちゃったっていうか?

アヤノ:かぶりました。

オンキ:受け止めちゃったんですね。

アヤノ:そうですね。なりきるってとこまでいかないかもしれないけど、やっぱ精神の無意識の階層で繋がってるところあるんですよ。全く別の意思で動いてるはずだけど、どっか底の方では繋がってる。だからそのキャラクターの子が攻撃されると、私も攻撃されてしまうという原理なんです。

オンキ:その世界での活動で落ちてしまった、そこから復活するのに約10年ぐらい経ちましたか。

アヤノ:かかりました。20年かかってます。

オンキ:20年かかりましたか。

アヤノ:はい、かかりました。

オンキ:ご苦労さま、お疲れ様です。

アヤノ:無事復活して参りました(笑)

オンキ:よかったですね。

復活後の歩み出し

アヤノ:はい、だからもう就職も考えて、色んなとこ行ったんですよ。作業所とかね。京都にハートフルコーナーってあって、障害者専門の就職の斡旋してくれるとこなんです。そこで今のW社の実習をやって入ったんですよ。それから順調ですね。

オンキ:それはB型事業所みたいな所なんですか。

アヤノ: B型でした。A型も探したんですけど落ちて、かなり。パソコンで出来る仕事探してて、そこでもう落ちまくったんで、ハートフルコーナーで、もう手段考えてる場合じゃないねってことで、何でもいいからやろうってことになって、品出しになったんですよ。

オンキ:ちょっと気になったのは、その20年かけて自分を立て直していったっていう間に、ご家族のサポートとか周囲との関わりはどうだったんですか。

アヤノ:父が献身的でしたね。母は理解できなかったし。心の領域は理解できない人なんです、母は。

オンキ:アヤノさんがそういう状態に陥ったことの原因みたいなものを、お父様はある程度類推してくださったんですか。

アヤノ:はい、できました。

オンキ:お父さん、すごく柔らかい方なんですね。

アヤノ:もう亡くなったんですけど、父はカウンセラー体質ですね完全に。主治医とすっごい息合ってました。

オンキ:それはラッキーでしたね。

アヤノ:ラッキーでした。

オンキ:お母さんは逆に

アヤノ:「うちの子が障害者なんて」みたいな。

オンキ:いらっしゃいますね。自分の子が障害者である、になったってことを、受け止められない親御さんのパターンよくありますね。

アヤノ:そうです。そういうタイプですね。妹は私を嫌って一人暮らしになりました。父だけだったんです、本当にサポートしてくれたのは。

オンキ:でもたった1人でも肉親の中に理解者、支えてくれる人がいてよかったですね。

アヤノ:よかったです。でもね、結構父が甘やかしすぎるんですよ。それで自立がかなり遅れたんですよ。

オンキ:でもそれは責められないですよね。

アヤノ:で、一昨年、父が亡くなってから自立の道へ、みたいな。

オンキ:なるほど。いやあだいぶ豪快に迂回したっていうか、遠回りなさいましたね。

アヤノ:すごいです、人生狂ってます、本当に。

オンキ:でも、そうおっしゃるってことは、何かご自分を上からとか、外から見て面白い人生だなと思ってらっしゃるんじゃないですか。

アヤノ:面白いとは思わないですけど、まあいいかこのまんまで、みたいな。

オンキ:受け止めてらっしゃるんですね。

アヤノ:父からも「結婚と子供は諦めてくれって」しっかり言われたんです、何回も。「お前もうそれだけは諦めてくれ」って言われたんで、諦めつきましたね。だいぶかかりましたけどね。結婚したかったし、子供産みたかったんですけど、確かにこの性格で子供を産んだら虐待するんちゃうかと思いますね。けっこう感情がバーンと上がると物を投げたりとかするんで。子供が泣いてたりすると私手あげるんちゃうかって、こないだ母と喧嘩したときすごい思ったんですよ。

オンキ:今もお母さんと喧嘩してるんですか。

アヤノ:そういうときに結構物を投げたりするんで、あんまり刺激するとね。普段はそこまで行かないんですよ、泣くぐらいで止まるんですけど。あんまりにも怒りが達すると物投げるんですよ。だから子供持ったら虐待するんちゃうかなと思って、この間。産んだ子がかわいそうやなと思います。

父と母と手帳。

オンキ:なるほど。お話伺ってて、かなり熱いものを持ってらっしゃるからこそ、そうやって迂回なされたような気がするんですけど、アヤノさん、自分の小さい頃から今に至るまでのポイントっていうか、どんなふうに自分が出来上がってきたかって事で覚えてらっしゃることありますか。

アヤノ:母によく叩かれたり、なんか物投げられたりしたなって記憶があって。反抗期はなかったって両親は言うんですよ。大学生頃になってから反抗期デビューしたんです。よく考えると。

オンキ:遅い。

アヤノ:遅いんですよ。で、引きこもりも大学デビューなんですよ。

オンキ:僕も大学デビューでした。

アヤノ:1ヶ月引きこもって、教授に「どうしたの1ヶ月?」みたいに言われて。すいませんちょっとみたいな感じで。神学部の当時の学年は45人なんで、小教室にいたらもう顔も名前も全部覚えるんですよ。今までの学校生活で登校拒否とかできなかったんですよね。熱あったら、親が何が何でも休ますんですけど、そうでなかったら放り出すんですよね。学校行けと。だから登校拒否してる状態じゃなかったんですよ。そこまでできる度胸もなかったんだろうと今は思いますけどね。大学だったら自由じゃないですか、時間割も全部。好きなことに時間使えるから引きこもっちゃったし。反抗期中もやたらと先輩に母の悪口言ってましたね。

オンキ:お母さんとの軋轢がね。

アヤノ:ものすごい多いです。大きいです、それは。心理学的に言っても、ものすごい密着が少なかったんで、それもあるんです。私、股関節脱臼で生まれてきて、ちっちゃい頃はギブスしてて母子密着がなかったんですよ。それで母も母として振舞えなかったし、子供も子供で甘え切ることできなくて、そのままアダルトチルドレンみたいなものが全部付いてきたんですよね。発達障害もあるんです私。一応まあ発達障害の薬1個飲んでますしね。

オンキ:それは認定されて手帳を取るところまで行ったんですか。

アヤノ:手帳持ってます。精神の発病して、精神科に行ったときから持ってます。

オンキ:なるほど。股関節脱臼から、母親とちゃんとした接触持てないみたいなとこから、ずっと緩やかにアヤノさんが出来上がってきたと思ってらっしゃいますか。

アヤノ:うん。今から思うと「ああこうやったんや」ってものがありますね、納得するものが。

オンキ:でも小学校ぐらいになって股関節脱臼も良くなってきて、お母さんとの関係も、通常の親子というふうになっていけたんですか。

アヤノ:いや、なれなかったです。

オンキ:なれなかったんですか。

アヤノ:なれなかったんですよ、それが。結構ね、私がわがまま言ってたんかな。学校の先生の言うことが正しいって頭だったんで、お母さんの考えを言われても「違う!」って言ってたらしいんですよ。

オンキ:お母さんの考えと学校の先生の考えの違いの大きなとこって何だったんですか。

アヤノ:当時覚えてないんですけど、先生の言ってた事と「違う!」言うたらしいんですよ。で、もう母が教えへんになってきたんですね。

オンキ:「アンタみたいな子にそんなん言われるんやったら、もう何にも言うたらへん!」みたいな。

アヤノ:そうそうそうそう。それが続いて大きくなったんです。

オンキ:お母さんも意地っ張りですね。

アヤノ:そうですね。両方同じなんです、性格が。

オンキ:聞いててそう思いました。なんかお母さんに似てらっしゃるような気がしましたね。

アヤノ:似てるって父も言ってました。そっくりって。

オンキ:で、しかも2人とも負けず嫌いですね。

アヤノ:そうですそうです。多分それはそっくりそのままもらったんでしょうね、負けず嫌いは。でもね、母は私が負けず嫌いだと思ってないんですよ。

オンキ:え、なんだと思ってるんですか。

アヤノ:何にも言うこと聞かへん子って。負けず嫌いになれって言うんですよ、逆に。

オンキ:はあ?みたいな。「もっと私みたいに頑張るようにならんか」みたいな感じですね。

アヤノ:そうそうそうそうそう。もうスパルタ教育でした。

オンキ:お母さん、もう40年以上娘と付き合ってきて、そろそろ悟ったんじゃないかって、まだなんですね。

アヤノ:まだです。

オンキ:まだですか。一生の戦いですね。

アヤノ:そうですね、分からないんじゃないですか。

オンキ:分からないんでしょうね。

アヤノ:多分ね。母は看護師なんです、それでも。

オンキ:ひょー! 一番人に寄り添わなきゃいけない方が、そんな。

アヤノ:「商売だからできるのよ」って言いました。お金が掛かってるからって。

オンキ:全く私事で申し訳ないんですけど、僕の母も看護師で、本当によく似てる。高圧的に自分こそが正しいっていう人で、聞いていて本当に我が事のような気がしました。

アヤノ:やっぱそうなるんですね。

オンキ:僕はだから、小さいとき母親に注射される身でした。

アヤノ:私はインフルエンザになったときに、栄養の点滴してもらってましたね。

オンキ:あれ食べちゃ駄目だ、これを食べちゃ駄目だ、そんなもの食べたら病気になるってのを、母親として言うってより、何て言うかな、刑務所の監察官が囚人に言うようななものの言い方で。

アヤノ:あーわかりますそれ。

オンキ:それへの反発で、僕も心を病んだ時期があったような気がするので、アヤノさんのお話を聞いてて、だいぶ想像がついてしまうのが嫌ですね。

アヤノ:それ想像つく人めったにいないですよ。医者は分かるみたいですね、薬の種類見て。今は主治医とは違う先生に診てもらってるんですけど、その先生は薬の欄見て「色々あったんですね」って言いました。

オンキ:薬歴見ただけで、その人に起こってきたことが分かるんですね。

アヤノ:分かるんです先生には。

病気満載の再出発

オンキ:さて、じゃあそれで本当に大きな波、小波を経て今、復活期にいらっしゃるんですけど。

アヤノ:そうですそうです。

オンキ:とはいえ、まだ人生終わってないっていうか、これから本格始まりみたいなもんじゃないですか。

アヤノ:そうですそうです。まさしくそうです。

オンキ:時間は普通の人の5倍ぐらい掛かってますけど、ここからのリスタートでやっていきたいこと、自分がどうなっていこうかっていう、構築のイメージみたいなのはありますか。

アヤノ:作家になりたいっていうイメージがありますよね、やっぱり。でも主治医が思いっきり反対したんですよ「趣味でやりなさい、頭でっかちになってる」って言われたんです。生活力を身に着けなさいって言われて。「もう作家になる夢諦めろ」ってもう散々言われて、一時諦めてたんですよ。

オンキ:主治医が患者の夢を諦めろって言うのも、なかなかですね。

アヤノ:変わった人なんですよ。

オンキ:変わった人なんですか。

アヤノ:むちゃくちゃ変わってるんですよ。1人につき30分ぐらい診断するんです。

オンキ:普通の倍以上ですね。

アヤノ:はい、だから1時間で4人診れたらせいぜい早い方、な先生なんですよ。

オンキ:でもいい先生ですよね、そういう人は。

アヤノ:いい先生はいい先生です。ちゃんと見てくれはりますね。

オンキ:その人の人生を受け止めようとしてくれてる感じしますね。

アヤノ:そうですね。そんな感じですね、よく話をしましたね。ただでも小説家は本当、イチロー選手に例えて「それでもやるか」って言われましたね。「0.1%の人になりたいか」って言われて。

オンキ:なるほどね。アヤノさんを見て感じて、それがいいと判断なされたんですね。

アヤノ:でしょうね。趣味でする分にはいいって言われたんですよ。ですけどnote入って、メンバーシップに入ってた人が作家目指してたんですね。それに触発されて、なんか賞に応募しようかなと思うようになりましたね。作家になるというか、まあ賞の公募に応募しようかなとは思ってますけど。

オンキ:今、出版業界もなかなか大変ですけど、これからWebで課金して収入となるような作品を作っていこうみたいなことをお考えなんですか。

アヤノ:まあライターも考えたんですけど、どうも性格的に無理かなと思ったんですよね。

オンキ:ライターには取材、人との関わりとか、現場に行く必要がありますよね。

アヤノ:そうなんですよ。車がないので、私には。病気上、免許取るなと言われて。てんかん気質って言ったらなんか語弊があるらしいんですけど、そういう系統もあるらしいので。それはもう絶対駄目って周りからずっと言われてるんですよ。だからライターはちょっとやばい、やめようかなと思ってて。今の品出しの仕事を一生懸命やればいいかなと思ってるんです。その傍らでKindle本とか作ってるんで、趣味で。それでまあ1万円貯まったら、振り込まれたらいいやみたいなとこありますね。自分の創作は見てもらえるだけでいいかなって。読んでもらうだけでいいかなとは思いますね。

オンキ:どんなジャンルの、どのくらいの分量をこれから作ろうと思ってらっしゃるんですか。

アヤノ:今はね、もう長編連載してるやつが4万字とかになってるんですよ。それが3つ揃って、4巻目までは出したんかな。5巻で今2万5,000くらいたまってて。なぜか1冊4万字ぐらいじゃないと出す気にならないんですよ。

オンキ:それ本としたら2500円ぐらいの本ですね。

アヤノ:いやもう110円とか330円ですよ。趣味でやってるからっていう。

オンキ:なかなか長いですね。

アヤノ:長いですね。まだ終わんないんですよ、本当に。ぶっつけ本番で書いてるんで。でも1話完結型のもあるんで、それを集めて10話ずつ集めるとかもあるんです。いろんなパターンしてるんですよ。

オンキ:なるほど。武道とかダンスとか、体を動かすことでのセラピーというか、自分を立て直すみたいなことはお考えになったことはないですか。

アヤノ:なんかね、教授にヨガがいいって言われたんですよ、昔。ヨガがいいって言われたんですけど、お金かかるじゃないですか、ヨガ教室って。

オンキ:そうですね。

アヤノ:何かしようと思って、運動療法にも通ったんですけど、結局定着しなかったんですよね。今は仕事の品出しで店中回るじゃないですか、台車乗せて。そういう歩数と行きと帰りの歩数合わせて7000歩ぐらい歩くかな、合計。ってぐらいで今、運動ってことにしてます。

オンキ:7、8,000歩いてればまあまあの運動量だし、それ以上やると逆に負担になるって言いますよね。

アヤノ:そうなんです、はい。近くのスーパー行ったりするともうほんと9,000くらいとかになっちゃうんで。結構歩くんですよ、店の中だけでもう5,000歩超えるんで。先生もそれぐらい歩いてれば大丈夫っていうんですよ。

オンキ:確かにそうですね。なるほど。じゃあ職業作家ではなくそうやって創作しながら、公的支援っていうかいろんな優遇措置みたいのは受けてらっしゃるんですか。

アヤノ:多分、会社の方でしてくれてると思います。

オンキ:あの、障害者雇用枠を満たすことでの援助金もありますよね。

アヤノ:あります、あります。W社の本社からの雇い入れなんで。今年から出勤日の書類にハンコ押してるんで。前はなかったんです。その週3なってから出てきたんで、多分おそらくW社の本部から障がい者の雇用をすすめる、子会社系列のO社ってのがあるんですけど、そこに書類出してくれって言われたんちゃうかなと思ってます。なんかそういうのが手厚いですねW社。

オンキ:W社だけにね。W社って、良い福祉っていう意味ですもんね。

アヤノ:そうか、そういう意味やね。むちゃくちゃなんか福利厚生厚いですよ。自分の薬局決めたらそこで何割かな、2割かな、給料に入るっていうのもあるんですよ。

オンキ:それは素晴らしいですね。

アヤノ:遠すぎて嫌なんですけど薬局。そこ行くと往復8kmなるんですよ。でもそこ行ったら、毎月3,000円がほんと給料に入るんですよ。だって精神科の薬代だけで8,000円しますもん私。あと私、糖尿もあるんで、普通の病院の薬は、薬局に出したら給料に3,000円入ってるんですよ。

オンキ:あれ、糖尿もあるんですか。

アヤノ:あるんですよ。

オンキ:何か病気のデパート状態じゃないですか。

アヤノ:そうです。まさしくそうです。

オンキ:心と体の病気満載ですね。

アヤノ:満載です。

オンキ:血管系と、あと内分泌系だけはお気をつけください。

アヤノ:はい分かってます。1回だけ甲状腺も言われたことがあって。

オンキ:本当にデパートだ。

アヤノ:て言われて。精神の方で採血したら異常が出て、でその糖尿病の大きな病院の方で調べたらそのときは出たんですけど。次、3ヶ月後だったかな、調べたらもう消えてたんですよ、甲状腺の異常は。

オンキ:でも、こうやってアヤノさんの声聞いて、病気のデパートが心にも体にもある人の、ズタボロになった弱々しい声じゃ全然ないんですよ。もうなんか「子供13人育ててトラック運転して畑も作ってる」みたいな人の声なんですよ。

アヤノ:そうなんですか。

オンキ:すごい張りがあるっていうか、生命力が強い人の声ですね。

アヤノ:父の血を引いてるかもしれませんね、それは。

オンキ:お父さんがそういう方なんですか。

アヤノ:父がね、ものすごく若かったんですよ。

オンキ:お亡くなりになるまで若かったんですか。

アヤノ:若かったんです。周りの人に「元気ですごい若い」って言われてて。だから亡くなった日は主治医もガーンっていう感じでしたよ。

オンキ:「え、亡くなったの?」みたいな感じですか。

アヤノ:そうですそうです。ちょっとショックやったってほんまに言われました。

オンキ:なるほど、医者もびっくりだったんですね。

アヤノ:そうなんです、受付の人もえーとか言うて、もう。その日、主治医の先生は裏方で仕事してたのに、表まで出てきて話聞いてくれたんですよ。「ええー」みたいな感じになって。後で聞いたら「もうびっくりしたあ」って言ってはりましたね。

オンキ:ってことはアヤノさん、そのお母さんの意固地な負けず嫌いとお父さんの頑健な生命力の両方をしっかり受け継いでいらっしゃいますね。

アヤノ:そうですね、はい。

オンキ:妹さんは、いかがだったんですか。

アヤノ:妹も1回うつ病になったんですよ。外へ出てからですけどね。でもそれから精神障害3級になって、もうほとんどそんなに影響ないです。仕事も派遣でバリバリしてますし。

地雷踏んでも3日で復活

オンキ:いやあ、でも何か後半生が楽しみですね。

アヤノ:そうですね。

オンキ:遅めの後半生ですね。

アヤノ:そうですね。遅かったですね、本当にここまで行くのに。

オンキ:でももう折り返したっていうか、もう山を越えたっていう思いはあるんですよね。

アヤノ:ありますね、はい。やっと就職出来たなってとこありますし、ここ1年でだいぶ自立心も芽生えましたしね。

オンキ:そういうステータスからどんどん歩みを進めていこうっていう、同じような状態にあるお仲間というか、話のできる方はいらっしゃるんですか。

アヤノ:いないんですよ。学友でさえ何か変な商売の方に連れ込もうとしてたし。もう全部縁切ってるんですよ。「いいお水いらへん?」みたいな。

オンキ:うわー、そういう闇系がやってくるんですか。

アヤノ:やってくるんですよ。だから高校大学もう完全に断ってます。昔中学校のとき親友だった子も、もう愚痴聞き係なんです、とにかく私が。

オンキ:逆にアヤノさんが聞いてあげてるんですか?

アヤノ:そうですそうです。ていうか「私の方がつらいのよ」って言われるんです。

オンキ:それはどうかな。

アヤノ:だからもう、そういう関係があるんで、もうもう全部捨てましたね。

オンキ:本当はね、イーブンでやり取りできる人がいることで、心の安定っていうか。僕も引きこもってたときに思ったんですが、頭の中が荒れるんですよね。そういうときに書いたりする文章って本当に支離滅裂になったりして、やっぱり人付き合いってのは心身のバランスのために、水、空気、栄養と同じように必要な気もしますね。

アヤノ:まあ一応、パートの先輩が普段話をしてくれるんですよ。愚痴は言うことはないんですけど。その付き合いだけでなんとかなってます。

オンキ:何とかなってますか。

アヤノ:深入りはしないんです。LINE交換とかしないんですよ。仕事場だけの会話。それがもう楽なんですよ。もう他に関わる人いらんみたいな。

オンキ:今、LINE交換したことで病んでしまう人なんていっぱいいるじゃないですか。

アヤノ:ね、LINE交換しないんですよ。だってその前メンバーシップに入ってた人も、北海道の人なんですけど、私にめちゃくちゃ会いたがるんですよ。「会いたい会いたい」って言うんですよ。他の人が「世間で物騒な事件も起こってるから会わない方がいい」って散々説得して、納得してもらいましたけどね。でも結局揉めて、そのメンバーシップ潰れちゃったんですけど。それが今年の、今月だったんですよ。

オンキ:今月かい。

アヤノ:そう、その後母と喧嘩したとかむちゃくちゃあって。で、そのアカウント作ったんですよ。

オンキ:アヤノさんなんか、いつも地雷踏んで紛争地帯にいるみたいですね。

アヤノ:そうですそうです。常にそうです。

オンキ:常にそうなんですか。

アヤノ:常に何かありますね。

オンキ:それしんどいですけど、しんどそうじゃないですね、あんまり。

アヤノ:そうですね、慣れちゃいましたね。

オンキ:これからも多分、あっちこっちで知らん間に地雷踏んでるかもしれないですね。

アヤノ:そうですね。分かりたいんですけどね地雷を「ここ避けなあかん」っていうのを。どうも踏むみたいでね。

オンキ:踏むみたいですね。でも手足吹っ飛んでいかないですね。

アヤノ:そうですね。転んでもタダでは起きないってのは本当あります。

オンキ:おー。やっぱ強いわ。

アヤノ:全部ネタにしますね、小説の。

オンキ:何だ、じゃあもうデータストックにどんどん格納するために。

アヤノ:そうです。入れてます。

オンキ:そのときに人の思いだとか、ネガティブなもの、いいものも含めて色んなものが見えてそれが自分の中に入ってきますか。

アヤノ:そうですね、はい。全部入れてきますね。

オンキ:じゃあ何にも無駄はないっていうか、全部お得ですね。

アヤノ:お得です。なんかね、一昨日漢検の勉強してたときに七転び八起きっていうのがあって、七転八倒とか分かるんですけど「起」ってなんやろって。「起きる」だったんですよ。「あ、これ私や」って。7回転んでも8回目に起き上がるっていう意味なんですよ。

オンキ:いや、そうですよね。

アヤノ:私やって、これ。こんなこともあんのかみたいな思いしましたね。

オンキ:「これ私やん」みたいな。

アヤノ:そうですね、タダではもう立ち上がりませんね。なんか掴んでますね。

オンキ:パワフルだわ。パワフルだから地雷原に行くんだわ。

アヤノ:ああそうか。

オンキ:普通、それだけ爆発物と遭遇してたらめげますよ。

アヤノ:まあ、めげるんですよ、これでも。めげるんですけど復活しますね、3日もすれば。

オンキ:3日で。

アヤノ:3日ですね、最初の病気のときが大きいんですよ。それに比べたら今なんて軽いの、みたいな。

オンキ:段々耐性ができてきてんですね。

アヤノ:ですね、できてます。もうこういう人にはこういう対応した方がいいとか全部できてますね。

オンキ:なるほど。気をつけた方がいいなっていう兆候が出たら、すぐ「おっ」と分かるんですね。

アヤノ:分かります。切りますね。

オンキ:切りますか。

アヤノ:切ります。

ラストメッセージ

オンキ:分かりました。最後にメッセージっていうか、言い残しことがあったらお願いします。

アヤノ:愚痴を聞いてくださいね、本当に。愚痴を聞いてくださいって言いたいです、誰か。

オンキ:なるほどね。じゃあ愚痴を聞いてくれる人募集ですね。

アヤノ:そうですね。

オンキ:でも聞いてくれたら、向こうも聞いてくれって言ってきますよ。

アヤノ:そうなんですよ。結局聞くことなるんですよね。

オンキ:それはイーブンでお願いしますっていう。

アヤノ:イーブンなのかな、全部私が引き受けそうな気がするんですよね。

オンキ:そうですか。

アヤノ:母の愚痴までずっと一手に、小学生の頃から聞いてましたからね。

オンキ:一手にですか。

アヤノ:そうです、妹遊び過ぎてて。

オンキ:お母さんもそういう方だったんですね。わかりました。じゃあ創作活動頑張りつつ、心身のバランスを取りつつ、地雷はほどほどに。

アヤノ:そうそう、地雷はほどほどに。もう避けたいぐらいですね。

オンキ:無理です、きっと。わかりました。ご無事で、お大事にお元気でお過ごしください。

アヤノ:はい、ありがとうございます。

あとがき

自分がこじらせているのは分かってるし、満身創痍なのも承知の上。
でもそのマイナスをねじ伏せて、七転び目の八起きもしないではおれないエネルギーも満タン。W社のバックヤードを駆け巡りながら、アヤノさんは満足の行くラストスパートを駆け抜けるのでしょう。いや、遅めの折り返し地点だから、まだまだこれからか。誰でも「今が、ここが折り返し地点」と思えば思える筈なのか。さて爆発物の処理に長けたお姉様のお話を堪能して頂けましたでしょうか。

【インタビュー・編集・あとがき:オンキ】

【文字起こし:安東まつ】

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