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小説書いてもらってみる002:生徒Aさん初稿(書き出し)

「この小説書いてもらってみる」シリーズは、息抜きがてらに小説書くかーっていうときに、小説を書いてみたいという人がいたので、レッスンしながら書くことにしました。


小説のお題

お題はこんな感じで書く!

・テーマは行動「手紙を書く」※生徒が出しました。
・文体は私小説、「私は」で書く。注意点は、自分から突き放すこと。自分の感情を書かずに登場人物の気持ちを書く。
・文字数は2-3000字。
・事件は起きてもおきなくてもいい。感情だけ書き連ねてもいい。
・最初の書き出しは、「手紙を書きだした。でも書けない。」にしましょうか。

私qbcはもうすでに書きあげていて、作品はこちらから読めますよ。

そしてこの企画のまとめマガジンはこちらですよ。

生徒さんからの質問

ということでですね、「生徒さん」に私の書いたものを読んでもらいました。

そのリアクション。

これってもういきなり書き始めたのですか??
登場人物の設定とか、起承転結とか、最初に決めたのですか…?!
私は机に向かっても、全く手が進まずお供の紅茶だけが減っている状態です。最初にあらすじ考えなきゃ!と思ってたので…。
自分こんなに書けないものかと、恐れおののいています。
あと、qbcさんは、これを書くのにどれくらい時間かかりましあ?

まず、全体から入ると大変なので、まず最後まで書いて全体感を掴むことをゴールに、冒頭を書いてもらう指導方針で進めることにしました。

で、私の書いた小説の冒頭は、これです。

手紙を書きだした。でも書けない。それはそう。こんな気分では書けないだろう。
椅子から立つ。自分の部屋を出て、階下に降りる。深夜2時。キッチンで、冷蔵庫から牛乳をとりだして、マグカップにそそぎ、飲む。
私は、母に借金の手紙を書かなければならなかった。内容だけで言えばLINEで送れば秒ですむものの、100万円という額のお金をLINEでいきなり無心するのには気がひけたというか、心が感じられなさすぎて貸してもらえないのじゃないかと思い、肉筆の手紙を、今、書いている。
30歳も過ぎて親に借りるとは情けない。ただ妻に相談できるわけもないし。
そのときだった。
窓に、バン! 
大きな音。この深夜になんだろう。

で、この冒頭をベースにした私の回答。

1,これってもういきなり書き始めたのですか??
いきなり書き始めてます!
手紙が書けない時にするだろう行動をただ書いて、事件ぽいこと起こしてます。

2,登場人物の設定や起承転結
人物設定は、行動させるときに、芝居を勝手にさせて、あ、それ面白いな、と思ったらそっちの方向にいこうか、みたいにしてます。
例えば、牛乳を取るシーンがありますが、小説の文では描写してないですが、冷蔵庫の中から麦茶をとらずに牛乳とるんだとか、マグカップにいれるんだ、とか、そういうひとつひとつが人物設定になっていきます。

最初は、自分をモデルにするか、知ってる人をモデルに書いていくのが良いと思います。でも、完全にモデルとは同じにしないように注意してください。例えば自分は紅茶にレモン入れるけど、登場人物はレモンを入れるのを絶対しない、とか。

あと起承転結は、始まって、事件起こして、解決しようとすればだいたい構成できます。
ひとまず、100文字でも200文字でも冒頭書いてみましょう!

3,書いた時間は?

3時間くらいです。2回に分けて書きました。
でも、もう一回くらいは見直して推敲すると思います。(記事掲載されているのは、推敲後のものです)

小説の初稿

と、いうことで、1日で書いてくれました!
レスポンスの速さ、いいですねー!!!!!

手紙を書きだした。でも書けない。
「はぁ。手紙を書きたい。なるほどね。手紙を書きたいんだったら、まずは便箋と封筒を本気で選ぶところからだね。便箋と封筒はね、書きたい相手のことを本気で考えて選ぶんだよ。そっからだから。自分の想いが最大限に伝わるようなデザインのものをチョイスする。そんでもって机に向かう。で、頭の中で相手のことをイメージする。そしたらおのずと手が動くよ。なんて言うかね、言葉のほうから勝手に自分のほうに寄ってきてくるんだよ。っていうか、あんたすっごい良いガラスペン持ってんじゃん。贅沢だよ。良い便箋と封筒に、高級ガラスペン。言っとくけど鬼に金棒だからね。」
こんなことを言ってきたのはどこのどいつだ。ふざけるな。こんなのは嘘っぱちだ。良い便箋と封筒とガラスペンがあれば誰でも手紙が書けるって言うのか?それが本当なら、私のように手紙を書くのに苦労するやつなど、どこにもいないだろう。全く持って自己中心的な人間である。あいつとは友人をやめようと思う。

小説の基礎:目的と誰が何をしているかをはっきりさせる(目的+5W1H)

qbc:これ、登場人物が二人ってこと?

生徒さん:セリフの部分は回想的なイメージです。言われた通りにやったのに、書けないから、怒ってるみたいな。全員が全員それが出来ると思うなよって、机に向かいながら怒ってる感じです。

qbc:なるほど! 気持ちをストレートに表現するのはかなり良いです! 強烈な感情は人をひきつけるので。

生徒さん:ありがとうございます!

qbc:あとは、主人公の目的と5W1Hをはっきりさせることかな。

小説の基礎:目的と誰が何をしているかをはっきりさせる(目的+5W1H)
小説の基本は、5W1Hがわかっていることです。
登場人物が誰で、いつ、どこで、どんな人で、何をしようとしているのかをはっきりさせる。

qbc:その観点で直すと、さっきの文章は、こうなります。

【変更後】
手紙を書きだした。でも書けない。
友人に手紙を書かなきゃいけないのに。
煮詰まると、どうも私の心にはもう一人の私が出てくる。私と真逆の性格をもった、私の心の中にしかいない私だ。
「はぁ。手紙を書きたい。なるほどね。手紙を書きたいんだったら、まずは便箋と封筒を本気で選ぶところからだね。

【変更前】
手紙を書きだした。でも書けない。「はぁ。手紙を書きたい。なるほどね。手紙を書きたいんだったら、まずは便箋と封筒を本気で選ぶところからだね。・・・」

qbc:この目的と5W1Hは超重要です。
ラノベだったら「私、日本生まれ日本育ち20歳。今、いきなり宇宙人に追いかけられています。」くらいやってきたりしますよね。ここがクリアになっているかどうかで、その後読み進めてくれるかが決まる、と考えましょう。

生徒さん:この目的と5W1Hって、書く前に考えているんですか?

qbc:いや、今回は2-3000字なので、書きながら考えてますよ。私の場合、こんな感じの思考です。


<本文>
1手紙を書きだした。でも書けない。それはそう。こんな気分では書けないだろう。
2椅子から立つ。自分の部屋を出て、3階下に降りる。4深夜2時。キッチンで、冷蔵庫から牛乳をとりだして、マグカップにそそぎ、飲む。
5私は、母に借金の手紙を書かなければならなかった。内容だけで言えばLINEで送れば秒ですむものの、100万円という額のお金をLINEでいきなり無心するのには気がひけたというか、心が感じられなさすぎて貸してもらえないのじゃないかと思い、肉筆の手紙を、今、書いている。
630歳も過ぎて親に借りるとは情けない。ただ妻に相談できるわけもないし。
7そのときだった。


<思考の流れ>
1手紙賭けなかったら、気分転換するよな。
2どこにいるんだこの人は? 部屋だろうな。部屋を移動して気分転換させよう。
3おっと階段おりて、自分の心の中におりていくイメージだそう。
4てか、今何時? 内面っていうと深夜がいいな。で、夜の黒に牛乳と。
5そろそろ事件というか目的書こう、借金にするか。母親に借金する手紙。
6年齢も書いておかなきゃな。
7あーもう説明多い、さっさと事件起こすか!
って流れだったね。


生徒さん:なるほど!!!!書きながら考えておられるのですね!!
私は何も考えずにそのまま書き進めてました…!

qbc:感覚で書いていってオッケー。で、感覚で書いたものを読み返して、考えて、これ足りないなという要素を書き足して、また感覚で書いて、の繰り返しかなー

生徒さん:この1~7の間だけでも、頭の中で高度な思考が動いていますね。

qbc:いや、そんな高度でもないですよ。
お出かけの予定を自分の頭の中で考える程度のことです。
例えば明日、新宿行く予定がある。
・所沢から西武線乗って新宿まで行って、
・ジュンク堂とハンズで買い物して、
・沖縄料理のやんばるでランチして、
・夜には代々木でドイツビールで友達と飲んでカラオケして帰る
みたいなことを考えるようなものです。慣れてしまえばね。

生徒さん:なるほど、慣れ。

qbc:頭の中で、この行動にどれくらいリアリティもって想像ができるか、じゃないかな。
繰り返し練習するうちに、登場人物が体験する世界が眼に見えてくるっていうか。
たとえば、小説の中に書いてないことを質問された時に、さっと答えられるようになるんですよ。
冷蔵庫の中には、牛乳以外に何が入ってたんですか? と質問されたら、麦茶とめんつゆです、て答えられるみたいな感覚。質問された瞬間に、あるものがぱっと見えるような感覚です。

あとがき

けっこう充実したないようになってきてない??

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

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