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小説書いてもらってみる001:生徒Aさんお題+見本作品

また、突発的に企画を始めてしまった。
無名人インタビューの根源には、私qbcが小説を書いていたときのエッセンスがめっちゃ入ってる。

現在過去未来の物語形式
セリフ偏愛=喋り言葉そのまま
インタビュアーを黒子にする

まあ、ね。
だから小説ワークショップはやりたかったんだけど、なかなか時間がとれなさそ、て思ってたけど、でもやりたい! やりたい! やりたあああああい! みたいな感じで、そうね、はじめちゃいましたあ。
生徒見つかったので!!!!!

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テーマの設定の仕方

感情か、行動か、風景か、の中から選べばいいです!

・かなしい
・紅茶を飲む
・窓の外から見える山

とかで、いいんです!!!!!

小説とはなんですか?

小説って、特になんでもないんですよ。ルールないのが小説で、いいです。
短歌、俳句みたいに字数決まってないし。
これは小説ですって言えば、新聞もエッセイも全部小説です。
私の中の定義では、小説だというとそれがフィクションだと思われる、没入感がある、もうひとつの世界、もうひとつの現実です。
そうね、現実です小説は。
小説には、だいたいね、筋道、登場人物、出来事、があればできますよ。

書き方は?

なんでしょね。どうやって書いてるんだろう。私はもうあんまり無意識で書いてるんで。
なので、実物書いて、または書いてもらった実物みてここ違うよ、ここ最高、みたいな感じで進めていくしかないかなライティング教室を。
生徒はいるんだ。
で、生徒に聞いたら、書き方のヒントが欲しいと。
それなので、こうやって、だしました。どん!

小説を書くヒント
・テーマは行動「手紙を書く」※生徒が出しました。
・文体は私小説、「私は」で書く。注意点は、自分から突き放すこと。自分の感情を書かずに登場人物の気持ちを書く。
・文字数は2-3000字。
・事件は起きてもおきなくてもいい。感情だけ書き連ねてもいい。
・最初の書き出しは、「手紙を書きだした。でも書けない。」にしましょうか。

で、これで、私も、書いて見ました!!!!!

短編小説「今はもうない」

手紙を書きだした。でも書けない。それはそう。こんな気分では書けないだろう。
椅子から立つ。自分の部屋を出て、階下に降りる。深夜2時。キッチンで、冷蔵庫から牛乳をとりだして、マグカップにそそぎ、飲む。
私は、母に借金の手紙を書かなければならなかった。内容だけで言えばLINEで送れば秒ですむものの、100万円という額のお金をLINEでいきなり無心するのには気がひけたというか、心が感じられなさすぎて貸してもらえないのじゃないかと思い、肉筆の手紙を、今、書いている。
30歳も過ぎて親に借りるとは情けない。ただ妻に相談できるわけもないし。
そのときだった。
窓に、バン! 
大きな音。この深夜になんだろう。
キッチンの窓を見る。この家は定借で借りている一軒家。東京郊外。キッチンシンクの上には窓がついている。カーテンはない。窓ガラスの屋外側には大量の水滴がついていた。なんだろう。ルームライトに照らされ輝く無数の水滴。その向こうに夜、闇。雨は降ってない。水滴の正体は雨ではない。
怖かった。いたずらか? 誰かが何かを投げつけたのかも? あるいは鳥がぶつかってきてしまった、という可能性もある。何かどこかで他人から恨みを買っていたのか?
「何? 今の音」
気づけば妻が私の隣にいた。
「起きてたのか」
「おしっこしてたら、大きな音がするから」
深夜に大きな音。たぶん、人が投げたもので、それはなぜならいたずらだと思うのだが、何かを投げたのだとしたら、まずこの家の周辺にいたことは間違いない。まだいるかどうかは分からないが、不安だ。
怖いな。怖い。
私は私の心の中の言葉を口にした。
「怖いよな」
「怖いわよね」
不思議と妻の声音には、恐怖がなく、不安を感じられず、冷たかった。私はそちらのほうに気をとられた。不幸中の幸いか、お陰で恐怖がやや薄らぐ。
「ちょっと俺、玄関の鍵見てくるわ」
「あ、うん。気をつけて。攻撃してきたやつが、まだいるかもしれないから」
攻撃か。間違ってないな。窓なんてその気になればぶち破れるのだから、まだ威嚇といった程度か。恐ろしい街よな、東京。

50分経った。私と妻は1階のリビングのソファに座っていた。玄関の扉、家中の窓、二階も含めてのすべての入口の鍵、見直した。Wi-Fiはもしや盗聴されているかもしれない、すべて5Gでのデータ通信に切り替えた。知識はそこまでないから、これで完全に通信の傍受を防げるのかどうかは分からないが。
眠れない。眠れない? 私たちは眠らなかった、の間違いだろう。いつ襲ってくるかもしれないんだ、眠れるわけがないだろう。
私たちは、窓に何かを叩きつけられてから、ずっと、1階のリビングのソファに座っていたのだ。
妻が言った。
「ねえ、お腹空かない?」
「空いたと言えば空いたかもしれない」
妻に言われて、確かに自分の腹は減ってるかもしれない、と思った。晩飯は19時。今3時。
ただ、どうでもいいだろう、そんなこと。もしも襲撃されたらどうするんだ。人生において、自分の家が襲撃されることと自分の空腹、どっちが大切なんだ?
この女め。私は内心で毒づいた。
私は言った。
「警察に通報しよう」
「嫌だ。もし呼んで何もなかったら、近所で噂になる。それよりも、冷凍庫に、食パンあったでしょう? あれを取ってきてよ。トースターで焼いてよ。ジャムもバターもいらないから」
「そんな馬鹿な」
なぜ今? なぜ、今なんだよ。
「我慢しろよ。物音を立てて、相手を興奮させて、それで襲撃してきたらどうする?」
「だって、あなた、パン屋じゃない」
「俺がパン屋だからって、こんなエマージェンシーにパンを取ってくる道理があるかよ」
「あなたのパン屋の試作品の食パンが入ってるんじゃない」
「そうだが!」
確かに私はパン屋だった。ただパンを焼くのが商売ではない。望む顧客にパン屋のノウハウと原材料を販売し、ライセンスを付与してパン屋を経営してもらうベーカリーフランチャイズ企業の会社員だ。
妻が言った。
「なまずパン屋でしょう」
私の勤める会社の看板商品が、なまずパンだった。なまずが中に入っているのではない。ベースはメロンパンだ。大人の男のげんこつほどの小ぶりメロンパンを黒糖でキャラメリゼした商品で、宣伝キャラクターの名前はなまず君。正直、形もそこまでなまずではないし、色も黒ではなく濃い目の茶色なのだが、強硬になまずと言い張ることでかえってその名前を世の中のパン好きもしくは甘党に覚えてもらうことになった、ひょうたんからコマ的大ヒット商品だ。
年間100万個売れているのだ。馬鹿にするものではない。もってのほかだ。
「それでこの家はメシ喰ってるんだから偉そうなこと言うなよ」
妻は舌打ちした。
「別に今、私も稼いでる」
妻は最近、オンライン秘書というのを始めて、小金を稼いでいるらしい。金額は知らないが。私より稼いでいるはずもないが。
私は、ふいに、浮気相手の顔を思い浮かべた。いや好きな人のことを自然なことなのかもしれない。妻よりも年下の彼女。妻よりも私に献身してくれる彼女。
彼女は、フランチャイズチェーンのパン屋のオーナー店長だった。パン屋として独立するために、彼女は一生懸命会社員をし続けたのだ。それで貯金した。
毎日、彼女はなまずパンをこねている。なまずパンは、アップグレード商品として、ガリガリなまずパンというのがある、焦がしたザラメをアイシングでなまずの頭の上にはりつけた、記憶喪失になるくらいに甘いパンだ。このアイデア、彼女が考えた。私の浮気相手が、考えた。

妻が言った。
「ちょっと待って」
「なに?」
「あそこ、窓のところに、何かゴミがついてる。気づかなかったけど、あれ」
「ああ、水風船かな? 水風船の破片」
音がした窓ガラスの屋外側の表面に、オレンジとイエローとブルーのマーブリングカラーのトマトの薄皮のようなものが張りついていた。こんな派手な色のものに気づかなかったのも、それはきっと夜が暗かったからに違いない。
妻が言った。
「ごめん、どうしよう。やっぱり私のせいだ」
妻が話してくれた。先日、公園で水風船で遊んでいる子供がいた。その子供が投げた水風船が自分に飛んできて、水風船、割れはしなかったけど、びっくりしてつい大声を出してしまったと。すると子供がギャンギャン泣いた。5歳くらいの女の子。
そこにその女の子の父親があらわれて、よくもうちの子を泣かせやがったな、と恫喝された。
妻が言った。
「この水風船、きっとその親の嫌がらせだ。慰謝料100万円、払わなきゃ」
「100万?」
ぞっとした。ちょうど100万の金の無心の手紙を書いていたところだったから。
妻が言う。
「あなたが遊んだ女を堕胎させたお詫びに払わなきゃいけない、母親から借りて返すつもりもない100万で、払わなきゃ」
「なんで知ってる?」
「浮気した女から教えてもらった」
「どういうことだよ」
妻が事実を教えてくれた。
・浮気相手は私に愛想を尽かして、妻に何もかも話したということ。
・先ほどの水風船は妻の仕組んだいたずらで、私への仕返しだということ。
・妻は私と離婚するということ。
妻が推測を教えてくれた。
・浮気相手は会社にも報告し、あなたの社内での立場を危うくするであろうこと
私は言った。
「水風船を投げたのは、誰だ?」
「私よ」
なるほど。気づかなかっただけか、私が。

窓からした深夜の異音の正体、そして水風船の犯人がわかった。つまり今夜はこれで眠れるということだ。妻が言った。おやすみなさい。私も返した。おやすみなさい。
私たち夫婦は、それぞれの寝室に向かう。
私は自分の寝室で、母への手紙書きを、再開した。
お金を借りる相談について、手紙の最初で書いていたが、その部分はそのまま残して、さきほどあったスリリングな水風船をきっかけに始まった数時間をつけくわえた。できるだけ細かくして追加した。そして浮気相手への思い、妻への思いも書いた。会社については、嫌いではないが好きということでもなかったものだから、辞めるふんぎりがついたと言わざるを得ない(負け惜しみではなく)、と書いた。
書き進めるごとに、気持ちがどんどん透き通ってゆくのが私にはわかった。
妻がそんなに好きではなくなったから浮気したのだし。
会社に未練がないから、会社に貢献したことのある、会社にばれたらやばい相手を選んだんだし。
ぜんぶすべて、きっと最初から、私はみんな壊したかったのだ。
だから、今のこの選択肢を選んだんだ。こうなって、これで、もういい。
私に守るものは、今はもうない。あるとしたら、母くらいのものだろう。仮にこの手紙を読んでも許されるならば。いや、違う。自分か。自分だけがまず居残ればいい。
今、私は、最高に澄みわたり、最高に晴れわたった気持ちになっていた。

あとがき

疲れた!!!!!
はい! いかがだったでしょうか。ちょっと後半ダレたんですが。まあ一応終わりで。テーマに対して、ささっと書き始めてしまっていたので、そんなに貪欲に詰められなかった。
できれば次回、解説編もやりたいが。続けていきたいが、体力もたないのでもしかしたらずっとぐっと先かもしれねえ!!!!! そうなったらごめんなさいー!!!!!

こちら、過去に私の書いたものなのでできたら読んでくださいませねー!!!!!!!!!!

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

#無名人インタビュー #インタビュー #書いてもらってみる #小説


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