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小説書いてもらってみる007:生徒Aさん感想と5稿目

生徒Aさんから感想をいただきました!


【小説コーチングを受けた感想】

私はずっとずっと「自分は小説なんか絶対に書けない」と思っていました。
高校の時なんて模試の国語の偏差値で28を叩き出したこともあったので。
小説を書く、つまり無から有を生み出すという創造的な作業は、自分には出来ないと決めつけていました。
クリエイティブな作業には、確かに多少の向き不向きはある。
でも結局は、生み出しては修正して、また修正してを繰り返して、技術を少しずつ少しずつ養っていくんだな、とここまでqbcさんと一緒に小説を書いてみてつくづく感じます。書き始めた頃は、書きたい気持ちは山々なのに全然書けなくてもどかしくもありました。
「恥ずかしさ」と「恐怖」があるからですよね。
でも恥ずかしさと恐怖は、とりあえず書いてみて、アドバイスをいただく中で徐々に薄れていきます。改善すべきところが明確になり、そこに集中していると手が進んでいきます。「とりあえず書いてみる⇒的確なアドバイスをもらう⇒修正する」
この作業をしてみると、自分の書き方の強みや課題が分かります。
あとは、自分の人生の課題点といいますか、今自分に必要なものも見えてきました。
思考や世界の見方が、図らずも反映されているんだろうと個人的には思います。
小説を書く過程で、今まで知らなかった世界が着実に見えてきています。
面白いです。
人生に新しいスパイスが加えられたようなワクワク感を感じました。


オッケーありがとうAさん!!!!!

前回までの流れはこんな感じで。

今回は細かい表現の調整

ということで、今回は、4稿目から5稿目の直し時のアドバイスを公開します!

4稿目


手紙を書きだした。でも書けない。もちろん人間に向けて手紙を書いたことはある。しかし人間以外に書いたことはない。今、毎朝通勤途中に見かける猫に手紙を書いている。実に難しい。でも、あの猫にどうしても感謝の気持ちを伝えたい。私はもう少しで、この街を去ってしまうから。
友人に相談したらこんなアドバイスをもらった。
「手紙を書きたいんだったら、まずは封筒と便箋を本気で選ぶところからだね。それから机に向かう。頭の中で書きたい相手をイメージする。そしたら勝手に言葉が浮かぶから。簡単でしょ?」
簡単だろうね。相手が人間なら。でも私は猫に書くんだよ。結局は、自分でなんとか書ききるしかないというわけだ。今私の手元には便箋とペンがある。しかし猫は私の書いた文字が読めないかもしれない。そうか。やさしい言葉で書いていかなきゃいけないんだな。



とりあえず、寝る前のコーヒーだけ入れておこう。
私は、猫への手紙を書き始めた。

「イヌちゃん(今私がつけてあげました。今日からあなたは猫だけどイヌちゃんです)、私は明日、ここから引っ越すよ。引っ越しってわかる? もう、私と会えなくなるってことなんだよ。もう、公園のベンチの下にいても、私がイヌちゃんのあごを撫でてあげることはできないからね、我慢してください。我慢は大事なんです。私のお母さんも言っていたからね。
イヌちゃんは首輪をつけているから、きっと誰かの飼い猫なんでしょう。あたたかで、ぐーたらしていたらご飯を出してくれる屋根付きの我が家があるんでしょう。なのに、野良猫風の雰囲気を出しては、飼い主の方がかわいそう。決められたことは忠実に守らなきゃ。

私はちゃんと「とりあえず3年は今の会社で頑張る」っていうのも守ったんだよ。「人には向き不向きがあるからなぁ」って上司が言ってたのにもちゃんと従って、会社もやめることにしたんだよ。自分の企画書を見ながら、そんなことを言う上司を見た時の気持ちが、イヌちゃんには分かる?分からないと思うけど。私は社会のルールをちゃんと守ってるんだからね。イヌちゃんみたいに、自由気ままにベンチの下でいつものんびりしてるわけじゃないんだよ。私はイヌちゃんのことが心底羨ましいのだよ。平日も休日も祝日もベンチの下にいられるし。私がこんなにイヌちゃんって呼んでも、「いや、私はネコだから」って顔してられるし。私だってイヌちゃんみたいになりたいよ。イヌちゃんみたいになって、高校受験も、大学受験も、就職も、なんなら小学校の遠足のお菓子選びも、やり直したいな。こんなことを思ったのは、人生ではじめてなんだよ。こんなことあんまり言いたくないけど、イヌちゃんのおかげ。だから私はイヌちゃんを見習うことにしたからね。人生のやり直しなんて出来ないけどさ。この街を離れて、イヌちゃんみたいに生きることに決めたから。毎日背中にある黒いハート柄の模様を触らせてくれて、ありがとうね。それじゃ、元気でね。」

手紙は何とか書き終えることができた。もぬけの殻になったコーヒーカップには、頑固な茶渋だけが残っている。あたたかさのかけらもないコーヒーカップ。あんなに並々と注がれたコーヒーを飲み終えたのに。粉の量にふさわしくない量のお湯を注いだのに。随分と時間がかかった。体内には大量のカフェインがいきわたっているはずだが、眠い。今日はいい夢を見れそうな気がする。いつもは使い捨てホットアイマスクがないと目を閉じられないのに、今日はまぶたを外界にさらした状態で眠りに落ちた。

夕方には引っ越し業者が来てしまう。早く公園に行ってイヌちゃんに別れの挨拶をしなきゃ。変なこと書いてないか怖いから、見直して必要があれば書き直そうと思ったのだけれど。そんな時間もないし、やっぱり昨日の自分が書いた文章を見るのが怖い。一度閉じたものは開かないほうが良いときもある。糊とセロハンテープとお気に入りのイヌのマスキングテープで厳重に封をされた手紙。手に持って公園へ向かう。
やっぱりいた。相変わらずベンチの下にいる。でも今日はなぜか寝ている。近づいて背中のハート柄の模様をぷすぷす押しても起きる気配がない。致し方あるまい。話しかけよう。2メートル先あたりで、はないちもんめをしている小学生たちがいるから、ほんのちょっとだけ恥ずかしいのだけれど。

「起きてくれない?今日最後の日だからさ。手紙、書いてきたんだよ。だからあげる。」
全く起きない。っていうか息してるのか?一応確認してみると、上下に規則正しく背中が動いているのが見える。どうやらちゃんと息はしているようだ。「おーい。あとちょっとで引っ越し業者来ちゃうからさ。これだけでも受け取ってよ。」胴体の下に隠れている前足を何とか抜き出して、手紙をその手に渡らせようとした。次の瞬間、イヌちゃんの目がカッと開いた。

「いらない。」

えっ?今喋ったのは誰?イヌちゃんが、喋った?喋ったよね。どういうこと?何が起きているの?混乱しているうちに、イヌちゃんがふらーっとどこかへ行った。そのへんに落ちていた銀杏を持ってきた。

「『これは新潟県産のとちおとめというリンゴです』って言われたら、あんたははいそうですか、って言って受け入れるのか?違うだろ。臭いって迷惑がられても、こいつは立派な銀杏なんだよ。」

あぁ。ついに言われてしまった。イヌちゃんは全部わかっていたんだね。ぼーっとしているように見えて、私よりずーっとちゃんとしてるよ。それから私は泣いた。子供みたいに、いや、それこそイヌみたいにワンワン泣いた。小学生たちはこっちを見ている。はないちもんめどころじゃないだろう。大の大人が、ネコを前にして泣いているんだから。でも今は、泣いている姿を見られたってこれっぽちも恥ずかしくない。私はどうにか泣いている時特有のひくひくを鎮めて、小学生たちに笑顔で教えてあげたんだ。

「大人だって、泣くときもあるんだよ!!」

彼らはお互いに目配せしたあとにくすっと笑ってた。でもすぐに何も無かったかのように大きな声ではないちもんめを再開してた。私はイヌちゃんと握手をした。というより、無理やり前足を持ち上げたようなものだけれど。前足を右手から地面にそっとおろして、名残惜しいながらも離す。
イヌちゃんは私の右手にある、ほんの少しだけ目立つほくろの部分に猫パンチした。
そして颯爽と姿を消してしまった。

「あのパンチはイヌじゃなくてネコだなぁ」

そうつぶやいたあと私はあのネコとは逆の方向に向かって歩き始めた。


アドバイス!

  1. 読者が理解しやすいように書くことが目的の一つであり、読者にどのようなアクションを取らせたいかを明確にする。

  2. 文章のゴールを明確に設定する。例えば、商品購入の促進、感動の誘発など。

  3. 書いた内容が読者にどのような影響を与えるかを考える。

  4. 文章の構成要素が意図した通りに機能しているか確認する。

  5. シーンの描写や登場人物の行動が物語全体のテーマや目的に沿っているか検討する。

  6. 読者が物語を通してどのような感情や思考を持つかを意識する。

  7. 物語の展開やクライマックスが読者にとって満足のいくものになっているか評価する。

  8. 小説の結末が物語全体と調和していて、読者に強い印象を残すよう努める。

  9. 登場人物の動機や行動が一貫性を持ち、説得力があるかを確認する。

  10. 現実と非現実の要素をバランスよく組み合わせ、物語の魅力を高める。

  11. 作品の独自性やオリジナリティを保ちながら、読者が共感や興味を持てる内容にする。

  12. テーマやメッセージが明確であり、読者に強く訴えかけるものであるか検証する。

ということで! 書き直してもらいました!!!!!

5稿目


手紙を書きだした。でも書けない。
もちろん人間に向けて手紙を書いたことはある。しかし人間以外に書いたことはない。
今、毎朝通勤途中に見かけるネコに手紙を書いている。実に難しい。でも、あのネコにどうしても感謝の気持ちを伝えたい。私はもう少しで、この街を去ってしまうから。
友人に相談したらこんなアドバイスをもらった。
「手紙を書きたいんだったら、まずは封筒と便箋を本気で選ぶところからだね。それから机に向かう。頭の中で書きたい相手をイメージする。そしたら勝手に言葉が浮かぶから。簡単でしょ?」
簡単だろうね。相手が人間なら。でも私はネコに書くんだよ。結局は、自分でなんとか書ききるしかないというわけだ。今私の手元には便箋とペンがある。しかしネコは私の書いた文字が読めないかもしれない。そうか。やさしい言葉で書いていかなきゃいけないんだな。

とりあえず、寝る前のコーヒーだけ入れておこう。
私は、ネコへの手紙を書き始めた。

「イヌちゃん(今私がつけてあげました。今日からあなたはネコだけどイヌちゃんです)、私は明日、ここから引っ越すよ。引っ越しってわかる? もう、私と会えなくなるってことなんだよ。もう、公園のベンチの下にいても、私がイヌちゃんのあごを撫でてあげることはできないからね、我慢してください。我慢は大事なんです。私のお母さんも言っていたからね。
イヌちゃんは首輪をつけているから、きっと誰かの飼い猫なんでしょう。あたたかで、ぐーたらしていたらご飯を出してくれる屋根付きの我が家があるんでしょう。なのに、野良猫風の雰囲気を出しては、飼い主の方がかわいそう。飼い猫は飼い猫らしくふるまうことを忘れてはいけないよ。
この前上司が「人には向き不向きがあるからなぁ」って言ってたんだよね。私が提出した企画書を見ながら。やっぱり私にはこの仕事は向いてないってことだよね。今の時代は何を言ってもパワハラになっちゃうからさ。だからきっと上司も気を遣ったんだと思うな。その辺の複雑な事情はイヌちゃんには分からないと思うけど。ありがたい上司からのお言葉に従って、私はやめるんだ。ちゃんと「とりあえず3年は同じ会社で頑張る」っていうのも守ったから。もうこれでやめられるよ。

私は社会のルールをちゃんと守ってるんだからね。イヌちゃんみたいに、自由気ままにベンチの下でいつものんびりしてるわけじゃないんだよ。私はイヌちゃんのことが心底羨ましいのだよ。平日も休日も祝日もベンチの下にいられるし。私がこんなにイヌちゃんって呼んでも、「いや、私はネコだから」って顔してられるし。
私だってイヌちゃんみたいになりたいよ。イヌちゃんみたいになって、高校受験も、大学受験も、就職も、なんなら小学校の遠足の200円のお菓子選びも、やり直したいな。こんなことを思ったのは、人生ではじめてなんだよ。こんなことあんまり言いたくないけど、イヌちゃんのおかげ。だから私はイヌちゃんを見習うことにしたからね。
人生のやり直しなんて出来ないけどさ。この街を離れて、イヌちゃんみたいに生きることに決めたから。それじゃ、元気でね。」

手紙は何とか書き終えることができた。
寂しくなったコーヒーカップには、頑固な茶渋だけが残っている。あたたかさのかけらもないコーヒーカップ。あんなに並々と注がれたコーヒーを飲み終えたのに。粉の量にふさわしくない量のお湯を注いだのに。
随分と時間がかかった。
体内には大量のカフェインがいきわたっているはずだが、眠い。今日はいい夢を見れそうな気がする。いつもは使い捨てホットアイマスクがないと眠れないのに。
今日は、いらない。

案の定、質の良い睡眠だった。とてもよく眠れた。温もりあるベッドに後ろ髪を引かれて、二度寝をすることも無かった。
今はお昼の1時だけど、夕方には引っ越し業者が来てしまう。早く公園に行ってイヌちゃんに別れの挨拶をしなきゃ。変なこと書いてないか怖いから、見直して必要があれば書き直そうと思ったのだけれど。やっぱり昨日の自分が書いた文章を見るのが怖い。一度閉じたものは開かないほうが良いときもある。9年前のセンター試験。最後に見直して選択し直した回答が間違っていて、最初に勘で選んだ選択肢が正解だったのを思い出すんだ。
糊とセロハンテープとお気に入りのイヌのマスキングテープで厳重に封をされた手紙。
手に持って公園へ向かう。

公園の入り口に着く。見慣れた景色をざっと見渡す。
もうこの公園とも今日でおさらばか。
そこそこ広いのに置かれている遊具はブランコと小さな滑り台だけ。ジャングルジムも、シーソーもない。こんな公園で遊んで楽しいのだろうか。遊具たちは端の方に置かれているから真ん中に大きなスペースができている。ボール遊びをするのには最適な場所だろう。でも、「近隣の方の迷惑になるためボール遊び禁止」と書かれた看板がある。この看板が絶対的な権力を持っているから、小さな子どもたちはそれに従うしかない。
いや、何も子どもに限らず、私もか。
とにかく、周りの人の迷惑になってはいけないのだ。

ボール遊びが禁止されていて、やることがないからだろうか。4メートル先で小学生たちが花いちもんめをしている。
27歳の大人は思う。あれの何が楽しいのだろうと。嫌な思い出しかない。欲しい子を取り合うだけの遊び。自分の名前はいつまでたっても呼ばれない。ただただ周りの女の子に混じり、空気のように静かにしている、自分。

視線をベンチへと移す。やっぱりいた。相変わらずベンチの下にいる。
真っ白な毛並みのネコ。ネコに詳しいわけじゃないから、種類は分からない。背中には歪なハートの形をした、小さな黒い模様がある。
イヌちゃんだ。
でも今日はなぜか寝ている。近づいて背中のハート柄の模様をぷすぷす押しても起きる気配がない。小学生がいるから少し恥ずかしいけれど。致し方あるまい。話しかけよう。

「起きてくれない?今日最後の日だからさ。手紙、書いてきたんだよ。だからあげる。」
全く起きない。っていうか息してるのか?一応確認してみると、上下に規則正しく背中が動いているのが見える。どうやらちゃんと息はしているようだ。
「おーい。あとちょっとで引っ越し業者来ちゃうからさ。これだけでも受け取ってよ。」
胴体の下に隠れている前足を何とか抜き出して、手紙をその手に渡らせようとした。
次の瞬間、イヌちゃんの目がカッと開いた。

「いらない。」

えっ?
今喋ったのは誰?
イヌちゃんが、喋った?
喋ったよね。
どういうこと?
何が起きているの?

たぶん、ほんのわずか2秒。
時が止まったかのような、感覚。

ハッとして周りを確認する。
ブランコ。
滑り台。
ボール遊び禁止の看板。
小学生の声。
そして、起きる気配のないイヌちゃん。

何も変わっていない。でも確かに、イヌちゃんは目を開いたし、声もした。あれは一体何だったのか。
手に持っている手紙を見返す。せっかく一生懸命書いたのに「いらない」と言われた手紙。イヌちゃんがいらないって言うなら、これは誰に渡せばいいんだ。

自分かもしれない。手紙の本当の宛先は、自分だ。イヌちゃんに書いたけど、これはまぎれもなく自分に書いた手紙だ。本音なんだ。だから、イヌちゃんは受け取らなかった。

それから私は泣いた。
子供みたいに、いや、それこそイヌみたいにワンワン泣いた。
小学生たちはこっちを見ている。はないちもんめどころじゃないだろう。大の大人が、ネコを前にして泣いているんだから。でも今は、泣いている姿を見られたってこれっぽちも恥ずかしくない。泣いている時特有のひくひくを鎮めて、小学生たちに笑顔で教えてあげたんだ。

「大人だって、泣くときもあるんだよ!!」

彼らはお互いに目配せしたあとにくすっと笑ってた。でもすぐに何も無かったかのように大きな声ではないちもんめを再開してた。

私はイヌちゃんと握手をした。というより、無理やり前足を持ち上げたようなものだけれど。前足を右手から地面にそっとおろして、名残惜しいながらも離す。

イヌちゃんは私の右手にある、ほんの少しだけ目立つほくろの部分に猫パンチした。いつも私がイヌちゃんの背中にある黒いハート模様を、指でつついていたかのように。最後に、ひとつやり返された気分だ。そして颯爽と姿を消してしまった。

「あのパンチはイヌじゃなくてネコだなぁ」

勝手にイヌって名前つけてごめんね。
私はあのネコとは逆の方向に向かって歩き始めた。


まとめ

いい作家になった。もう君は小説家。
Aさんは、新作を書くか、この話の修正を準備中ですよ! って。

こちら、過去に私の書いたものなのでできたら読んでくださいませねー!!!!!!!!!!

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

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