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笑い

「ザーメン、くさメン、僕ヤリチン!」

こうしてつまらないギャグをかまして今日も客から罵声の嵐を浴びるのであった。

俺はプロのお笑い芸人を目指す29歳フリーターである。元々会社員だったが、仕事があまりにもつまらなくて、3ヶ月で辞めてしまった。

昔からお笑いが大好きだったという理由で、本気で芸人になろうと、養成学校へ通うが、特段成果も出ず、授業料だけ取られるカモとなってしまった。学費も高く払えきれなくなった俺は2年で養成学校を中退。

学校で学んだ知識をフル活用して度々アマチュアのLive出るものの、客から不評である。

「ザーメン、くさメン、僕ヤリチン」が渾身のギャグだというのに、誰1人笑わない。また参加料をドブに捨てて、無駄な時間を過ごしてしまった。

今日も1人虚しく公園でネタの練習をしていた。少しでもプロに近づけるように1日6時間誰もいない公園で奮闘していたのであった。

「顔面崩壊、僕ブサメン!!」

これもザーメンネタと大して変わらない。ダメだこりゃ笑と諦めかけたその瞬間、怪しげな男が俺の前に現れた。

謎の男「おやおや、公園で1人お笑いの練習かい?」

俺「そうですが。何の用ですか?」

謎の男「君の練習風景を見ているとこの先お笑い芸人としては絶望的であると十分に伝わってきた。そこでそんな君には私から一つ提案がある。」

俺「なんなんすか、その提案とは?」

謎の男「誰をも笑わせられる透明マントを君にあげたいと思う。何も身に付けていない状態でこのマントを持つことで笑いの効果があがる。」

俺は胡散臭いとは思いつつ、その男のマントを貰うことにした。もうこれ以上フリーター生活したくないというプレッシャーに駆られ、やむなく乗った。

俺はその透明マントだけ身に付けてお笑いLiveに参加した。俺は期待とともに不安な気持ちにもなった。果たして皆この俺の姿に笑ってくれるのだろうかと。俺の番がきた。

俺「今私は不思議な透明マントを身に付けております。この姿に皆笑ってくれたら大変ありがたいです!」

客A「あいつ何も履いてなくね?確かにこりゃお笑いのネタだな笑。」

客B「あいつの気持ち悪いブツ見せられてマジで不愉快や。あく、通報しろや、誰か110番しろっつーの」 

俺は動揺した。この透明マントには何もなかったのだ。代わりに裸の姿を皆に見せつけ、俺は公然わいせつとして通報を受け、現行犯逮捕された。

俺はニュースにも幅広く取り上げられてしまい、ある意味本当の意味で俺はついにお笑い芸人としての夢が叶ったのかもしれない。

The End

担当:とろろ魔人














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