短編小説『静かな朝』


「ウズベキスタンではさ、朝ごはんに黒糖まんじゅうを食べないと糖尿になるって言い伝えがあるんだってさ」

タイムラインで何気なく見かけた情報を父親に話す。

父親はすぐにこう切り返す。

「うーんこ!うんこ!またうんこ!合わせてぴょこぴょこむぴょうんこ!」

お父さんがこの人で本当によかった。

ため息をつき、母さんの遺影に目をやると、不思議と母さんが笑っているように見えた。遺影の顔が笑っている表情なんだから見えたもクソもないことは言うまでもない。

朝ごはんはハムエッグとナポリタンだった。無理やり胃に詰め込むと、父親が突然不機嫌になりだした。

「お前、俺に嘘をついているな」

「父さん、僕は父さんに嘘をついたことなんて一度もないよ」

冗談混じりに躱したつもりだった。しかし、父親は全てを見透かしていた。

「冷凍庫のハムのことじゃよ」

仙人口調で父親が詰め寄る。

「冷凍庫のハムを食べたのはヌシじゃな?」

「クフッハファ、父さんには敵わないニャ」

猫っ子口調で白旗を振る僕に、父さんは優しく言った。

「母さん、生きてるらしい」

「え?」

「母さんね、普通に生きてるらしい」

晩御飯はたくあんだ!

〜完〜

この記事を書いた人:匿名

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