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タクシー運転手

俺はタクシー運転手の鯖谷。29歳独身だ。
小学校の時の夢はパイロットだった。

それがこのザマだ。

しかしパイロットとタクシー運転手の違いなんて空を飛ぶか飛ばないかくらいしかないと自分に言い聞かせて毎日いろんな客を乗せる。

中にはとても変な客を拾うことがある。
今日がそうだ。

「便所坂までお願いしますわ」

「かしこまりました」

乗ってきたのは小汚いおっさんで体から発するゴミ収集車の臭いが鼻にツンとくる。
おまけに新聞紙を身体中に貼り付けている。

ふと頭をよぎった。こいつ金あるのか?
そんなことを考えながら一刻も早くゴミ収集車の臭いから解放されたくて猛スピードで便所坂まで飛ばす。

「運転手さん、便所坂の伝説をしってるかえ?」

うんちのような臭いと共にめんどくさい世間話が耳に流れ込んできた。

「い、いえ知りませんけど」

「あの坂はのぅ、祟りの道と呼ばれておっての、ほら、もうすぐですわ」

キキキィィィィィィ

ギィヤァァァァァァァ♪

俺の車両はガードレールを突き破って崖から放り出された。バックミラーを見ると小汚いおっさんはいなかった。きっと彼は天からの遣いだったんだ。

最期にこうして俺をパイロットとして空を飛ばせてくれたのだから。

その瞬間、凄まじい爆風と共に巨大隕石が激突して地球が爆発した。

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