問われているのは知識? それとも感性? ボードゲームで楽しむクイズの形
ふるあた! 皆さん、こんにちは。秋山です。
本記事は『アナログゲームマガジン』で連載中している、古今東西の推理ゲームを調べてレポートする『推理ゲームふるあた』の第9回です。
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前置きは以上です。早速、本題に入っていきましょう。
はじめに
今回のテーマは、クイズです。
「クイズ……って、推理ゲームどころかボードゲームですらないじゃん!」
と思われるかもしれませんが、順を追って説明させてください。
ボードゲームのなかには、クイズをより気軽に楽しむことができるようにルールを整えたクイズゲームがあったり、答える過程で推理力が問われる問題が出されることもあります。
今回は推理ゲームの隣接ジャンルとしてクイズを紹介させてください。
ボードゲームにおけるクイズに入っていく前に、クイズそれ自体からおさらいしていきましょう。まずは言葉の意味からあたっていければと思いますが、小学館の大辞泉で「クイズ」という言葉を引くと、
とあります。
多くの方にとってクイズと聞くと、テレビで放送されているクイズ番組が、真っ先に思い浮かぶことでしょう。
歴史のある番組ですと『アメリカ横断ウルトラクイズ』(1977年-1998年)や『全国高等学校クイズ選手権』(1983年-)や先だってレギュラー放送が終了した『パネルクイズ アタック25』(1975年-2021年)、すこし前ですと『マジカル頭脳パワー!!』(1990年-1999年)や『クイズ! ヘキサゴン』(2002年-2005年)及び『クイズ! ヘキサゴンII』(2005年-2011年)などが有名どころでしょうか。
最近でも『ネプリーグ』(2003年-)、『東大王』(2016年-)、『今夜はナゾトレ』(2016年-)は人気の高い番組で、テレビ視聴者の多い19時から22時の間、いわゆるゴールデンタイムにテレビをつけると、どこかしらのチャンネルでクイズ番組が放送されています。
ある意味においてクイズは日本人の生活に溶け込んでおり、とても慣れ親しまれています。しかし、その実態はゲームと同じくあまり研究されていないように感じられます。
直近ではQuiKnockの伊沢拓司氏が朝日新聞出版より『クイズ思考の解体』を上梓されましたが、体系的かつ網羅的にまとめられたのは本書がはじめてかもしれません。
プレイヤーとしてクイズの楽しみに触れる方法のひとつとして、競技クイズをテーマとした杉基イクラによる漫画『ナナマル サンバツ』(2010年-2020年)も紹介させてください。主人公の少年が、ひょんなきっかけからクイズ大会に参加し、その面白さに気づき、追求していく様子が描かれています。
回り道が長くなってきていますが、もう少しクイズを掘り下げていきましょう。先に大辞泉から引用した通り、クイズの根本は「問題を出し、それに答えさせる遊び」です。ここで問われているのは知識であり、問題に対し、答えを知っているプレイヤーだけが回答することができます。
しかし、問われているのが知識だけかと言うと、それだけではありません。往々にしてクイズには時間制限があります。制限時間内に答えられなかったらだめですし、他プレイヤーと対戦している場合、他プレイヤーに先んじて答えられたら負けになります。知識を持っているだけではだめで、いかにそれを素早く、そして正確に引き出せるかもクイズにおいては重要な要素です。
これは早押しクイズにおいてベタ問とされる、いわゆる定番中の定番となる問題です。フランス語を知っている、あるいは「そのお菓子」の名前の由来を知識として持っていないと答えることができません。
しかし、想像で答えることはできないでしょうか?
頭のなかで、シュークリームにチョコレートをかけたお菓子を思い浮かべていって、そのなかで「イナズマ」という名称が与えられてもおかしくないお菓子はないでしょうか?
そう、エクレアです。
言われてみれば……でしょうか?
でも、この早押し問題の本質は、そこではありません。
実は「○○語で○○という意味を持つ~」ではじまる問題は、早押しクイズにおける定形のひとつで、よく出てくるのです。従って問い読みと呼ばれる、問題文を読み上げる出題者が「フランス語で」と言った時点で、頭のなかでは日本でよく使われる、フランス語由来の言葉を思い浮かべはじめ「イナズマ」と聞こえた時点で、ボタンを押し「エクレア!」と回答することができるのです。
ここで活用されているのは、必ずしも知識力ではありません。どちらかと言うと、問題の傾向を読み解く推理力や、クイズ文化を学んで得た応用力と言えるでしょう。あるいは「イナズマ」まで聞かず、「イ」あるいは、「フランス語で」までしか聞こえていないのにボタンを押して「エクレア」と回答するのは、賭け以外の何物でもありません。しかし、競技クイズにおいては分の悪い勝負であっても飛び込まないとジリ貧で負けるという場面は少なくありません。ここで求められるのは度胸であり、駆け引きを見極める観察力、そして何よりも勝負運でしょう。
いかがでしょう、必ずしもクイズにおいて求められているのが知識だけではないということが分かっていただけたでしょうか。
前置きが長くなりましたが、今日はクイズをテーマにしたボードゲームを紹介します。
クイズゲームは、知識を持っているひとだけが楽しめるわけではありません。あるいは知識がないからこそ楽しめる、そんなクイズゲームだってあります。楽しんで読んでいただければ幸いです。
クイズゲームの年表
あくまでボードゲームという観点を元に、年表を作成してみました。
上述の早押しクイズを対象に含めると、1983年以前から遊ばれていたことになりますし、スフィンクスの謎掛けとして知られる「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足で歩むものは何だ?」をクイズゲームに含めると、その歴史は紀元前までさかのぼることになります。
ルールが整備され、現代において、ゲームとして遊ぶことができる、最古のクイズ形式のゲームは? と考えたとき、私は『フィクショナリー(Fictionary)』(1984年)ではないかと考えました。日本では『たほいや』としても知られていますね。
本記事では『フィクショナリー』をきっかけにボードゲームにおけるクイズゲームが幕を開けたとし、その37年の歴史を見渡していくことにします。
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