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【第11回】トランプ対談(草場純✕秋山真琴)

読者の皆さん、こんにちは。秋山です。
本記事は『アナログゲームマガジン』で連載中の『トランプ対談』の第11回となります。最初から順番に読みたいという方は、ぜひ第1回からお読みください。

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「ストップ系の定義」

秋山 確認したところ、昨年は2回しか収録しかおりませんでした。ズルズルと続けても仕方がないので、今日、ぜんぶ喋りきってしまおうと考えています。

草場 そもそも何を話せばいいか忘れちゃったんですけど。

秋山 そうですよね、おさらいしましょう。トランプゲームの中級者から上級者向けに面白いゲームを紹介しましょうという流れの中で、草場さんがトランプゲームを五大陸になぞらえていらっしゃいました。

草場 簡単に言うと、トリックテイキング系、ラミー系、ストップ系、カシノ系、ギャンブル系。ギャンブル系ってその他みたいで何でも入れちゃうんですけど、はい。

秋山 過去数回でトリックテイキングとラミー、カシノに関しては、だいぶ語り尽くしました。今日はストップ系とギャンブル系を紹介して、締めに入らせてください。本題に入る前に雑談を……とも考えましたが、また時間が足りなくなって「では、続きは次回」となっても詮ないので、早速、本題に入りましょう。はい、ストップ系につきまして。これは、いわゆるゴーアウト系とは、なにが異なるのでしょう?

草場 名前が違うだけで同じものを指してますね。はい、ゴーアウトってのはまあ手札をなくすってニュアンスで、ストップってのはそこでおしまいっていうニュアンスで、まあ同じこと言ってるわけですよ。手札をなくしたらおしまいってのが多いんだけど、逆のもありますからね。手札を全部集め切ったらおしまいってのもあるから。それだと手札をなくすの逆じゃないですか。だからゴーアウトともいうし、ストップと言うので。だから皆さんがよく知ってるのは七並べとか、ババ抜きとか、神経衰弱はどっちかっていうと集める方ですかね? だからゴーアウトって言うと手札をなくすニュアンスだけど、集めるのもあるので要するに皆さんがよく知っているババ抜き神経衰弱、あとは大貧民ですか? ああいうゲームですよ。

秋山 それ以上、遊べなくなるような状態を示しているのでしょうか。手札をすべて出しきったら、それ以上、出せなくなるので遊べなくなりますし、カードを集めきったら、それ以上、集められなくなるので遊べなくなる。

草場 そうです。

秋山 トリックテイキングやカシノも、ストップの要素を持つのではないでしょうか?

草場 うん、でも手札をなくすのが目的ではないんですよね。終わったときなくなってますけど、それを目的にするわけじゃなくて、手札をプレイしつつ、毎回のトリックに勝つことが目的なわけで、全員一緒に手札がなくなりますので勝敗には手札が残っているかどうかってのはかかわらない。それから麻雀みたいなラミー系の場合は広い意味のセットコレクションですから、セットを作るのが目的なのであって、手札をなくすのが目的ではない。カシノ系の場合は、手札と場札をあわせて獲得するのが目的であって、手札をなくすのが目的ではないと。そういう意味では、それらと違うゲームがストップ系ってことになりますね。

秋山 最初にカードを出しきる、もしくは集めきったひとが勝ち、ということですね。

「ストップの歴史」

草場 でストップって呼ぶのは、実は「ストップ」という名称のゲームがあるんですよね。それはどういうゲームかというと、皆さんよく知っているのですね。ウノの元のゲームというものです。ウノは、伝統的なゲームを専用カードを使って商品化したものなのですね。トランプゲームに「エイト」というのがあります。これはストップ系の典型でしてね、近いゲームはページワンですね。前の人の出したカードと同じ数字か同じスートを出していって手札をなくすのが目的です。でなんでエイトと呼ばれるかと言うと、8がワイルドカードで8を出した時はスートを変えられると。だから『ウノ』の……、

秋山 ワイルドカードですか?

草場 ウノのワイルドカードの祖先がエイトですね。エイトのもとはさらにストップというゲームがあって、それはただ手札をなくしていって、なくなりきったら「ストップ」と言うわけです。だからストップ系からエイトが、エイトからウノができたと。まあ、本当に歴史的にそのとおりかどうか厳密に裏をとったわけではないですが、一応そういうことになってますね。

秋山 時代的には、いつ頃のゲームなのでしょう?

草場 それはトランプの登場か、それ以前からあると言われてますね。だから最も古いと言うか、まあなんかカードゲームを考える時に一番最初に考えそうじゃないですか? トリックテイキングとかラミーってなんか、人工的・技巧的なところがあるじゃないですか。カードに強弱があったり、カードになんか揃いの番号があって、それを揃えたりって言う小ざかしさが。ストップ系には、そういうのが無いんですよ。ただどんどん手札を出してなくなったら勝ち。だからプリミティブなので、多分ゲーム史的にはこれが一番古いだろうと。ただしこれ、証明するのは難しくてね、タイムマシンでも乗って大昔に行かないと分かんないけど、まあ、多分ストップ系がカードゲームの最初じゃないかとは言われてますね。

秋山 では『エイト』がいつ頃のゲームであるかは、分かっているのでしょうか。

草場 エイトってゲームが昔からあって、古いゲームの解説に出てくるんですけど、それが初出はいつかみたいなことを調べたことはないです。本当はそれをやるべきでしょうね。あんまりそういうことやってる人いないけど、やったら面白いと思いますよ。ただ、1532年のガルガンチュア物語には、名前だけですが35種類のトランプゲームが出てきます。ラブレーはルールまでは書いてくれていないので推測ですが、このうちの多くがストップ系ではないかと言われています。

秋山 流れで聞いてしまいますけれど、『ウノ』はどうなのでしょう?

草場 ウノは調べればわかるじゃないですかね、ウノの歴史をね。私が子供の頃ってウノはなかったような気がするけどな、どうなんだろう?調べれば、発売日か発行日がわかると思いますけどね。

秋山 Wikipediaを参照すると、1971年にアメリカ合衆国で理髪店を営まれていらっしゃる方が考案され、1979年に商品化されたようですね。

草場 71年ぐらいでしょ? それ以前にはエイトってゲームがあって、実際私は遊んでるわけですよ。クレイジーエイトとかね。おお、そうそうそうcrazyエイトっていうのは、エイトを複雑にしたやつですね。だから私が小さい頃はウノはなくて、トランプでエイトやって遊んでたわけですよ。

秋山 1971年と言うことは53年前になりますね。草場さんの定義では、50年以上前のゲームは伝統ゲームになるのでウノも伝統ゲームになるのでしょうか

草場 もう伝統ゲーム入りじゃないですかね。まあ、50年ってのも恣意的な数ですけどね。でも、世代を超えて遊ばれるわけですから、50年経てば。伝統ゲームといっていいと私は思うんですけどね。

秋山 特に日本においては『人生ゲーム』と並び、人口に膾炙しているので、伝統ゲームと呼び習わして構わないように感じます。伝統ゲームらしからぬポップさを有してはいますが。

草場 それは商品だからですよね。エイトの方は商品として売ってるわけじゃないですから。トランプそのものは商品になってはいますが。

秋山 ウノに関してはマテル社が版権を有し、自社商品として販売していますよね。将棋や囲碁は、特定の会社が版権を持ち、独占的に販売しているわけではないので、趣きが異なると言えますね。

草場 伝統ゲームの定義の仕方はいろいろあるでしょうけど、一般的に伝統ゲームには版権はありませんよね。だから「ごいた」なども微妙ですよね。一応ごいたは登録商標されています。それは、ごいたを代々遊び続け保存してきた人たちが、自分たちの守り育てたゲームに対し、同じ名前で違うことやられちゃ困ると考えて登録したわけです。ゲームのルールは特許はとれませんので、同じルールで違う名前で出されても、少なくとも著作権違反とかそういうふうな訴えはできないと思われますね。不当競争防止法などで守るってのはあるのかもしれないけど。なんか、話がズレましたけど、要するにストップ系は多分昔からある一番プリミティブなゲームであろうと。したがって、その子供の時を覚える最初のゲームはストップ系ですよね。いきなりブリッジから始めないですよ。で、無理やり話をくっつけると、ごいたもストップ系です。

秋山 日本の場合、おそらく『ババ抜き』が人生ではじめて体験するトランプゲームなのではないでしょうか。

草場 そうですね。でも外国はどうなんですかね? 違うんですかね。昔、松田道弘さんが、「日本はチルドレンズゲームの大国だ」と言ったんだよね。つまりババ抜きと神経衰弱と七並べしかみんな知ってなくて、ちょっと高度なゲームは誰も知らないと言うことを、強く言ってましたね。松田さんの気持ちとしては、そのせいで低く見られがちなトランプゲームの真価を知ってもらいたいということであって、そのことは高く評価できます。ちょっとスノビズム的なところがあって、鼻にはつきますが。

秋山 他に加えるとするならば『ダウト』や『大貧民』でしょうか。

草場 大貧民は広く知られてるけど、やっぱり1980年代以降ですから。ものすごく東アジア・東南アジアに広まって、韓国とか中国には大貧民亜流のゲームがものすごくいっぱいありますよ。カードを何組も使った、相当に複雑高度なゲームもあります。

秋山 中国圏では、どのように呼称されているのでしょうか。爆弾系、でしょうか。

草場 なんでしょうね。要するにジャンルとしては呼ばれてなくて、一つ一つのゲームが闘地主とか、そういう字で書くんですけど、なんで発音したかな? ちょっと忘れましたけど、あの一つ一つのゲームの名前で呼ばれてますね。韓国では、商品化されたピーパーというゲームがあります。それなりによくできていて面白いです。ゲームマーケットに呼んで、販売してもらいました。商品化された大貧民と言って良いと思います。面白いのは、日本ではあんまりそういうことしないけど、中国・韓国では三枚同じ数字が揃ったのを「爆弾」と言って非常に強い。そういう役をつけているのが多いです。全部じゃないけど、爆弾は大好きですね。よく出てきます。

秋山 中国の大貧民系には、ほぼ爆弾がある印象ですね。

草場 ないのもあるんですけど、ほとんどありますね。

秋山 わたしが小学生の頃の話ですけれど、学校に置いてあったりして遊んだのは『モノポリー』や『スクラブル』が主で、あまりトランプゲームを遊んだという記憶はないですね。

草場 それ場所はどこですか?

秋山 ロサンゼルス近郊です。ただ、敢えて言うならば4年生か5年生のときに『ハーツ』を教えてもらって遊びました。非常に面白かったのですが、やはり小学生ですとシューティングザムーンを狙いがちで、失点がかさむ傾向にありました。

草場 悲惨なことになるよね? どうなんですか? あのロサンゼルスとかアメリカなんかでは、トランプゲームっていうのは小さい子もやってるんですかね?

秋山 あまり記憶に残っていないですね。

草場 だから松田さんはそういうけど、じゃあアメリカの子供は ばばぬきや神経筋をやらないのかっと私は言いたかったんだけど、多分やってるんじゃないかなと思うんですけどね。

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