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推理ゲームってどんなゲーム?

ふるあた! みなさん、こんにちは。秋山です。

本記事は『アナログゲームマガジン』内で連載している、推理ゲームの古今東西をしらべてレポートする『推理ゲームふるあた』の第2回です。

第1回はこちら。

今回も創刊準備期間ですので、最後まで無料でお読みいただけます。

さて、前回記事において、わたしの『アナログゲームマガジン』における担当区分として推理ゲームにフォーカスを当てて記事を書きますよと宣言させていただきましたが、今回は「推理ゲームってどんなゲーム?」というお話をさせていただきます。やっぱり、こういう話をするうえで、用語の定義に関しては、さいしょにしっかりやって共通認識を作っておかないとですからね。

と言うわけで、今回は、ボードゲームにおける推理ゲームを整理します。

推理の対象で推理ゲームを8種類にカテゴライズする

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一言に推理ゲームといっても、世のなかには多種多様な推理ゲームがあって、ひとによってその認識はバラバラです。

まずは今日現在、せかいにはどんな「推理ゲーム」が存在するのか。GoogleやBGG、ボドゲーマを駆使したところ、フレーバーとしてシャーロック・ホームズや明智小五郎などの名探偵が登場するだけのゲームを除き、ざっと130ものタイトルがあることが分かりました

次に、その130タイトルに対して、

・答えはランダムか? それとも固定か?
・答えはゲームが決めている? それともプレイヤーが決めている?
・推理の対象は?

この3つの軸で考えたところ、いわゆる「推理ゲーム」を8つのキーワードでカテゴライズすることができました。下図をご覧ください。

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左から順番に説明していきましょう。

まずは数当てから。トランプの『ジジ抜き』の要領で、カードデッキのなかからランダムで1枚抜いて、その1枚を推理するゲームをイメージしています。具体的なタイトルで言えば、古典的な名作『クルード』が挙げられるでしょう。この系統は亜種が多く、抜く枚数が複数枚であったり、推理手順に特徴があったり、ランダムではなく固定だったりするものもありますが、ゲーム内に残っているものを確認して、ゲーム外にあるものを推理する、という点において数当てと総称してよいかと考えています。

次は『人狼』に代表される、俗に正体隠匿系と呼ばれるジャンル。各プレイヤーに村人もしくは人狼と書かれたカードをランダムで渡し、複数のプレイヤーの中から誰が人狼であるかを推理するゲームです。日本では特に人気が高く『人狼』をプレイできる専門店が全国にあったり、役職を増やしたりルールに捻りを加えた亜種が数多く発表されています。

正体隠匿系と同じく、プレイヤー間で陣営が2つ以上に別れますが、最初から誰がどの陣営に属しているか分かるタイプのゲームもあります。ここでは、この種のゲームを非対称系と呼びます。代表的なゲームとしては『スコットランドヤード』が挙げられます。非対称系ゲームにおいて、プレイヤーはチーム戦を繰り広げることになり、相手チームの思惑を推理してゲームを進めます。

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ゲーム外に除かれた1枚を推理する数当て、プレイヤー内に潜む敵を推理する正体隠匿、敵チームの思惑を推理する非対称。この3種は、いずれも事実を元に分かっていないことを推しはかる、という点において推理ゲームと言えるでしょう

次の2種は、ときとして推理ゲームと呼ばれることもありますが、感覚的には隣接ジャンルと思われるものです。

ひとつはクイズです。たとえば『ファウナ』は360種の動物の生息地域や体重/体長を当てるゲームです。出題時に名前とイラストを確認することができるので、その限られた情報を元に答えを推理する……と言えなくもありませんが、やはり本質的には知識問題であり、クイズの域を出ないでしょう。

もうひとつはパズルです。たとえば『ウボンゴ』はお題に応じて指定されたピースをボード内におさまるように配置するゲームです。どのピースを、どのようにすれば、はみでることなく配置できるかを推理する……と言えなくもありませんが、やはりクイズ同様、問われているのは推理力よりも頭の回転力であり、推理ゲームと言うよりパズルゲームかなと感じます。

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さて、長くなりましたが、いよいよ本記事の核心に迫っていきます。続いてはナラティブというキーワードを与えましたが、物語を推理するゲームです。物語を推理する、とは果たしてどういう意味でしょうか? 多くの方が首をひねっていること察します。ここでは、わたしがイメージしている例を取りあげながら説明していきます。まずは、一般的なボードゲームにおける選択をご覧ください

王冠を買えば勝利点10点、魔法の杖を買えば毎ラウンド勝利点1点。
どっちを買う?

ボードゲームを遊んでいるとプレイヤーは、しばしば選択肢が突きつけられます。たとえば上記のような。通常は損得勘定を行ったうえで、いずれかを選ぶことでしょう。しかし、ナラティブ系の、つまり物語要素のあるボードゲームの場合、このような選択肢が見受けられます。

右の通路からは乾いた風が吹き込んでくる、左の通路は壁が湿っている。
どっちへ進む?

分かりますでしょうか? この文章だけでは損得勘定ができません。どちらの道を選ぶかはプレイヤーの気分次第で、その結果、プレイヤーが利益を得ようが、不利益をこうむろうが、完全に運でしかないように思えます。

しかし、冷静になってゲームのオープニングを思い返すと、以下のようなフレーバーがあったことを思いだすことができるかもしれません。

そのダンジョンにはクラーケンというイカの怪物が棲息している。遭遇しないように注意しよう。

こうなってくると話は変わってきます。左の通路は「壁が湿っている」という情報から、その先にクラーケンが棲息している可能性が考えられ、そちらの道を選んでしまうと強敵であるクラーケンとの戦闘を強いられることになるかもしれません。より安全にダンジョンを捜索するならば、右の通路の方が安全と言えるでしょう。

いかがでしょう、この発想こそが物語を推理する、という行為です

『アンドールの伝説』など物語(ナラティブ)要素を持つボードゲームでは、しばしば文章で情報が与えられるので、物語をひもといて、その向こうに透けて見えるデザイナーの意図を読みとる必要があります。まさしく、物語を推理する、と言えるでしょう。しかし『アンドールの伝説』もそうですが、プレイヤーが読みとるべき物語要素は、あくまで要素に過ぎず、ゲームの中心に核として据えられているケースは少なめです。推理ゲームの派生元とは呼べるかもしれませんが、推理ゲームであると表現するのは、いささか乱暴で、我田引水と言わざるをえないでしょう。

では『EXIT』などの、いわゆる謎解きゲームはいかがでしょう。これは、まさしく謎を解くことがゲームの中心に位置づけられているのでナラティブ要素のあるボードゲームと比較すると、推理ゲームと表現してもおかしくはないでしょう。しかし、わたしの感性からすると、やや違和感があります。

と言うのも、謎解きにおける謎というのは、言ってみればパズルゲームにおける法則探しに等しいからです。たとえば、オーソドックスな謎を4つほど用意してみました。ご覧ください。

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これらはいずれも法則を見つけ出し、その法則に基づいて?がある場所に文字を埋めるというものです。謎解きと推理という「事実を元に分かっていないことを推しはかる」という行為とは似て非なるものであると感じます。

謎解きの答えが気になる方は、本記事の末尾に用意しましたので、そちらをご確認ください。自力で解きたい! という方は、ここでスクロールする手を休め、すこし考えてみてください。

それでは、いよいよ8つ目のカテゴリーを紹介させてください。キーワードはミステリー、そして代表的な作品として取り上げたのは『Qシャーロック』。このゲームは、ひとつの連続した文脈(コンテクスト)を持つ物語をゲーム内の核として取り扱っており、プレイヤーに開示されていない部分を、想像力を働かせて回答することを求めるゲームです。プレイヤーの体験としては、まさしく探偵のそれですので、まぎれもなく推理ゲームと言えることでしょう。

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第1回において『Detective』『Chronicles of Crime』という2タイトルを挙げましたが、この連載では8つ目のカテゴリーである、物語の文脈を推理の対象とするミステリーゲームを推理ゲームと定義して扱っていきます

この連載が追っていく流れ

推理ゲームの定義がされたところで、この連載の流れを説明しましょう。

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まず、最初に着手するのは、推理ゲームの年表づくりです。国内で入手可能な、日本語化済みのゲームも多いので、ここを早い段階でやっておくことで共通言語が増やせると考えています。

その次は、推理ゲームに連なる系譜という観点で、ナラティブ要素を含むボードゲームの年表づくりです。そして、推理ゲームとしての重みが強いので、リアル体験型ゲームの年表づくりもできればと考えています。その後は、隣接ジャンルとして数当て、正体隠匿、非対称、クイズ、パズル、謎解きに対して順次、取り組みつつ、余力があればTRPGとマーダーミステリーにも手を伸ばしていきたいと考えています。

けっこう思い切って風呂敷を広げてしまいましたが、果たして無事にたためるかどうか……今の気分は、卒論のテーマを決めた直後の大学生です。

謎解きの答え

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解けましたでしょうか? 右下の山手線の駅名を使った謎は、わたしの考えたオリジナル問題です。解けた方、おめでとうございます。

まとめ

・ボードゲームにおける推理ゲームは8種類にカテゴライズできる。

・本連載で重視するのは文脈を推理するミステリーゲーム。

・推理、ナラティブ、リアル、隣接ジャンルの順で発表します。

終わりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

『アナログゲームマガジン』の3~4月は創刊準備期間ということで、全記事無料なのですが、わたしは3月にも書いたので、無料記事の2本目です!

次回以降は1記事100円の有料記事とさせていただく予定です。ぜひ、追っていただければ幸いです。ちなみに単発で購入いただいても、もちろん嬉しいのですが、月額500円の『アナログゲームマガジン』を購入いただければ、私以外のメンバーが書いた記事も読み放題になりますので、6記事以上を読む予定ならば定期購読の方がお得です!

それでは、また来月! ぼんぼや~!

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