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早く走れなくなった。今日その日から。

 久々にnoteでエッセイ的な短文を書きたいと思う。理由は私自身の身体にちょっと衝撃的なことが起きたためである。
 先日「肺気胸ですね」と医者から言われた。所謂、肺に穴が開いてしまう病気である。幸い、私は早期に発見できたのだが、早歩きや走るといった息の上がる行為は禁止となった。
 その結果まだ一日しか経っていないのだが、一日というか一時間が長い。朝は走れないので、どんどん周りの人に抜かされる。夜も早歩きができないので、階段などで抜かされる。改めて思ったが、みんな早く生きていいる、いや生きなければならないのだろう。そんな目に見えない強迫観念を感じた。
 思えば、私も中学生から大学受験が終わるまで。いや、まさに昨日まで早く早く動かないといけないという思い(衝動といった方が良いかもしれない)に駆られていた。寸暇を惜しんでの勉強、無駄な時間への怖ささえ感じるまでの嫌悪などである。
 しかし、もはや身体的に「急ぐ」ことができなくなってしまった。ただ、この生活も悪い面ばかりじゃないだろう。今までの私を覆っていた脅迫観念を相対化するきっかけになったし、急がなくても普通に過ごせることが分かった。
 私達は「ねばらない」という半ば義務さえ感じさせる観念から自由になり、走らず、無駄な時間に自覚的になり、余白を作ることが今、必要なのかもしれない。病気は人の価値観を変えるという言うが、まさにその通りだろう。

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