山本秀樹『世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ』を読む

 『大学の起源』(東洋館出版社)の著者、ヘースティングス・ラシュドールは次のように述べている。

一四四〇年のころには、ヨーロッパ中の大学が、固有の建物を持とうと努めていたのである。しかし、それが、大学が独立性を喪失し始め、いよいよ、それぞれの政府の統制に服していった時代の現象であったことは、単なる偶然の一致ではなかった。(下巻、p.132)

 ミネルバ大学には特定のキャンパスがない。学生は世界のあらゆる文化圏から集まり、世界の7都市(サンフランシスコ、ソウル、ハイデラバード、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドン、台北)の学寮を渡り歩きながら、少人数、アクティブラーニングを基調とするオンライン授業と現地企業のインターンシップへの参加を通して自らを鍛えていく。
 中世ヨーロッパにおいても、学生は大学を目指してヨーロッパ各地から、あるときはアルプスを越え、あるときはドーバー海峡を渡って都市に集まった。故郷を離れ、ひとと出会い、広い世界をその目で見ることが何よりの学びになっただろう。
 ミネルバ大学の出現は大学が建物やキャンパスではないこと、すなわち、いつの時代にあっても大学とはその場所に集まり散じるひとびとのことであると教えてくれる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?