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2023大学ラグビー番外編:U20ウェールズ代表対U20オーストラリア代表の試合を勝手に数値化して見てみた

みなさんこんにちは
暑さで脳が蕩けそうな今本です

今日はU20の順位決定戦から、U20ウェールズ代表対U20オーストラリア代表の試合について今更ながらレビューしようと思います

映像へのリンクはこちら↓

それではメンバー表から

次にスタッツです

順番にチェックしていきましょう


ウェールズのアタック・ディフェンス

ウェールズのアタックシステム

基本的なシステムは1−3−3−1であるかなとは思うのですが、一時的に1−3−2−2になる時もあったりと、少し広がりがあるようなイメージを感じました
ただ、ブレイクダウンで人数をかけなければボールを出すことができないパターンもあり、その影響でポッドにFWを十分に置くことができていないことも予想されます

アタックの中心となるのは9シェイプ、特に8番のMorse選手がキャリアーとなっていることが多かったですね
キックレシーブからのキャリーでMorse選手が重用されており、個人スタッツとしてのキャリー回数も相当なものだったと思います

印象としては、これはオーストラリアにも言えることなのですが、表裏を使ったアタックをかなり意識して使っていたと思います
全体的に見るとラインが深く一方でパススピードが鋭く、SOのEdwards選手がうまくまとめていましたね

ウェールズのキャリー

先述したように9シェイプが中心となってアタックは組み立てられていたように思います
回数を見ると、108回のキャリーのうち40回が9シェイプでのキャリーとなっていました
極端に強烈な選手はいませんでしたが、Morse選手を中心にFWでのキャリーの安定感はあったように思います

また、ランニングスピードが良かったのも印象的でした
パスに対してしっかりと走り込んでおり、キャリー自体のモーメンタムは十二分にあったように思います
一方でゴール前になるとブレイクダウンに人数をかけることが増え始め、モーメンタムを生かしきれずに減速するような印象も受けました

ウェールズのパス

アタックシステムの項目でも述べたように、バックドアへのパスが前後半合わせて17回と、他チームの平均値と比べると若干多いような印象です
そのため、ウェールズとしては表裏を使ったアタックをかなり意識しているということができるかと思います

また、キャリー・パス比は約2:3とほぼ一般的な数値と言える回数になっていたように思います
キャリーの項目で述べたように9シェイプでのキャリーも多かったですが、SOを経由したバックラインへの展開も少なからずあったためにこのような数値をとったと予想します

一方で、ネックとしてはパス回数の割にラインブレイクやスコアに直結する回数が少なかったことが課題としては挙げられるかもしれません
後半でこそ4トライが生まれるなどアタックが効果的に機能していたということが可能かもしれませんが、前半はバックドアへのパスから効果的なアタックにつなげることができていなかったように感じました

ウェールズのディフェンス

タックル成功率に難ありでしょうか
タックルの強さという観点で見るとそこまで悪くなかったような印象で、ダブルタックルでしっかりと押し込むことができていたので、その点では良かったということができると思います
ただ、1対1で弾かれることも多く、結果としてミスタックルにつながっていました

また、大外での相手のキャリーに対しても少しディフェンスが外されるシーンが散見されており、特にWTBやブラインドサイドにおけるスキル的なエラーやシステム的なエラーがもしかするとあるかもしれません

全体的なラインの上がりの速さなどを見るとそこまで相手にプレッシャーをかけている印象はありませんでしたね
ラッシュをかけるというよりもじわりと前に出て全体を揃えることを意識しているようにも見えました

オーストラリアのアタック・ディフェンス

オーストラリアのアタックシステム

基本的なスタイルはおそらく1−3−3−1ではないかと予想します
10シェイプが少し独特で、単に三角形のポジショニングをしているだけでなく、直線上に並んでいたり、SOが間を割るようなムーブをしてバックドアにボールを供給するなど、10シェイプに対するこだわりを感じられました

また、ウェールズと同様に表裏を使ったアタックを得意としているように感じられ、9シェイプからバックドアへのパス→10シェイプ裏→走り込んできたCTBの裏へ、などトリプルライン以上の階層的なアタックを組み立てていたように思います
これはもしかすると13人制のラグビーリーグにルーツを持つコーチがコーチングを担当しているのかもしれませんね

オーストラリアのキャリー

オーストラリアに関しては5番のMaiava選手や8番のTalataina選手などFWに強烈なキャリアーがいたように思います
おそらくはアイランダー系の選手ではないかと思うのですが、手足が平均よりも長く、ストライドの長さや懐の深さ、コンタクトそのものの強さで何度もDefenders Beatenを生み出していました

また、両WTBのスピードも強烈でしたね
特に注目したいのが11番のLancaster選手のランニングであり、伸びがあるランとスムーズなスワーブもできる好ランナーでした
調べて見たところセブンズも兼任しているとのことだったので、納得のパフォーマンスです
実際、前に出るベクトルという意味でのスピードも素晴らしかったのですが、オフロードをもらった時に相手に囲まれているときは一旦自陣方向へのステップを踏んだりとセブンズの選手らしさを感じました

キャリーの回数そのものを見ていきましょう
前後半合わせると86回、キャリー・パス比も約2:3と一般的な回数に落ち着いたというべきでしょうか
後半が35回のキャリーで6本のトライを奪っていたりと後半に関してトライ効率が良いということはできるかもしれませんが、それ以外に特筆すべきことはなさそうですね

キャリーの質を見ると、ハンドリングエラーや被ターンオーバーが合わせて7回と少なめで、実際の試合映像のイメージから見ても致命的なエラーはほぼなかったように思います
それだけキャリーによるエラーが少なかったということですね

オーストラリアのパス

先述したようにかなり表裏を使うことを意識しており、中でもBKのみでフロントライン・バックラインを構築することによるトリプルラインが特徴的であったように思います
SHからSOが受け取り、CTB裏のBKにパスをするという流れを2度繰り返して外まで回すといったパターンが何度か見られました
FWを立たせずとも構築することができるフォーメーションのため、すばやく効率的にアタックすることが可能です

表裏を使ったアタックに合わせて適宜フロントラインの選手へパスをするなどSOのBowen選手の判断も良く、または飛ばしパスを用いてチャンスを作り出していました
裏を警戒した結果前に出過ぎたり、逆に前に釣られて内側によったところを外側に開きながらバックラインの選手がもらうなど、バリエーションは非常に豊かだったように思います

回数だけに着目すると、後半にかけてOtherが増えているのが少し気になるところでしょうか
蹴り合いになったことや崩れたシチュエーションでパス回しをするパターン、またはビッグゲインから中外自在にパスを繋ぐ様子も見受けられ、結果としてカテゴライズの難しいパスが生まれていたようにも思います

オフロードパスは比較的印象に残っているのですが、印象の割に回数は少なかった方ですね
もっと多く生じているかとも思ったのですが、実際は11回とそこまで多い数値ではなかったです

オーストラリアのディフェンス

タックル成功率は非常に良いと言える部類に入るかと思います
がっつり外されることも少なく、致命傷となるようなミスタックルはなかったように感じました
とはいえ、UNIVERSISの定義上「相手に完全に外されて触ることもできていない場合」はミスタックルではなく単純なラインブレイクに含んでいるので、実際はポジションエラーなどによるミスもあるかもしれません

ラインの上がりやシステム的に見ていくと、極端に前がかりであったり下がっていたりという傾向はなかったように思います
少し前に出て高さをキープしながらインパクトの瞬間に力を発揮するといったイメージです

あえてツッコミどころを挙げるとしたら、少しディフェンスコリジョンは淡白だったように思えます
刺さるわけでもなくダブルタックルで押し返すわけでもなく、倒した後いかにジャッカルに入るかという点に焦点が当てられているような動きをしている選手が多かったように感じました
その影響もあってか、懐深くに強い踏み込みでコンタクトするというような様子は見受けられませんでした

まとめ

総合的に見ると、実力というかプレースタイル相当のスコア差になったかなと思います
ウェールズのシステムも悪くはなかったように感じてはいるのですが、表裏の構造・システムの活用度合いに関してはオーストラリアが一枚上手だったように見ています
スピードランナーという観点で見ても若干ウェールズ側の方が後手に回っている印象でした

今回は以上になります
それではまた!


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