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2023大学ラグビー番外編:U20南アフリカ代表対U20イングランド代表の試合を勝手に数値化して見てみた

みなさんこんにちは
ほどほどに忙しくなってきている今本です

今日はU20の順位決定戦、最後の試合のU20南アフリカ代表対イングランド代表の試合についてレビューしました

ちなみに映像へのリンクはこちら

まずはメンバー表

次にスタッツです

それでは順番に見ていきましょう


南アフリカのアタック・ディフェンス

南アフリカのアタックシステム

南アフリカのアタックは、イングランドもほぼ同様ですが9シェイプを起点としている、というか9シェイプがほとんどですねコレ
いかに素早くシェイプを構築してボール供給をするかというところにかなり重きを置いているような印象です
フル代表に関しても似たような傾向はありますが、正直ここまで9シェイプに偏った構成はしていなかったように思います

ポッドのシステムを見ると1−3−3−1感はあるのですが、エッジにFWの選手があまりいないところを鑑みると中央にFWを集めて3〜4人のポッドを形成して、必要に応じて9番のLe Roux選手の判断で投げ分けている印象ですね
ブレイクダウンにかける人数に関しても、基本は2人オーバーとしながらもそこまで深くこだわりがある印象は受けませんでした

キックを見ると原則Boxを蹴って浅い位置から競り合う、もしくは奥へ蹴り込むという戦略を立てているように感じました
そういう要因もあってラックでの人数にこだわりがなかったのかもしれませんね

南アフリカのキャリー

先述したように、原則9シェイプ・困ったら9シェイプ・ビッグゲイン切ったら外くらいの感覚でアタックを組み立てていました
前後半合わせてもキャリー回数は81回とそこまで多い数字ではなく、その中で合計40回のキャリーが9シェイプによるものと、約半数がSH起点のキャリーとなっていました

システムの項目でも述べたように9シェイプをテンポ良く、左右に散らしながらアタックを繰り返していた印象です
後半になってようやく他のキャリーも見られてきましたが、それでもそれぞれ10回に満たない程度の回数とやはり基本は9シェイプにあるようです

南アフリカのラインブレイク自体はラン・キック含めて試合通じて1回と、他チームの一般的な回数と比べても少なめでしたね
実際、ビッグゲインやラインブレイクを繰り返して一気に前進を図っているというよりかはFW戦を繰り返してじわりと前に出ているような感じで、ペナルティを獲得したらキックでエリアを獲得するというスタイルのような気がします
キャリアーにハンバーと呼ばれるサポートプレイヤーがついたりすることで更なる前進を図っている様子も見受けられましたしね

キャリアーとしてはNO8のBeets選手がキャリーの質の高さを示していました
Beets選手自身もトライもとっていましたし、体も大きく身体能力も高いためペネトレーターとしての強さを見せています
やはり南アのバックローはデカくないと始まらないですよね

南アフリカのパス

これもそこまで深く語る内容ではないのですが、キャリーと同様に9シェイプへのパスが最も多いという結果になりました
前半に関しては33回のパスの内18回がラックから9シェイプへのパス、8回がOtherとこだわりが見てとれます

崩れたパスやカテゴライズが難しいパスが少ないということはその分事前に立てた戦略の通りにパスを回すことができているということを示しており、チーム全体が意図を持ってアタックをしているということができるかと

後半になるとバックドアへのパスやその他のパス、Otherも増えてきましたが、回数的には9シェイプの一強状態にあったかと思います
とはいえバックスライン上でのパスを含めてパスの長さを含めた質は高いように見えたので、アタック自体は崩れることなく進めることができていましたね

南アフリカのディフェンス

アンブレラディフェンスと呼ばれるような、少し外側の選手が相手のアタックラインに被るようなディフェンススタイルをとっていたように思います
それによってイングランドの10番がプレッシャーを受け、自分でキャリーをせざるを得ないシチュエーションに追い込まれていました

このスタイルに関しても比較的フル代表と近いスタイルということができるかもしれません
フル代表はこのスタイルにプラスしてラインスピードを上げているため、相手としてはなかなか外にパスを回すことが難しい状況に追い込まれてしまいます

ただ、タックル成功率に関しては勝利チームにしては少し低めのパーセンテージを示しているように思います
もちろんイングランドにも強いランナーが揃っていたこともあるかとは思うのですが、南アフリカの代表にしては珍しくいわゆる足が死んでいるようなタックルになってしまうシチュエーションが多めで、相手のモーメンタムに押し切られる場合も多々見られました

イングランドのアタック・ディフェンス

イングランドのアタックシステム

今回は基本的には1−3−3−1に近いシステムを構築しているように見受けられ、その中でも南アフリカと同様に9シェイプを重要視してアタックをしているような印象を受けました
キャリーやパスの項目で詳説しますが、9シェイプを重要視していることがスタッツからも分かる結果となっています

以前オーストラリアとの試合の際にスターティングだったBracken選手は控えに回っており、今回の試合ではSHはThomas選手がスタメンになっていました
その際のレビュー記事がこちら

オーストラリア戦ではテンポを意識したアタックをしていたように見受けられたイングランドですが、今回はテンポ・スピードよりもFW戦で前に出ることを意識したアタックをしようとしていたように思います
相手が南アフリカということもあり、分析などから強いFW同士の戦いになることを予期していたのかもしれません
その結果、鏡写しのように両チームが9シェイプ系のアタックをすることになったんですけどね

とはいえ、前後半で大きく様相は異なっています
イングランドは後半バックドアを組み込み始め、10番のSlevin選手を起点にしたアタックが増えていく結果となりました
しかし、これは南アフリカのディフェンススタイルの影響もあり劇的なアタックの改善にはつながらなかったように感じています

イングランドのキャリー

先述したように、前後半ともに9シェイプでのキャリーが最も多く、ついでOtherが多いという結果になっています
南アフリカと比べると、キャリー全体に比すると割合は少し少なめではありますが、前半に関しては全体の1/3が9シェイプでのキャリーと、ある程度の一貫性を感じさせます

回数から特徴を見ていくと、後半にかけて中央エリアでのキャリーが増えたのも一種の特徴ということができるかもしれません
前半は37回中2回、後半は69回中14回とかなり増加していることが見て取れます
これには後半はバックドアを使ったアタックが増えたこと、また南アフリカのディフェンスによって外まで回し切ることが難しかったことが原因として想定されます
そのため、10番のSlevin選手がかなりプレッシャーを受けて、自身でキャリーすることも多く見受けられました

キャリアーとして目立ったのは今回の試合で6番に入ったCunningham-South選手です
前回のレビューにおいてマロ・イトジェ選手に似てると個人的に評した選手でもあります
強くストライドの長いランを特徴としており、瞬時に倒されるという場合も少なかったことからオフロードパスも繋ぐこともできる器用な選手でした
一方でパスミスしたりといったお茶目な一面もあるのが人外感が抜けて人間味があっていいですね

イングランドのパス

9シェイプへのパスが最も多かったのは当然ですが、後半にかけてバックドアへのパスが一気に増えたのが目立った特徴になります
前半は37回中3回、後半は91回中12回と割合的にはほぼ1.5倍ほどの数値となっているので、結果として「増えた」ということができると思います

キャリー・パス比は前半が1:1で後半が7:9と、後半にかけて若干パス比率の増加が見られます
比率的には小さい変化ですが、視覚的なイメージで考えるとかなり目立った変化であり、それに伴いバックスライン上でのパス回しも増えていたので後半はパスを繋ぐ意識を高めるよう指示が出たのかもしれません

パスの質やバリエーションを見ていくと、もう少し組み立て方はあったような印象は受けました
質は悪くなくバリエーションも少なくなかったとは思うのですが、パスワークで意図して崩すというところまでは至っていなかったようなイメージです

イングランドのディフェンス

タックル成功率を見ると、精度はかなり高いということができます
実際に映像を見てみても1対1のシチュエーションでは基本的に倒すことができており、相手をいわゆる青天させるようなタックルも随所に見ることができました

ダブルタックルへのこだわりも、1対1の精度と同様にみられたイングランドの特徴であると思います
下に入る選手と少し高めに入る選手がしっかりと役割分担されており、精度そのものの高さも相まって相手を確実に止めることが多かったように感じました

ただ、少し飛び込むようなタックル、頭が下がって相手を最後まで見ることができていないタックルも何度かみられたのは課題に含まれるかもしれません
単純にディフェンスとしては失敗例になりやすいものですし、危険ですから修正が必要であるように思います

まとめ

9シェイプを中心とする両チームの激しいFW戦を見ることができたのがとても楽しい試合でした
実際、フル代表でも似たような試合展開になるような気もするので、ある種の縮図を見ることができたのかもしれません

コメントするとしたら、スクラムで2回連続で反則を取られた南アフリカ3番のMdanda選手が即座に交替させられていたところに、(もちろん元から決まっていた交替かもしれませんが)セットピースを重要視する南アフリカの文化を垣間見たような気がします

今回は以上になります
それではまた!

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