Unity Japan賞を受賞したVRゲームにゲーム実況の未来の姿を見た ~開発者インタビュー~
「未来のゲームの形は、こうあっても良いと思う」
・・・そう思えた作品に今回のCluster GAMEJAM 2020 in SUMMERのUnity Japan賞を授与しました。
VR空間にある2Dゲームをみんなで遊ぶ
Unity Japan賞受賞作である『ソーシャルコミュニティー2Dゲームハウスー』は、VR空間に2Dゲームがあり、そのゲームを1人でも複数人でもプレイできます。
2Dゲームの内容は、横移動するシンデレラにいくつかの手助け手段を駆使して森の先にあるゴール(お城)を目指す・・・というものです。手助け手段は2Dゲームの外にいる(=VR空間の中にいる)ユーザーが魔法の杖で手助け手段を呼び出す仕様になっています。
2Dゲーム自体はシンプルなものであり、またVR空間で複数人が遊べることも目新しい点ではないのですが、この作品で特筆すべき点は「VRならではの身体的没入感のあるプレイをしながらも、プレイする人も視聴・観戦する人も一つの画面を見ることでプレイ全体を理解できる」というゲーム構造にあると思います。
ゲーム実況のビジネスモデルが変わるかもしれない
たとえばですが、VR空間のサッカーゲームを想像してみましょう。
プレイヤーはそれぞれの視点でプレイするので、他のプレイヤーの視点については分かりません。また、視聴・観戦するユーザーの視点(カメラ)はそれぞれのユーザーが制御しているので、全員が同じタイミングで同じところを見ていることはありません。
しかし本作は、VR空間内のプレイする人も観戦する人も原則同じ画面を見続ける、ユーザー間の情報が非対称になりにくい構造になっています。
こうした構造は一般的なゲーム実況では当たり前なのですが、それをVR空間で実現してしまった点はある種の特異点だったと言えると思います。
動画主体のゲーム実況がこのようなVR空間でのゲームにシフトしていくと、これまで以上に参加する人も視聴する人も等しく楽しめるゲームやプレイスタイルが誕生するのではないかと思えてなりません。そうなるとゲーム実況での新しい収益モデルも生まれるかもしれませんね。
そんな発明的なゲーム構造を実現した開発チーム・team_Narratoriaの皆さんに本作について聞きました。
――この作品のアイディアはどのようにして生まれましたか?
まず、このゲームジャムで最初にどんなゲームを作るのかを考えていた時、「3D空間で2Dゲームを作ってみたい」という意見が出たところから始まりました。そこから3Dの空間上で多人数と共有できるものをつくることになり、結果として2Dゲームハウスが完成いたしました。
――仕上がった作品をご自身でプレイして、どこが上手くできたところだと思いますか?
タイトル、ステージ、リザルトへのシーンチェンジの表現、ステージのスクロールなどといった2Dゲーム特有システムがうまくいったところかなと思います。杖をかざしてボタンを操作するところをカーソルに見立てて作ったところもよい点かなと思います。また当初の目的であった「シンプルでわかりやすく、楽しく協力できる」ゲームデザインが出来たと思います。
――48時間という制作時間の中で、実装しておきたかった要素などはありますか?
ステージ上の敵などといった要素も実装してみたかったのですが、開発工数や時間の兼ね合いでどうしても間に合わず、実装できなかったものも多々ありました。ですが、48時間という時間の中で最低限必要なものを実装できたかなと思います。
――このようなVR空間でのマルチプレイ型ゲームにも将来はビジネスチャンスがあり、皆さんの『ソーシャルコミュニティー2Dゲームハウスー』を見た時にゲーム実況との親和性を感じたのですが、開発された皆さんの中ではそのあたりの議論などはありましたか? また本作に限らず、clusterのようなバーチャル空間ではどのようなゲームにビジネスチャンスがあると思いますか?
僕たち自身はビジネスチャンスについてそこまで深く考えておらず、議論などは行いませんでした。
ただ開発中に一部のメンバーの「好きな実況者が遊んでくれたらうれしいな」という風な発言があったり、VR空間で一つの2Dゲームを複数人で遊ぶのは絶対面白いよね!みたいな会話があったりはしました。
「clusterのようなバーチャル空間においてビジネスチャンスがありそうなゲーム」というものがすぐに思いついたりはしませんが、私の思うゲーム実況や配信においてのclusterの利点が配信者側が自分を表現し、アイデンティティを失わずに3D空間内で配信アプリでは出来ないような企画や視聴者たちとのコミュニケーションが取れることだと考えており、Vtuberやアバターを使って配信をするユーザーが多くなってきている昨今の動画配信アプリなどでビジネスチャンスを狙うのであれば、配信受けが良くわかりやすいシンプルなシステムのゲームがいいと思います。
また配信をしている側と配信に参加している側がコミュニケーションを取りやすい内容、コミュニケーションを取ってできることを起点とした内容のゲームデザインをすれば、より配信サイト向きのゲームとなると私は考えています。
――team_Narratoriaさんとして、今後どのようなゲーム制作や活動をしていきたいと思いますか?
私たち、team_Narratoriaはナラトリアというゲームを製作中です。チーム一同それぞれが自分の持ち味を生かした作品を制作していく事を目標とした活動をしていきたいと思います。