ロボっていいとも!総集編――これまでをコモさんタムさんでゆるゆる振り返るよスペシャル【コモさんの「ロボっていいとも!」約10回到達記念対談】
こんにちは、コモリでございます。
おひるやすみはロボロボウォッチング、ロボティクス業界のキーパーソンの友達の輪を広げるインタビューコーナー「ロボっていいとも!」のお時間となりました。
ノリで始まったこの企画も、あれよあれよと1年半、ここまでで11回の連載に。続けてこられたのも、お話を聞かせてくださったゲストの皆様のご協力と、読者の皆様のご声援があったからこそ。本当にありがとうございます。
今回は特別編として、これまでの内容を本企画のプロデューサー田村と一緒に振り返りながら、「ロボっていいとも!」の軌跡をダイジェスト的にお送りしたいと思います。タムさ〜ん、よろしくお願いします!
タム:よろしくお願いします! 普段は裏方で見守っている身ですが、今日は盛り上げ役として参加させてもらいます。
実録!「ロボっていいとも!」はこんな風に始まった!
コモ:初めに、企画の立ち上げから振り返ってみましょうか。
タム:確か、コモさんこと小森さんがUnityに転職してきてからまだ2、3か月しか経ってない頃のミーティングで決まったんですよね、この企画。
コモ:そうそう……あ、残ってましたよ。当時の議事録が。2020年の2月10日です。
タム:おお、懐かしい! あの頃、Unity Japanでもロボティクス分野に進出していることをアピールしたいと考えていたタイミングで、ちょうど近日中にnoteのアカウント開設を控えていたから、「noteでロボティクス分野進出のPRに繋がる発信を何かできないか?」という会議をセットしたんですよね。
コモ:そのミーティングが15時に始まって……お、「ロボっていいとも!」の企画は15時17分に決まってますね。なかなかのスピード感だ(笑)
タム:「小森さんがロボティクス業界のインフルエンサーにリレーインタビューをする」というアイデアが早々に出て、たしか私が「小森さんだから、タモさんならぬコモさんだね」って言った気がする(笑)
コモ:そこから、「リレーインタビューってテレホンショッキングじゃん、『コモさんのロボっていいとも!』だ!」と、なんか成り行きで決まっていった気がします。
タム:正直、最初に「記事のプロフィール画像、これでどうでしょう?」って、コモさんがあの写真を持ってきた時はビックリしましたよ!
コモ:この写真を撮るために、髪切りに行ったんですよ、僕(笑)
タム:そんなノリで始まった「ロボっていいとも!」でしたが、始まってもう2年が経とうとしていますよ。コモさん、こんなに続くと思ってました?
コモ:紹介が途切れたら終わりにしようとは思ってたんですけどね。ゲストの方々が、毎回喜んで次のお友だちを紹介してくださって。出てくれた皆さんのご縁のおかげです。
タム:それでは、「ロボっていいとも!」の記事を初回から振り返っていきましょうか!
Unityはエンタメロボットと相性が良さげ
コモ:記念すべき初回のゲストは、aibo開発者の川部祐介さんでしたね。
タム:個人的には「aiboにUnityが使われているんだ!」という事実を知ったとき、すごく驚いたんですよね。それで、どんなふうに活用しているのかぜひ聞いてみたくて、依頼をさせてもらったと。
コモ:「Unity=ゲーム」の印象がまだ強かった当時、「ロボットの開発にも使えるのか!」というインパクトを与える上で、aiboはとてもいいフックになりましたね。ロボット開発者たちにも、まだそこまで周知されていない頃だったので。
タム:とくに、「物語性やエンタテインメントを必要とするロボットの開発用途ではUnityは重要」という川部さんの話はよかったです。私たちもまだ掴みきれていないUnityの可能性を、実践者の言葉でバシッと言語化していただけたのが、とても気持ちよかったですね。
コモ:エンタテイメントロボットらしいインタラクションの開発に、Unityのリアルタイムエンジンが役立ったというエピソードは、僕も聞きながら「すごく上手く活用してもらえていて光栄だな」と感じていました。
タム:そして、初回の記事としても最高の滑り出しでした。Unity Japanの公式noteをリリースしてから、最初に「スキ」の数が100を超えたのはこの記事でしたし。
コモ:ロボティクス界隈でも想像以上にシェアが広がって、新企画として幸先のよいスタートを切れました。あまり公に出ていなかった貴重なお話を聞かせてもらえた川部さんには、本当に感謝しています。
Unityのロボット活用、実践から見えた3つの道筋
タム:第2回は、Preferred Networksの矢島史さんと海野裕也さんのおふたりにお話を伺いました。
コモ:川部さんから引き続き、Unityをロボット開発で活用していただいている実践者のお話でしたね。「思っていることをパッと形にできて、検証も素早くできるのがありがたい」という旨のコメントは、大変ありがたいなと感じました。
タム:ロボットは実際につくって動かしてみないと、わからないことだらけですもんね。
コモ:そうなんですよ。そこでUnityを上手く用いると、検証と改善のサイクルを効率化できて、最終的にすごいプロダクトが出来上がると。そういうプロセスにしっかりUnityが入り込んで役立っていることを、具体的なエピソードを交えて教えてもらえたことが、とても嬉しかったです。
タム:ロボット開発の現場でUnityを使いたくなるポイントを、端的に3つにまとめて語ってもらえたことも印象的でした。私はロボット方面の知識には疎いですが、「Unityの持っている強みは、ロボット開発に確実に生かせるんだ」ということを、体系的に整理して理解するきっかけになりました。
コモ:話を聞きながら、僕らもUnityについて新しい発見があったり、理解を深めていけたりするのが、この企画の醍醐味ですよね。
「人の心を動かせるのがロボット」
タム:第3回は、ユカイ工学の青木俊介さんが来てくださいました。これも本当に面白い回でした。
タム:ロボット制作は、ハードウェア開発とシミュレーションを同時並行で進めないといけない。ただ、それを双方いいペース感で進捗させていくのが難しい。その連携にUnityが一役買うのでは……という意見は、開発者ならではのご指摘で目からウロコでした。
コモ:僕は、青木さんが「『人の心を動かすことができる』というのが、ロボットの一番の特長ではないか」と明言されたのが、とても印象に残っています。いろんな切り口で定義ができそうなところを、「人の心を動かす」という一点で言い切られたことに青木さんの信念を感じて、胸にじんときました。
あと、この回あたりから「Unityの話を無理に出さなくてもいいかな」と思うようになってきたんですよね。記事の中でも、Unityについて語っている部分が明確に減っているのが面白い(笑)
タム:そうそう。「ロボットとは本質的にどういうものなのか?」という問いを深く掘り下げていきたいよね、とコモさんと話したのを思い出しました。そして、ここからの数回が、ロボットの本質に迫る話をしてもらえるゲストにバトンが回っていった。それも「繋がるべくして繋がった」とも言える流れのようで、感慨深いです。
「世話されるロボット」から見える、幸せな技術の使い方
タム:そして第4回は、LOVOTの開発者であるGROOVE X・林要さんの登場です。
コモ:「お世話をするロボット」ではなくて、「お世話をされるロボット」をどうやって作れるかという話、大変面白かったです。今まで作られてきたさまざまな家庭用ロボットは、人の手間を減らすために工夫が重ねられてきたのに対して、LOVOTはお世話をされるため、つまり人の手を焼かせるために最先端の技術が駆使されていると。
タム:これまでとは真逆のベクトルですよね。
コモ:そう、利便性とは逆に向かう開発なんですよ。けれども、LOVOTの世話をしている人たちの多くは、余計な手間をわざわざ引き受けることで、幸せを感じている。その構造について説明を伺っていると、「技術の使い方」についていろいろと考えさせられました。
タム:私にとってのハイライトは、LOVOTの頭上にある「ホーン」のデザインにおけるエピソードでした。ホーンのデザインの評価が男女間で分かれていて、その原因を検証していったら、どうやら「かわいい」の捉え方に男女差があるらしいことが見えてきたという話。「面白いなあ」と感じました。
コモ:「過去の経験にとらわれず“カワイイ”を自らが判断する直感的能力が備わっている方も、女性の方が多い」「わからない男性が“カワイイ”を判断する時は、過去に女性が“カワイイ”と言ったものを学習していて、その記憶とマッチングしている」とのリサーチ結果をシェアしてもらいましたが、あれも感覚的に納得してしまいましたねえ。
タム:「人の価値判断」のロジックを探求しながら、それをいかにロボットのデザインに反映させていくか。そんな知見が結集して、LOVOTはあの見た目に仕上がっていると知ると、一層愛らしく見えてきますね。
ロボットの「弱さ」を認めたら、世界が広がった
コモ:第5回は「弱いロボット」の研究者、岡田美智男先生にお越しいただきました。
タム:私は「弱いロボット」の概念を、この取材を機に初めて知ったんですけど……いやあ、感銘を受けました。ロボットにおける弱さを考える上で、とくに印象に残っているのが、自動運転技術のエピソードです。
自動運転技術は人命に密接に関わってくるものであり、「ミスは許されない、完璧でなければいけない」と考えるのが一般的です。しかし、この“完璧”というのが難しい。ロボットやAI開発の多くに当てはまる話で、8割まではパッと完成させられるが、残り2割をクリアするのが大変で、途方もなく時間がかかる。
コモ:その2割をなんとか埋めていこうと、開発者の皆さんが日夜研究に勤しんでいます。
タム:ただ、岡田先生は「その不完全な2割を、ロボットの“弱さ”と捉えたらどうか」と問いを投げかけたんですよね。人間がロボットの不完全さを“弱さ”として受け入れて補おうとすれば、技術導入も早くなるし、結果的にみんな幸せになれるのでは、と。
今までロボットの“弱さ”なんて考えたこともなかったので、お話を聞いた後に、思考がアップデートされる心地がしました。
コモ:岡田先生の話は、時間をおいて寝かせれば寝かせるほど、心にじんわり染みてくるような、そんな温かさがありましたよね。「完璧なロボットを目指すばかりではなく、人間との双方向性を残して、お互いに補い合える関係でいるのもよいのではないか」という考え方は、どんどん便利になっていく世界において、忘れないでおきたいなと感じました。
「人間性をエンジニアとして説明できるようになりたい」
タム:続いて第6回のゲストは「Keepon」の産みの親・小嶋秀樹先生でした。
コモ:僕は小嶋先生のことを昔から一方的に存じ上げていました。Keeponがリリースされた当時、、僕はヒトの感性に訴える機器の形態やサービスというのをあれこれ開発していたのですが、一目見て「やられた!」と思ったんですよね。目や口を動かさずとも、こんなに表情豊かなロボットが作れるのかと。その発想力、技術力に感嘆したことを、今でも鮮明に覚えています。
そんな小嶋先生から「人間性をエンジニアとして説明できるようになりたい」という力強い言葉を聞けたことが、この回の一番のハイライトでした。これって要するに「人間らしさを設計可能なレベルまで数値化、図式化していきたい」という、エンジニア的な野心にあふれた決意表明なんですよ。そういう野心を内に秘めている人の、ひとつの試行錯誤の到達点が、あの可愛らしいKeeponだというギャップに、なんだかゾクゾクしました。
タム:人間性をひも解くカギとして、「人は言葉をどう理解しているか」という話が出てきたことも、興味深かったです。
コモ:人それぞれ言葉の使い方や受け取り方が違うのに、私たちはなぜ言葉でここまで意思疎通ができているのか。逆に、どういう認識が足りていないと、言葉によるコミュニケーションは難しくなるのか。言われてみると、「確かにどう成り立っているんだろう」と疑問が湧いてきますよね。
タム:そのヒントを得るために、子どもの自閉症のメカニズムを解く研究を始めたという経緯も、お話を聞いてなるほどなあと感心しました。
コモ:……読み返しながら気づいたんですけど、ここ数本の記事、Unityの話をしてないですね(笑)
タム:ホントだ、まったくしてない(笑)。でも、それが結果的にいい文脈の広がりを生んで、「ロボっていいとも!」の面白さを支えてくれていたんじゃないかなと思います。
センスがなければIF文1000個で勝負してもいいんだ
タム:第7回は日本のROSコミュニティのトップエキスパート、岡田浩之先生の回です。
コモ:4回から6回にかけては「ロボットとは何か、人間とは何か?」という哲学的な問いに迫るような話がメインでしたが、ここからはロボットエンジニアリングの具体にまつわるお話に少しずつ流れが戻ってきましたね。
タム:岡田先生の話はとにかく痛快で、私個人としては刺さりまくっていました。とくに研究室の大学生たちに対して「ロボカップではとにかく勝てばいい。第一義が『勝つこと』ならば、IF文1000個を並べたような汚いプログラムであっても、動いて勝てれば問題ない」というような指導している……って話がツボで。
コモ:ありましたね、熱い話だったなあ。
タム:要は「机上の美しい空論よりも、ちゃんと動いて望んだ結果が出ることが大事だから、まずはなりふり構わず貪欲に打ち込め」という話だよな、と僕は解釈したんですけど。こういう泥臭さの重要性を、熱量を持って学生に伝えてくれている人がいるという事実に、すごく胸が熱くなりました。
コモ:痛快と言えば、人工知能のパラメータ調整の話もよかったですね。
タム:そうそう! パラメータの重み付けの調整は、その人間のセンスが問われていて、下手な人はどんなにやってもなかなか上手くならないと。その「センス」の正体を解明するために人間、とりわけ赤ちゃんの研究をしているんだと、岡田先生は話してくれましたね。一見やってることがバラバラのようでも、根底ではぜんぶ繋がっていて筋も通っているのが、とても気持ちよく感じました。
コモ:「センスがないヤツはいくらやってもダメ」というのは痛烈な指摘ながらも、ある種の優しさでもあるのがグッとくるポイントでしたね。岡田先生はそこで、「センスじゃないところ、たとえばIF文1000行書くようなやり方で勝負すればいい」という風にも言ってくれているわけで。
タム:ないものを求めすぎず、あるもので勝負をしろと。
コモ:僕もセンスのないほうの人間だと自負しているのですが(笑)、岡田先生のように経験則から「お前は無理してそっちで勝負しなくていい」と助言をしてくれる存在って、とてもありがたいなと思うんです。諦めがつくし、自分が得意な方向で頑張ればいいと気持ちを切り替えられますしね。
インタビュー中に意気投合して新事業が生まれてしまった件
タム:第8回のゲストは、「唐揚げロボット」の開発者であるアールティの中川友紀子さんでした。
コモ:これもまた、めちゃくちゃトークが盛り上がった回でしたね。中川さんの溢れんばかりのロボット愛が、ひしと伝わってきました。「ロボットに関わる仕事をしたいけど、そもそも選択肢が少ないし、土壌もない」という現状を前にして、「だったらロボット事業の土壌を耕すために、教育からやろう」と考えられるパワフルさ、行動力には圧倒されました。
生き残るのが難しいロボットベンチャーの世界で、中川さんの立ち上げたアールティは、まさに残るべくして残った会社だし、今後も続いていく強さを持っているなと感じました。
タム:私は、中川さんの人材育成や採用の根っこに「本当にロボットが好きな人たちと一緒に仕事をしたい」という思いが込められているところに、とてもシンパシーを感じたんですよね。Unityも「Unityが好きだから」という理由で多くの仲間が集まってきている会社なので。
そういう面で意気投合して、インタビュー中に「ぜひUnityと組んで教育事業をやりましょう!」といった話も出たんですけど、何とそれが最近、本当に実現してしまいました!
コモ:「ロボっていいとも!」から生まれた、初のコラボレーション案件になりましたねえ。
タム:Unityの話、特定の領域の話にこだわらず、人との自然な繋がりに企画を委ねていったからこそ、こうした幸せな協業の道が生まれたんじゃないかなと、個人的には思っています。
コモ:狙ってではなく自然に生まれるコラボが、今後の「ロボっていいとも!」からも生まれてきてくれたら嬉しい限りです。
勇気をもらえた開拓者の言葉
コモ:第9回は、Open Roboticsのジェフ・ビグスさんに登場していただきました。
タム:これは何というか、歴史的な意義のある記事になったのではないかなと。立ち上げから間近で見てきた人が語る「ROSの成長物語」を日本語で残せたことに、大きな価値を感じています。
印象に残っているのは、世界中のROSコミュニティを見てきたジェフさんが「日本のROSコミュニティーの人は、ソース貢献度はそんなに高くはないものの、コミュニティー全体の盛り上がり方は世界のなかで見てもすごい元気だと思います」と言ってくれたことですね。そこに参加している日本人として、何だか誇らしい気持ちになりました。
コモ:中川さんと似て、ジェフさんも「畑がないなら自分で開墾すればいいじゃない」というような、開拓者精神に満ちている人でしたね。世界をまたにかけて、道なき道を切り開くような仕事をしてきた方が、今の世界や日本のロボティクスの現状をどんなふうに捉えているのかを知れて、すごく勉強になりました。
あと、最後のほうに出てきたブライアン・ガーキ氏の発言の引用は痺れましたね。“Any code is good code”、「どんなコードでも、どんな貢献でも、それは良いことなんだ」と。
タム:いい言葉ですよね。その後に続いた「英語のコミュニケーションが難しければ、まずはソースコードを書いてみることをオススメします」というアドバイスにも、きっとたくさんのエンジニアが勇気づけられるだろうなと思いました。
「心技体」三拍子揃った、達人のごときパワフルさ
タム:とうとう、第10回までやってきましたね。この時のゲストは元ROS Japan Users Group主宰の近藤豊さんでした。
コモ:いやあ、近藤さんは鉄人すぎました(笑)。心技体、三拍子揃ったパワフルさでしたよね。お話を聞きながら、『巨人の星』とか『はじめの一歩』の世界観にも似たストイックさを感じてしまいましたよ。
タム:今までのゲストも皆さんそれぞれパワフルでしたが、近藤さんのパワフルさはちょっと質感が違って、何か達人めいた雰囲気がありますよね。
コモ:そんな近藤さんが、今までどんな本を読んできて、どんな鍛え方をしてきたのか。表からは伺い知れない努力のプロセスをインタビューで垣間見れたことで、「こうして今の近藤さんに至ったのか」と納得できましたし、自分ももっと頑張ろうと、すごくポジティブな気持ちになれました。
タム:私は、Unity Japanのコミュニティにコミットする立ち位置の人間として、ROS Japan Users Groupに向き合う真摯さに共感しましたし、感動しました。最初は数十人しかいなかったROS Japan Users Groupも、今では2000人を超える大規模なコミュニティに成長していて、それでもなお良い状態を保っている。その理由が、近藤さんのお話を聞いて、すごく腹落ちしたんですよね。
コモ:最初からすべてがうまく回っていたわけではなくて、「イベントも5回に1回は『今日はダメだったな……』と深めに反省していた」というエピソードも印象的でした。
タム:そうですね。本当に地道な試行錯誤を繰り返して、着実な改善を積み重ねてきたことが語りから切実に伝わってきて、コモさんと同じく、自分も頑張ろうという気持ちがふつふつと湧いてきました。
「藤田さんが会社を立ち上げたら就職したい」
タム:振り返りもこちらでラストとなりました! 第11回のゲストは、ソニーグループ株式会社エンジニア・藤田智哉さんです。
コモ:第1回がソニーの川辺さんから始まり、ここでまたソニーに戻ってきたことに、何か運命めいたものを感じますね(笑)
タム:藤田さんは発言の切れ味がよくて、パンチラインの多い内容だったなと。ソニーさんほどの大企業だと、OSSを積極的に活用するのは「何かが外に漏れるかも」というリスクを気にして、なかなか難しいだろうなと思っていたんです。
けれども、藤田さんは「少々の手間とリスクを取るだけで、自分たちが満たしたい要件の75%を満たすことができるなら、使わない手はないはず」と真っ当に考え、それを社内でプレゼンし、プロトタイプを作って検証データまで出して通したと。こういう理路整然と、大局を見ながら事を判断して動かせる人がいたからこそ、大企業にもかかわらずOSSの導入がスムーズにいったのだろうなと納得できました。
コモ:個人の性質だとも言っていましたが、藤田さんはエコシステム全体を俯瞰して見ている人なんですよね。「どうしたら全体がよりよく回るのか」ということを、常に考えている。
エンジニアって普通に仕事をしていると、個別具体の事象に注意がいきがちなので、藤田さんのように考えられる人ってすごく稀有な存在だなと感じていて。そういう全体を見られる人が、ROSに魅力を感じてコミットしまくって、ついにはROSのTechnical Steering Committeeにまで推薦される……というストーリーまでも理に適っているなと感じました。
タム:あと、藤田さんの話しぶりが淀みなくて、惚れ惚れしましたよね。
コモ:それですよ、ホント。藤田さんが会社を立ち上げたら就職したいと思っちゃいましたもん(笑)。それでいて、「僕はそんなにビジョナリーじゃなくて。空の星の輝きよりも、目の前の穴のほうが気になっちゃうし、むしろ穴埋めが好きな人間」と自己評価しているストイックさも素敵でしたね。
目指せハレー彗星! 予期せぬ繋がりを求めて
タム:さて、これで一通り終わりました!コモさん、ここまでの「ロボっていいとも!」の軌跡を振り返って、あらためて何か感じたことなどありますか?
コモ:何というか、言葉にするのが難しいのですが……「思い」とか「人の気持ち」が未来を切り拓いていくのだろうな、と強く感じましたね。この企画に出ていただいたゲストの皆さんは、「単純に技術が好きで」というだけで駆動しているのではなくて、それに加えて何かしらの熱い思いを持っている方々ばかりだったなと。そういう人の熱が伝播して人を動かし、時代を動かしていくのではないかな……と、そんな気持ちが沸き立っています。タムさんはいかがですか?
タム:私は、この「ロボっていいとも!」を続けること自体が、Unityのロボティクス分野における発展の大事なポイントになるだろうな、とあらためて再確認できました。Unityの話にこだわらず、さまざまな文脈を流れのままに受け入れてきたことで、自然には繋がらなかっただろうご縁がたくさん生まれました。
線の繋がりが広がっていけば、いつしかそれは面となり、自然とコミュニティの素地も拡大していくはず。Unityの、そして日本のロボティクス界をさらに盛り上げていくためにも、今後も「ロボっていいとも!」の企画で、予期せぬ繋がりをたくさん広げていきたいなと思っています。
コモ:予期せぬ繋がりが可視化されると、今まで繋がっていなかったコミュニティとコミュニティ同士が接近して、そこから新たな交流が生まれることもありそうですね。
タム:だからこそ、予定調和ではなく「予期せぬ」というのが大事なんだろうなと。
コモ:きっと、今の自分じゃ思いもよらない人とも、今後は繋がっていくんでしょうね。今からすごく楽しみです。それと、回を重ねていっていつか同じ人にバトンが渡る……みたいな展開も熱いですよね。
タム:ハレー彗星みたいに?
コモ:ハレー彗星は75年周期でしょう、ちょっとスパン長すぎやしませんか?(笑)
タム:じゃあ、75回周期で……としても長いか(笑)
コモ:でも、それくらい長く、愛されつつ続いていける企画になってくれたら理想ですねえ。
タム:そうですね。これからもお友だち紹介のバトンが続いていく限り「ロボっていいとも!」は継続していきたいと思っています。読者の皆さんも引き続き、お付き合いいただけたら嬉しいです。
コモ:それではまた次回、通常回の「ロボっていいとも!」でお会いしましょう〜!