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ロボット工学界、期待の若手! 「ロボティクス勉強会」を運営する、安達波平さんと語ってみた【コモさんの「ロボっていいとも!」第13回】

こんにちは、コモリでございます。

おひるやすみはロボロボウォッチング、ロボティクス業界のキーパーソンの友達の輪を広げるインタビューコーナー「ロボっていいとも!」のお時間となりました。

前回のゲスト、OUXT Polaris兼株式会社ティアフォーのソフトウェアエンジニア・片岡大哉さんには、ROS Japan Users Groupでの活動を中心に、楽しくお話を聞かせていただきました。

今回は、本企画では初めてとなる、学生さんゲストの登場です。片岡さんからは「僕が見知っている中で、最も話のネタに困らなさそうなロボット界隈のホープ」との紹介をいただいております。また最近では「とても優秀なAdachiさん」のフレーズがコミュニティでプチバズするほどに、多くの人からも才能を期待される人物です。

それでは早速お呼びしましょう。本日のゲストは片岡大哉さんからのご紹介、現在は筑波大学大学院の博士課程に在籍する、「ロボティクス勉強会」オーガナイザー、安達波平さんです!

安達:よろしくお願いします! コモさん、先日は僕が開催に携わっている勉強会に発表者として参加していただき、ありがとうございました!

コモ:いえいえ、こちらこそ熱心な参加者のみなさんたちと交流ができて楽しかったです。

安達:あの勉強会には、片岡さんも何度も顔を出してくださっていて、とてもお世話になっているんです。

コモ:片岡さん、本当に顔が広いですねえ。

安達:「ロボっていいとも!」は拝見していたのですが、まさか流れで自分にバトンが回ってくるとは思ってもいませんでした……片岡さん、やってくれましたね(笑)。

コモ:今日は安達さんが、どんな経緯でロボティクスの分野に足を踏み入れたのか、今はどんな活動をしているのか、ぜひいろいろとお話を聞かせてください!


コイルガンを作ってみた? 小中でのものづくりの思い出

コモ:はじめに、安達さんの幼少期のエピソードを聞かせてください。ロボティクスへの興味は、子どもの時からすでにあったのでしょうか?

安達:そうですね。はっきりとロボティクス、というわけではないですが、ものづくりは好きな子どもだったと思います。小学2年生の頃から、マイコンカー、白線に沿って走行するロボットのことなんですけど、それの大会に参加していたりもしたので。

コモ:あ、その時の記事がネットに残っていましたよ。初めて参加したミニマイコンカーレースで、中学生もいるなかで3位になっているのはすごいですね!

安達:県が開催しているワークショップ等で導入のキットを作るところから入るので、ロボットを0から作っていたわけではなかったのですが、プログラムを「どう組み立てるのか」考えたり、改造・改良したりするのが好きだったので、マイコンカーのプログラミングやパラメータの調整だけですごく楽しんでいた覚えがあります。

中学生になってからは、電子工作にハマりました。ニコニコ動画に「〇〇を作ってみた」というタイトルの工作動画がたくさんアップされていたので、それを見ながら真似をして、いろんなものを自作しました。

コモ:その頃はちょうど「歌ってみた」「踊ってみた」などの「やってみた」動画が流行り始めた時期でしたね。“才能の無駄遣い”が持てはやされた良い時代でした(笑)。どんなものを作ってみたんですか?

安達:簡単なものだと、カウンタ回路とかタイマーとかを作ってました。あとは、多くの高専生が一度は通る道だと思うのですが、コイルガンとかも作ったりしてました(笑)。

コモ:おお、絶対に無理だけどやってみたくなる工作の定番ですね!

安達:はじめのうちは作っているだけで楽しかったのですが、だんだんと「やっぱり回路設計の技術とか、地に足がついた知識がないと、思い通りに作れないな」と感じるようになっていって。この思いが、仙台高等専門学校への進学を決める大きな動機になりました。

「高専ロボコン」で出会った理想のロボット

コモ:ロボティクスの分野に明確な興味を持ったのは、高専に入ってからでしょうか?

安達:はい。うちの高専には、高専ロボコン(アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト)の参加を目的に活動するロボコン部があって、僕は「部活でものづくりのスキルをタダで教えてもらえるのはラッキーだな」といった軽い気持ちで入部しました。

コモ:その時点ではまだ、ロボットに対してもそこまで思い入れはなかったのですね。

安達:転機になったのは、高専3年のときに見学に行ったロボコンの全国大会です。そこで鈴鹿工業高等専門学校の作ったロボットを見て、すごく感動して。完全自律という形で自分の理想を体現していたんです。

コモ:鈴鹿高専のロボットは、その年のロボコンのアイデア賞を受賞していますね

安達:「同じ高専生があそこまでのロボットを作れる」という事実を目の当たりにしたことで、僕のロボット作りに対するモチベーションに火が付き、ロボコン部の活動にどんどんのめり込んでいきました。

また、この全国大会の前に上級生が一気に抜け、僕が部長を務めることになったことも、大きな転機になったんですね。「どうすればチームが最大限の力を発揮しつつ、一丸となって目標に向かっていけるか」を勉強しながら、マネジメントに力を注ぐようになりました。

コモ:マネジメントについての勉強は、本を読んだり?

安達:そうです。あとは、自腹を切ってコーチングの講習を受けたりもしました。

コモ:なんと! 高校生でそこまで「チームをまとめること」に本気でコミットできるのは素晴らしいですね。その役割が肌に合っていたのでしょうか?

安達:それもあると思いますが、僕自身、チームに対する技術的な貢献度が低いなと感じていたことが大きいです。自分の主な担当は回路設計で、最も難しいソフトウェアや機械設計の部分は、ほかの部員に任せきりだったので。だからその分、別のことで部に貢献したいと考えていました。

コモ:いやあ、当時から本当にしっかりされていますね。いまお話してくれた考え方を聞いていると、以前ロボっていいともに来てもらったソニーグループの藤田さんと同質の頼もしさを感じます。安達さんが会社を立ち上げたら、ぜひ就職させてください(笑)。


ロボコン部引退後は「試練の期間」だった

コモ:ロボコン部は高専4年のときに引退されたのですよね。その後はどんな活動をしていたのですか?

安達:引退後は、いま振り返ると自分にとって「試練の期間」だったなと感じます。それまでは「高専ロボコンで結果を残す」という明確な目標があって、良くも悪くもそこに依存していたなと。

コモ:依存、ですか。

安達:追いかけるべき課題と、チームのなかで担うべき役割がなくなって、これから何をすればいいのか、何に情熱を注げばいいのかわからなくなってしまって。「これからは自分で目標と機会を作っていかないと、成長が止まってしまう」と危機感を覚えました。

コモ:なるほど。ロボコンに代わる何かを、自力で見つけようと。

安達:はい。ロボコン部での活動を通して「自分は自律移動ロボットの制作が好きで、もっと上達したいんだ」という方向性は見えていたんですよね。なので、そこに繋がる経験をたくさん積んでいくために、有志のチームに参加して「RoboCupSSL」「Robomaster AI Challenge」などに挑戦したり、研究室の後輩と組んで高専祭(高専の文化祭)用に自動バドミントンロボットを作ったりしました。

これらのコンテストに向けたロボット制作では、希望してソフトウェア担当になりました。それまではソフトウェアが苦手分野だったこともあり「ほかにもっと得意な人がいるから」といういいわけで手をつけてこなかったのですが、自分の技術力の向上のためにも、やはり避けては通れない道だなと思ったので。

コモ:おお、「やらなければいけないポジション」に自らを追い込み、試練を課したのですね。

安達:そうでもしないと、このまま苦手意識ばかりが強くなっていってしまうなと。大学院への進学前のタイミングで、集中的にソフトウェアのスキルアップを図ることで払拭できてよかったなと思っています。


開かれた学びの場に支えられてきた。その恩返しを「ロボゼミ」で

コモ:お話を聞いていると、安達さんは「これ!」と決めたテーマやトピックに対して、丁寧に学びを深めていくのが得意なのだなと感じました。いま運営に携わってらっしゃるロボティクス勉強会、通称「ロボゼミ」も、まさにそんな安達さんらしい活動だなと納得しました。

安達:そんな風に言ってもらえて嬉しいです! この勉強会は友人2人に巻き込まれる形で運営に参加し始めたのですが、自分自身とても楽しみながら運営のお手伝いをさせてもらっていて、あのとき誘ってもらって良かったなと感じています。

一緒に勉強会運営をしないかと誘われたとき、ふと自分の小さい頃のことを思い出したんですよね。こういう開かれた勉強会、ワークショップにたくさん参加して、育ててもらったなと。マイコンカーのイベントだけではないですが、あのような機会に恵まれていなかったら、今の自分はいないと思います。

これは「自分が提供する番」が回ってきたのかもしれない――そんな風に感じて、これは引き受けたい、引き受けるべきだと感じました。誰もが簡単にロボットの世界に触れられたり、知識を深めあったりする機会は、これからもたくさん増えていってほしいですし、自分もそれに貢献できればと考えています。

コモ:僕も先日おじゃましましたが、皆さん「学びたい!」という熱量が高くて、とてもいい場だなと感じました。現在は月に一度の開催ですよね。

安達:はい。今後はさらに、分野や年代を横断して幅広い方に参加いただける場にしていきたいなと考えています。最近、そのための施策のひとつとして、学部生以下の参加者用に、無料の「ジュニア聴講枠」を作ったりもしています。

コモ:直近で「関西春ロボゼミ2022」という新しいイベントも開催されたそうですが、これは通常のロボゼミと、どのような違いがあるのでしょうか?

安達:ロボゼミは「あらゆる人がロボティクスに関連する様々な知識・技術を共有するための場」として広く開いていて、テーマはその時々の発表者によって変わります。一方、関西春ロボゼミ2022は「関西春ロボコン運営委員会」と協力する形で、「春ロボコン2022(関西大会)」に参加したチームの有志の方々に、その年の取り組みや技術について発表してもらう場になっています。

選手たちは大会までにたくさんの試行錯誤を繰り返しています。その過程で生まれたボツ案や改良のプロセス、その中で得られた知見などを、チーム外に共有・継承できたら、ロボコンがもっと盛り上がるのではないかなと、前々から感じていて。そんな思いから、この関西春ロボゼミ2022を立ち上げました。

コモ:とても素敵な志ですね……!

安達:ありがとうございます。現場の選手たちのニーズに寄り添いつつ、10年、20年と経った後に参加者たちに「あの勉強会があってよかったね」と言ってもらえるような、長く続く場にしていきたいです。


野生のロボットを実現する

コモ:勉強会ひとつとっても、先を見据えながら真摯に向き合っているのですね。そんな安達さんですが、ご自身の10年後についてどんなビジョンを持っているのか、ぜひ最後に聞かせてください。

安達:「自律移動ロボットをもっと上手に作れるようになりたい」という気持ちは、今でも変わっていません。今春に進学した筑波大学大学院では、そのためのスキルアップを着実に重ねながら、自分の研究テーマを定めていきたいなと。

ロボコンを散々やってきたおかげか、課題のあるコンペ形式の制作はわりと得意なのですが、反面「自分でテーマを決める」のに苦手意識があるので、そこを乗り越えるのが今後の課題だなと感じています。

コモ:「こんな分野で活躍する自律移動ロボットを作ってみたい」と、思い描いているイメージはあったりしますか?

安達:そうですね……データサイエンス領域がこのまま進歩していくと、データの収集があらゆる課題の解決に直結する時代が来るように感じていて、IoT等の技術で採ってくることの難しい情報の収集こそ、自律移動ロボットが最初に解決する課題であるように思っていて。

コモ:それはおっしゃる通りですね。

安達:ロボットが踏破可能な領域、作業可能な環境を拡大していくことで現状集めることの難しいデータも収集できるようにしていきたい、それが僕の設定するミッションです。まずはロボットの不整地移動にフォーカスした研究から着手していきたいと考えています。

最終的には山岳環境等の厳しい環境で、人による補助がなくても長期的に運用可能な自律移動ロボットとその周辺システムを実現することが僕の野望です。


さ〜て、次回のお友達はー?

コモ:大変名残り惜しいのですが、終わりの時間がやってきてしまいました。最後は恒例の「お友達紹介」です。安達さん、どなたをご紹介していただけますでしょうか?

安達:大阪大学大学院基礎工学研究科助教、川節拓実先生にバトンをお渡ししたいです。お友達、というには恐れ多いのですが(笑)。

コモ:川節先生とはどういった繋がりが?

安達:僕が参加しているRoboCupSSLのチームの代表が川節先生だったんです。そこで繋がりができて、以来いろいろとお世話になっています。

当時RoboCupSSLに参加するのみだったScrambleが、今では「一般社団法人次世代ロボットエンジニア支援機構」として、大会のへの参加だけでなく、若手のロボット技術者育成の支援活動を幅広く手がけています。川節先生は現在その団体の代表理事を務めていらっしゃいます。

コモ:前々からじっくりお話を聞いてみたいと思っていた方のひとりなので、ご紹介いただけてとても嬉しいです。川節先生に何か伝言があればぜひ!

安達:ロボットコミュニティと言えばやはり、と思い紹介させて頂きました!Scrambleでの取り組みや展望についてお話し頂ければと思います!!

コモ:本日のゲストは安達波平さんでした。どうもありがとうございました!

皆様、次回もお楽しみに 😎
※これまでの「ロボっていいとも!」は、こちらからお読みいただけます!
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