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消費税は公平?なんのために必要?

○消費税は社会保障の財源?

 社会保障のための財源にあてるといわれて導入された消費税。1989年、3%からはじまり、1997年には5%、2014年には8%、2019年にはなんと10%になりました。さぞかし、社会保障が厚くなったかと思いきや、年金は減らされ、受給はどんどんうしろになり、介護保険料は上がったのに、支援や介護は受けにくくなり、いろいろなサービスが有料になったり、高くなったり、むしろ悪くなっていませんか?
 消費税は社会保障のための財源にあてると言われて導入されましたが、実際はそうなっていません。
 年金:国民年金保険料は増額、年金の受給額は減額、老齢年金の受給開始年齢は段階的に引き上げられています。例えば、2004年度時点で13,300円だった国民年金保険料は2021年度には16,610円まで引き上げられる一方、2004年度時点では66,208円だった老齢基礎年65,075円まで引き下げられています。(日本年金機構「国民年金保険料の変遷」、厚生労働省「令和2年版厚生労働白書」)。
 介護:介護保険料が値上げされた上、自己負担の利用料も値上げされ、支援や介護は受けにくくなっています。65歳以上の方が支払う保険料(全国平均)は、2000年度には月額2,911円でしたが、2021年度には月額6,014円と倍以上になっています。(厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」)

○消費税は法人税減税の穴埋めに使われている!

 消費税が高くなったのに、なぜ社会保障の状況は悪くなっているのでしょう?
 その答えは下のグラフをご覧ください。

財務省「一般会計税収の推移」

 消費税があがるたびに法人税はさがり、増税分は7割以上が法人税減税の穴埋めに使われているのです。(「消費税増税が招く大混乱 大企業優遇のための過酷な搾取」『長周新聞』)
 企業が海外にいくのは、日本では最低賃金の上昇率も小さく、消費購買力も低下の傾向が強いのに対して、海外には需要が、購買能力が、消費地があるからでもあります。法人税が下がっても、消費税があがるたびに購買力が小さくなる日本から海外への流れは加速しています。法人税減税は大企業を喜ばせるだけで、私たちにとっては消費税増税につながり、生活が苦しくなるだけなのです。(「海外進出成功のカギは?メリット・デメリット、企業の実例もチェック」『Help You』)
 さらに、 輸出大企業は、還付金などで巨額の戻し金を得ている一方、中小企業や小売店は価格に消費税を転嫁できなくても(実際に価格転嫁できないケースはたくさんあります)消費税を納めなければならないという事情があります。(「輸出大企業に消費税1.2兆円超還付 税率10%で1810億円増大」 『全国商工新聞』)
 輸出売り上げには0%という税率が適用されているため、輸出大企業は、消費税を1円も納税せず、還付金がもらえます。輸出企業が納める消費税の計算は、「売り上げにかかわる消費税(輸出売上高×0%)」から「仕入れ等に含まれているとされる消費税分」を差し引く仕組みなので、仕入れに含まれるとされる消費税分が還付金としてもらえることになるのです。2020年度1年間の消費税の還付金額の推計はトヨタ自動車だけで4,578億円、輸出大企業の還付金額上位10社の合計で1兆円を越えます。(「輸出大企業に消費税1.2兆円超還付 税率10%で1810億円増大」『全国商工新聞』)

○赤字で倒産しそうな企業や小売店にも納税義務があるのは消費税だけ

 税の中で取り立てが一番厳しいのが消費税。滞納が一番多いのも消費税。所得税や法人税は赤字の場合には収支が赤字でも支払い義務があるので、納税するお金がなく、やむなく滞納する事業者が多くなります。(「令和2年度租税滞納状況について(国税庁)」)
 さらに次のような問題があります。
買い物をするごとに税金が課されるので、消費が抑えられ、経済成長を阻害。
物価高騰の今、消費税分を下げることが消費者個人にも小売店や中小企業にも負担軽減となり、消費悪化を抑制できます。
・逆進性のある消費税は低所得者ほど負担が重くなる。
生活が苦しい世帯は全世帯の約6割、こどもの7人に1人が貧困、という現実の中で消費税の負担の重さは暮らしを圧迫しています。一世帯の年間収入に占める消費税負担額の割合は、年収250万円未満で11%を越え、年収250万~300万円で9.3%、300~350万円で8.2%にのぼる一方、年収900万円以上では5.0%以下となります。(「世帯年収別に見た消費税、所得税、社会保険料負担の実態(2019年)」)
消費税増税と合わせて賃金低下
消費税によって、派遣社員が増える仕組みについて職探しの「広告」から見えてくるので、紹介します。

わかりやすく言うと、給与は消費税の対象外なのに対して、外注費や委託費は課税対象だということです。もし、300万円の契約で派遣契約を結んだ場合、外注費は消費税8%なら324万円で、24万円も消費税を支払わなければならない計算になります。一見損に見えますが、納税額には控除があり、1人派遣社員を雇っただけで、会社全体の売り上げに対する納税額を減らせます。このカラクリがあることによって、直接雇用を止め、派遣社員を雇おうとする企業が増えることが考えられます。しかも、もしも300万円の契約に消費税を含んだ場合には、更に派遣先企業にとってのメリットが膨らむため、派遣会社が損を承知で契約を結ぶようなことが続くと、ますます派遣社員が増えることになります。(「派遣社員の給料には消費税がかかる?
派遣と消費税の関係とは
」『GROP]』)
※国税庁「「労働者派遣」に係る労働者派遣料」も参照。

○生活が苦しくはありませんか?

 厚生労働省の調査によれば、生活が「たいへん苦しい」「やや苦しい」と感じている人が5割を越えています。(不破雷蔵「5割台が「厳しい」意識…生活意識の変化をさぐる」)
 そこには理由があります。

  • 所得の中央値は、1995年 の545万円から2019年は 437万円と、約108万円ダウ ン!しかも、年収 400 万 円未満 の 世帯 が 45.8%を占めています。(厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」)

  • 2021年の平均貯蓄額は1880万円ですが、一方貯蓄ゼロの世帯が22%、単身世帯では33.2%と、大きな格差があります。(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」)

  • 赤字で倒産しそうなお店の経営者も食べる物 に困る人も、消費税は免除されません。

  • 消費税は大企業や高所得者層の負担を減らす 一方、低所得者層に重くのしかかります。

  • 年収300万~350万の場合、消費税は年間お よそ26万円、年収の約8%を占めます「世帯年収別に見た消費税、所得税、社会保険料負担の実態(2019年)」)。

  • 日本は約30年、実質賃金が上がっていません。 企業の節税のため派遣社員も増え、生活苦は さらに…

○消費税をどうする?

処方その1:財政再建のための消費税引き上げ

岸田首相は消費税の増税については語っていませんが、減税は明確に否定しています。(「消費税は安定財源、触ること考えていない=岸田首相」『REUTERS』)
経済同友会は「成長戦略の実行と財政再建の断行を求める」と、消費税率を19%まで引き上げる提言をしています。(「財政安定には消費税19% コロナ対策財源を視野に 経済同友会が提言」『中部経済新聞』、「「PB、2050年度も赤字のまま」 経済同友会試算」『朝日新聞』)
→大多数の国民はますます財布の紐を固くせざるをえなくなり、一部を除き、消費が落ち込む。貧困が悪化する、


処方その2:購買力上昇のためにも消費税は廃止、もしくは減税。

れいわ新選組は消費税廃止、日本共産党は消費税5%への引き下げ、立憲民主党は時限つきで消費税5%への引き下げ、日本維新の会は時限つきで消費税8%への引き下げを主張しています。
→収入は増えなくても、実際に使えるお金が増え、生活が今より楽になる。

○参考になる 本・HP・動画等
斎藤貴男『消費税のカラクリ』講談社現代新書
斎藤貴男『ちゃんとわかる消費税 』河出書房新社
富岡幸雄『消費税が国を滅ぼす』文春新書 (bunshun.jp)
財務省「税収に関する資料」
STOP!インボイス (stopinvoice.org)
「維新3人衆」発言のファクトチェック!!(その1)」ユナイトきょうとHP
法人税は下がって消費税を20%に!?【せやろがいおじさん】グッとラック!」(OA動画)  
くらしと政治を考えるこの1冊(第1回)斎藤貴男『ちゃんとわかる消費税』(河出文庫、2019年)」(動画)

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