見出し画像

タイムトラベルものの大傑作!『アンダー・ザ・ウォーター』

タイムトラベルものの傑作には、『バック・トゥザ・フューチャー』などあるが、それらに匹敵するレベルの傑作。映画のタイプは両極。
残念なのは邦題。「アンダー・ザ・ウォーター」…ひどいにも程がある。ほぼ内容に関係ない。一方、原題の『QEDA』もイマイチ。代案は意味が無いが、この映画をわかりにくいという人が多い理由に、この原題であり、主人公の役割『QEDA』をちゃんと説明していないことが挙げられる。なので、できればタイトルで、難しければイントロのところででも、チラッとでも説明しておけば良かった。本編でももちろん説明はあるが、あまりに一瞬すぎる&わかりにくい。これは見る前にもっと確実に周知しておくべきだろう。


QEDA=Quantum Entangled Divided Agentで、量子的に”entangled”もつれた・絡まった、のを、”divided”分離するエージェントということ。なんつー、難しい役割だろう。しかし、ここをちゃんと知って観れば一気におもしろい映画になると思う。この理論に基づいて、自分の分身が過去に行くことになる。これも斬新な設定。「評価は低いが、実は見たらかなり面白い!」ということが頻繁に起きている原因の多くは、やはりこのタイトル。

今は、あるのが当たり前だけど、十数年前は想像すらできなかったモノ、というモノはたくさんある。スマホとか。同様に、今は無いのが当たり前だけど、十数年前は当たり前にあったモノ、ものある。それが、もし水だったら、という話。
エンドロールの動物園のシーン、動物たちが妙に愛おしい。明日にでも動物園に行って見ておきたいと思ったほどだ。真水がないとはそういうこと。ラストに不満を感じた人は、「80年前から元の世界に戻った時どうなってんのか気になる!」、そこを描けというものだが、それをやったら無粋だと思う。面白い手品を観ていて最後に種明かしをして興醒めをするのに近い。とにかく変わったのだろう、多分。それでいい。胸の刺青が消えることで、元いた世界に何が起こったかを想像させるのだと思う。俳句の五七五…のわずかな言葉で世界をイメージさせるように、観る側の想像力に委ねられている。そう伝えたい監督の意図は娘とのシーンが多いことからも伺える。娘が大好きで助けたい、しかし、とんでもない結末になってしまった。その底知れない絶望、無力感をここから汲み取って欲しい。
自分はこの映画を『水のブレード・ランナー』と呼ぼう。ストーリーはこれで良い。足りないのは3つ。1つは、マトリクスやブレードランナーのような「象徴的な」シーンがいる。それだけでも予算はあと倍はいるかな。しかし、そんな「野菜そのものの旨味だけで美味しいのに、妙なブイヨン入れる」ような、ハリウッド映画的なことをしないのが北欧映画の良いところ。2つめは、「タイムマシンを作る技術があるのに、なぜ塩水から真水ができないの?!」と一般的な疑問に対しての回答もわかりやすく最初の方にあると良い。これは簡単。既に撮影してるのにカットしたのかもしれない。それができたら苦労しねーよ!という話から始まってるので、自分は端折って気にならないが、有名映画になるにはより裾野を広く、なので「より理解を助けて」あげる人が多いから。そして最後に、これほど絶望的なラストだと人に薦めにくい。首尾一貫した映画なので、ここを変えるとすべて変わる。しかし、伝説になって欲しいほど素晴らしい映画で、もっと評価され、観られるべき映画だと思う。

→『アンダー・ザ・ウォーター』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?