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会社とiDeCoで手に入る退職金。もらう時期を税務から考えるためのポイント。

こんにちは、経営者のための保険代理店ユナイトコンサルティングのnote担当です。

退職金をもらう機会が生涯に複数回あるという方もいらっしゃると思います。そうでなくてもiDeCoに加入し、個人で退職金を用意している方もいらっしゃるかもしれません。(iDeCoの一時金は退職所得扱い、年金受取は雑所得扱い)もし複数の退職所得があった場合、税務はどうなるのでしょうか?どのように受け取ることが有利なのでしょうか?

残念ながら、この方法が誰でも絶対有利という考え方はありません。しかし少しでもルールを知り、最悪を避けていくことは可能だと信じます。

まず一般的な話として、退職所得には退職所得控除があり、これが退職金が税務的に有利と言われるゆえんです。複数の退職所得がある場合、この退職所得の控除額が調整されます。今回は、この調整について紹介します。調整のイメージとしては、後の退職所得では勤続期間の重複期間分の控除がされなくなります。

なお、そもそもの退職所得の税務や、同じ年にもらう場合は過去の記事をご覧ください。 また、税務は2023年5月19日現在の内容を踏襲しています。
また、一般論として紹介しています。今回の記事でイメージをつかんでいただいて、個別的な内容は、税理士もしくは所管の税務署等へご相談ください。

■退職所得控除の調整がされる場合とされない場合

まず複数の退職金があってもすべてが調整されるわけではありません。それには条件があります。
退職所得控除の調整は、以下の2点に該当する場合に調整されると考えられます。

  • 勤続年数に重複期間がある

  • 会社からもらう退職金の場合は、「前年から4年以内」、iDeCoの場合には、「前年から19年以内」(2021年3月31日までは14年以内)に退職所得を受取っている。

重複した期間の控除額を、今回の退職所得控除額から減じます。これが調整のイメージです。たとえば、iDeCoの場合は前年から19年(今年を含めれば20年)です。iDeCoの受取年齢は最高75歳のため、55歳以降に退職所得があった場合にはiDeCoの退職所得は調整されます。

では実際にどのような調整されるのでしょうか。

■退職所得控除額の算出

まず基本的な退職所得控除の計算法を紹介します。

▼退職所得の控除額は勤続年数が長いほど控除額が大きくなります。

退職金には退職所得控除があり、さらに1/2したものが課税対象になります。

退職所得金額の計算は
課税退職所得金額=(退職金-退職所得控除額)×1/2 です。
退職所得控除の計算は以下の表です。

No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁 (nta.go.jp)

勤続年数が長いほど控除額が大きくなっていきます。なおiDeCoの勤続年数は加入期間です。

次に、調整についてです。
2つのパターンがあります。

▼先にもらった退職所得で控除額を使い切っている場合

前にもらった退職所得金額が、退職所得控除額を上回っていた場合です。言い換えると、退職所得の納税をした場合です。(源泉徴収されていて気づかないことやきっかり使い切っていることもあるかもしれません。)
この場合は、実際の重複した期間で控除額を算定します。では、計算の流れです。

1.勤務期間の重複期間を計算します。(年未満切捨て)

2.今計算した重複期間の退職所得控除額を計算します。 表は前出と同じものです。

No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁 (nta.go.jp)

3.今回の退職所得の退職所得控除額を計算します。 表は2.と同じものです。

4.上の 3から2を引きます。この額が今回の退職所得控除額です。 ここからさらに1/2したものが課税退職所得になります。

▼先にもらった退職所得で控除額を使い切っていない場合

前の退職金で控除額を使い切っていないと、いうことは、言い換えると、前の退職金額で控除額を使い切るための勤続年数は実際よりも短いはずです。 たとえば20年勤務(控除額800万円)で退職金600万円だと余りますが、15年だとちょうど使い切ります。よって15年ということで再計算しましょう、という趣旨です。では計算の流れです。

1.以下の表に基づいて前の退職金の勤続期間を算定します。(小数点以下切捨て)


No.2732 退職手当等に対する源泉徴収|国税庁 (nta.go.jp)


たとえば、前の退職所得の勤務開始が2000年1月。退職時期が2023年5月だった場合。前の退職金額が、
・500万円だった場合 500÷40=12.5 12年 2012年1月に勤務終了とする。
・1,000万円だった場合 (1,000万円-800万円)÷70+20≒22.8 22年 2022年1月に勤務終了とする。

2.今計算した場合の勤務期間と、今回退職所得を得るために勤務した期間の重複期間を割り出します。
たとえば、今回の勤務先が2010年5月勤務開始であれば、 上記の500万円の時は、1年9か月→1年 上記の1,000万円の時は、11年9か月→11年

3.今計算した重複期間の退職所得控除額を計算します。 表は前出と同じものです。

No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁 (nta.go.jp)

4.今回の退職所得の退職所得控除額を計算します。 3.の表を利用します。

5.4から3を引きます。この額が今回の退職所得控除額です。 ここからさらに1/2したものが課税退職所得になります。

いずれの場合でも、重複期間が短いほど退職所得控除は多くなります。(上限あり)
また、退職所得の税額は、以上の計算で課税退職金額を出して決定していきます。今回は割愛しますが気になる方は、経営者の資産形成に退職金は欠かせない?その理由は税務にアリ!をご覧ください。

■iDeCoは退職所得控除がなくなるから意味がない?

iDeCoは、退職所得控除が使えなくなるから意味がないのでは?という見方があります。確かに控除が調整されてしまいますので意味がないこともあります。しかし考えていただきたいのは以下のような点です。(今回の退職所得としての考え方のみです。運用結果などほかの要素は考慮していません。)

  • 控除額が0になる(一切控除されない)とは限らない。

  • 仮に0になっても、原則受取金額は1/2が課税対象になる。

  • 控除は重複期間が少なくなるほど増える。これは前の退職金額が少ない、または退職金額を受取る期間が離れているほど控除される。

  • iDeCoは退職所得を得る時期を選択できるため、先に、またはなるべく後に手に入れる。

  • 年金でもらう方法もある。

いろいろの論点があり、複雑です。誰にとっても有利・不利だというものはありません。意味がないかどうかを個々人で判断されることをお勧めします。仮に意味がないのだとしても、もしすでに始めていらっしゃる場合には、受取時に少しでもご自身にとって有利な方法を選択していただければと思います。

■控除額の計算が変更される可能性

制度のルールは日々変わっていきます。 たとえば、iDeCoでは、受取最高年齢も75歳に延長され、併せて退職所得控除の調整は14年から19年に変わりました。年金資産に関する特別法人税が凍結されていますが、復活することもあるかもしれません。 また退職金では、役員の場合に5年以内の勤続での退職金には1/2がされないというルールが追加されました。さらに現政権は、退職金の控除を減らそうとしているとの話もあります。
何かの制度を利用する場合、特に長期になればなるほどリスクは存在します。しかしリスクがある分、その時に考えられる対策をしておくことで大きなプラスになる可能性もあります。終わりは事前に想定しつつも、その時の状況やルールに合わせて良さそうなものを選んでいくことも管理する上で重要かと思います。


■まとめ

退職所得をもらうタイミングを税務から考える場合のポイントをまとめます。

  • 控除額は勤続期間に重複期間がある場合に調整される。

  • 重複期間が少ないほど、調整はかからなくなる。

  • 調整で控除額が0になるとは限らない。

今回は、退職所得の税務、とりわけ退職所得控除について紹介しました。しかし考えるべき点は税務面からだけではありません。タイミングが選べない場合には受け取り方を変える、iDeCoでは運用の状況、また税金額よりも現在の資金需要など、選択する際の関係性は複雑です。 最善の組み合わせは非常に難しいですが、一側面だけでも最悪を避けていくことは可能だと思いますので、こうした知識をご自身の選択にお役立ていただければと思います。

また企業での退職金や資産形成に、保険を利用するという方法もあります。もしご興味ございましたら、以下にご連絡ください。

最後までご覧いただきありがとうございました。


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■参考

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▼株式会社ユナイトコンサルティングnote