Second Pain-1

私わたしは金藤こんどう 実花沙みかさ。

元もと渇望かつぼうの女神めがみクレヴィーナスでもある。

これはクレヴィングが解散かいさんしてから約4ヶ月やくよんかげつを過すぎようとしたその時ときだった。

みんなは何なにをしているんだろう。

私わたしは何なにをしているんだろう。

…、

これは私わたしとみんなが出会であって一致いっち団結だんけつして、新あらたな道みちを見みつけるまでの物語ものがたり。

…、

奈落街道ならくかいどうにて。

花都はなみやこ 美彩みいろ「〜♪」

チャリンチャリン！

花都はなみやこ 美彩みいろ「お賽銭さいせんありがとうございます！」

花都はなみやこ 美彩みいろ。

クレヴィングの元もと副ふくリーダーアグリアスの本当ほんとうの姿すがた。

彼女かのじょも私わたしと同おなじくエメラルドボホープを退社たいしゃした。ほぼ同どう時期じきに。

彼女かのじょは転職てんしょくせずに吟遊詩人ぎんゆうしじんとして生いきている。

…それに比くらべて私わたしは…。

…、何なにをしているんだろう。

…ここは人間都にんげんとの北区きたく。

退職たいしょくしてから実家じっかに戻もどって生活せいかつしている。

金藤こんどう 実花沙みかさ「…じゃあ、税務署ぜいむしょに行いくか…」

私わたしは交通機関こうつうきかんを使つかって税務署ぜいむしょに向むかった。

…、あれ、誰だれも案内あんないする人ひとがいない。

私わたしは早速さっそくあちこちうろちょろしていた。

…職員しょくいんも誰だれも案内あんないしようとしない。

…歩あるいて5分ふんくらい、やっと受付うけつけ窓口まどぐちを見みつけた。

本当ほんとうにわかりづらい。

必要事項ひつようじこうの記入用紙きにゅうようしを渡わたされたけど、職員しょくいんの態度たいどがイマイチだ。

モヤモヤしながら紙かみを書かいて提出ていしゅつし、呼よばれるまで待機たいき。

…、

月つきノ宮みや 奏那他そなた「次つぎの方かた〜」

…！

綺麗きれいなお姉ねえさんに呼よばれた。

早速さっそく別室べっしつに案内あんないされた。

この人ひとも素そっ気けない人ひとだったらどうしようと正直しょうじき警戒けいかいしている。

月つきノ宮みや 奏那他そなた「あ、お待またせしております…」
金藤こんどう 実花沙みかさ「本人ほんにん確認かくにん手続てつづきお願ねがいいたします」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「あ、は、はい」

お姉ねえさんはパソコンをカタカタしていく。

月つきノ宮みや 奏那他そなた「じゃあ、明日あしたからこれで」
金藤こんどう 実花沙みかさ「すみません、窓口まどぐちの場所ばしょわかりづらかったです。別べつの職員しょくいんの方かたに場所ばしょ聞きこうとしたら逃にげられちゃいました。困こまっている人ひとを放置ほうちする職員しょくいんさんが多おおいのはなぜでしょう？公務員こうむいんとはいえ偉えらそうにするのも大概たいがいにしていただきたいのですが」

あ！私わたしの馬鹿ばか！本音ほんねをすぐに言いう悪癖あくへきが…！！

月つきノ宮みや 奏那他そなた「あ、そ、その…、ごめんなさい！！ど、どうしてもえ、偉えらそうにみ、見みえちゃいますよね…、ごめんなさい…」

ひっ！頭あたまを何回なんかいも下さげてきた！？

金藤こんどう 実花沙みかさ「あ、いえいえ！こちらこそすみません！！」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「いえいえ！お手数てすうおかけして…、す、す、すみません！」
金藤こんどう 実花沙みかさ「わわっ、ごめんなさい生意気なまいきなことを…」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「いえいえ、き、貴重きちょうな、そ、そのご意見いけん、あ、ありがとう…ご、ございます…！公務員こうむいんってどうしても偉えらそうな人ひと多おおくなりがちで…。なんか色々いろいろとわかりづらいですよね…。税ぜいのルールって本当ほんとうに複雑ふくざつなのに不快ふかいな思おもいさせちゃって…」
金藤こんどう 実花沙みかさ「そ、そんな…！確たしかにルールとかは色々いろいろとわかりづらいですし、そんな高圧的こうあつてきな態度たいどだと聞ききづらいです。せっかくルールを守まもろうとしているのに」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「それはありがたいです！わからないことは勇気ゆうきを持もって問とい合あわせてくださってるのに何なにから何なにまで嫌いやな気持きもちにさせちゃって税務署ぜいむしょの職員しょくいんとして反省はんせいです…。」
金藤こんどう 実花沙みかさ「あ、いや、そんな！お姉ねえさんは何なにも悪わるくないですから！！」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「ありがとうございます…。あっ、ち、ちなみに逃にげちゃった人ひとのお名前なまえとかって把握はあく…」
金藤こんどう 実花沙みかさ「できませんでした。すごいスピードでしたね」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「そ、そうでしたか…、あ、私わたし、月つきノ宮みや 奏那他そなたってい、言いいます…！公務員こうむいんになってからえ、えっと…、8年ねん目めです。そ、その…、今年度こんねんど異動いどうしたばかりで不慣ふなれなところもありますが、そ、その、こ、これからもよろしくお願ねがいします！！！」

き、急きゅうに自己紹介じこしょうかいしてきた？！

しかもすごいシャイそうな人ひとだけど！？

金藤こんどう 実花沙みかさ「改あらためまして金藤こんどう 実花沙みかさと申もうします。この度たび、突然とつぜんの苦情くじょう、お詫わび申もうし上あげます」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「いえいえ！ご丁寧ていねいにありがとうございます…！！こ、このことは上長じょうちょうに打うち上あげて相談そうだんしておきますね！今日きょうはすみませんでした…！！」
金藤こんどう 実花沙みかさ「いえいえ！」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「そ、その…、わからないことがあったら…、わ、私わたしでよければ…！税理士ぜいりしの資格しかくも、あ、ありますので！」
金藤こんどう 実花沙みかさ「税理士ぜいりしの資格しかく…！はい！またお姉ねえさんにお願ねがいしたいです」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「は、はい！！」
金藤こんどう 実花沙みかさ「では、本日ほんじつはありがとうございました」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「こ、こここ、こちらこそありがとうございました！！」

…、

すごい丁寧ていねいなお姉ねえさんだった。

とゆーか言葉ことばには気きをつけろ、もっと大人おとなになれ！

金藤こんどう 実花沙みかさ！！！

…おや？

…ヒソヒソ…。

月つきノ宮みや 奏那他そなた「！？」
金藤こんどう 実花沙みかさ「あ…」
職員しょくいんAエー「月つきノ宮みやさん、今日きょうもウジウジしててうざー」
職員しょくいんBビー「よく公務員こうむいん続つづけられるよね〜」
職員しょくいんAエー「まぁ、高学歴こうがくれきだからすぐ採用さいようされたんでしょ」
職員しょくいんBビー「エコ贔屓ひいきってやつ？うざー」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「！！！」

職員しょくいんと思おもわれる女性じょせい同士どうしがヒソヒソ話はなしてる…？2人ふたりの年齢ねんれいは多分たぶん40代だいくらい。

恐おそらく月つきノ宮みやというお姉ねえさんのことについてだろう。

せっかく帰かえろうとしたのにますますムカついてきた。

月つきノ宮みや 奏那他そなた「あ、あぁ…」
金藤こんどう 実花沙みかさ「ちょっと！！！別室べっしつだからといってヒソヒソ話はなさないでください！聞きこえてますよ！！」
職員しょくいんAエー「え？あなたには関係かんけい」
金藤こんどう 実花沙みかさ「ないです！でも気持きもち悪わるい！！このお姉ねえさんと何なにがあったのかは知しりませんが、そんな大人気おとなげないことはやめていただきたい！！それにサボるな！！！」
職員しょくいんBビー「えー？あなた…、何なに様さま？」
金藤こんどう 実花沙みかさ「何なに様さまでもないです！！ただの利用者りようしゃです！」
職員しょくいんBビー「あなた、職業しょくぎょうは？」
金藤こんどう 実花沙みかさ「無職むしょくですけど！？転活てんかつしてるところですが！！！」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「（なんてこんなに強つよい子こなんだろう…）」
職員しょくいんBビー「へ〜」
職員しょくいんAエー「あはは！無職むしょくか〜！！！」
金藤こんどう 実花沙みかさ「わたくしのことを嘲あざ笑わらうのはいいです！でも他ほかの方かたに失礼しつれいですよ！！！」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「は、はわわ…！！」
利用者りようしゃAエー「なんだなんだ？」
利用者りようしゃBビー「喧嘩けんかかー？」

おや、他ほかの利用者りようしゃたちがジロジロ見みてるようだな。

さすがにやりすぎたか…。

職員しょくいんAエー「くっ…！」
職員しょくいんBビー「一旦いったん引ひき上あげるよ…！！」

ヒソヒソとお姉ねえさんの陰口かげぐち叩たたいてた愚おろかな女性じょせいたちはどっかに消きえた。

金藤こんどう 実花沙みかさ「声こえを荒あらげて申もうし訳わけございませんでした、お姉ねえさん」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「あ、いえ！そ、そんな、あ、あ、ありがとう…ございます…！！！あ、あの…、ご、ごめんなさい！！気分きぶん悪わるくしちゃって…」
金藤こんどう 実花沙みかさ「そんなことは一切いっさいございません。わたくし、訴うったえられちゃうんですかね…」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「あ、そ、それさすがにないです！！むしろ私わたしのせいで…」
金藤こんどう 実花沙みかさ「いいえ、お姉ねえさんのせいではないです。公務員こうむいんでもそんなことするんだ…」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「ま、巻まき込こんじゃってごめんなさい…。何なにから何なにまで本当ほんとうに不快ふかいな思おもいさせちゃって…」
金藤こんどう 実花沙みかさ「…いえ。…お姉ねえさん、ご無理むりだけはなさらないでください。それとさっきのことも上長じょうちょうにご報告ほうこくお願ねがい申もうし上あげます」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「は、はい…！！お伝つたえします！！この度たびは大変たいへん申もうし訳わけございませんでした…！！！」
金藤こんどう 実花沙みかさ「とんでもございません。お姉ねえさんはメンタルを大切たいせつになさってください。では、わたくしはこれで」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「あ、ま、待まって…！！！こ、これ…」
金藤こんどう 実花沙みかさ「…？」

おや、手作てづくりのお菓子かしと連絡れんらく先さきが書かかれた名刺めいしサイズのプロフィールカード…！？

月つきノ宮みや 奏那他そなた「こ、ここだけのお話はなしです。ま、また何なにかお困こまりごとがあれば…、ど、どうぞ…！！」
金藤こんどう 実花沙みかさ「いいんですか！？」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「は、はい！今日きょうのお礼れいです…！！！やり方かたとかわからなければお力ちからになりたい…、の、で！！」
金藤こんどう 実花沙みかさ「ありがとうございます！では」
月つきノ宮みや 奏那他そなた「は、はい！今度こんどこそありがとうございました！！」

…月つきノ宮みやさん…、大丈夫だいじょうぶかな…。

月つきノ宮みや 奏那他そなた「（すごい丁寧ていねいで勇敢ゆうかんな子こ…。私わたしもああなりたいけどな…。今日きょうのことはさすがに伯父おじちゃんに言いわないと…！）」