見出し画像

60歳からは「小さくする」暮らし

生き方がラクになる 60歳からは「小さくする」暮らし
藤野嘉子・講談社文庫
---

人生の先輩方の生活についての御本をあれこれ読んでる日々ですが、今後について具体的に考えた際に
「生活のスケールダウン」
て結構リアルな話だと思うんですよね。持ち物だったり、空間だったり。

わたし、埼玉の東京寄りのあたりで44歳一人暮らし女性、なんですが、住まいは広いほうがいいなって基準で選んでいるので、おおよそ40平米前後の2DKでなかなかゆったり生活をしているんですよ。ファミリー向けの賃貸をひとりで使って暮らしてる、て感じです。
おかげさまで全然不便はないんですけれど、さてここまでの広さってもっと年取っても必要かしらね?とは今の歳からでもちょっと思ってまして、本の電子化移行もそうなんですけれど、持ち物の「現物」は極力減らしていきたいところだよなあ、て日々試行錯誤しているところなんですね。そんな中で本屋さんで表紙を見かけて「おっ」て思ったのが今回の本。ジャンルは随筆…になるのかな?

著者さんは現在60代半ばの料理研究家の女性。
老後は持ち家での生活を、と思っていたら、旦那さん(料理人)から生活の見直しの提案が出て、150平米の持ち家から65平米の賃貸に住まいを移ることになり…という話し出しです。元々のお住いには何の不便も無かったそうで、当初は半分以下の広さの中に生活が移ることに抵抗も感じたそうなのですが、これをきっかけに大幅に持ち物や家具を減らし、いろんなことから「解放」されたとのことなんですね。
いいねいいね、そういうの読みたかったの!と、ページを開いたら一気に読み進められました。200ページ足らずで、文庫ですが文字も大きめで写真もたくさんあり、すいすい読めちゃいます。

元々、この本の内容の住まい移転は「働き方改革」やお手持ちの「店(資産)の整理」のあとに着手した部分のようなのですが、先の2点もさらっと冒頭に書かれていることですが「よく思いきれたな…」て内容です。かなりガラッと変えられてますね。
元の生活には、「実はこういった点が気になってはいた」が細かく多くあったそうで、メンテを考えると「なるほどな」という切替の説得力。
お家をすでに持っているのに賃貸にして大丈夫か?という不安は当然あったようですが、「だからこそ変えるんだ」という選択肢を取ったとのことです。なかなか出来ることではないとは思うのですが、旦那さんはもちろん、お子さんとも丁寧にお話なさった模様ですね。文章がすごくさっぱりしているので、実際は読み口ほどはすらすらと進まなかった部分も多いと思うのですが、これ読んでると「なんかいいことずくめだな」と思えて、著者さんの今の生活、すごく充実しておいでなのかなと思えます。

新しいお住いに移る際に、ご夫婦のみならず著者さんのお母さんもご一緒だったそうなのですが、そのお母さんが持ち物を減らすのに難儀したようです。ご本人も最初はなかなか難航していた様子でしたが、途中からすいすい整理が進んだそうで、これはお片付けとか断捨離あるあるですね。どうしても見直しをしないといけなくなるタイミングって各々にあるものだと思うのですが、歳をとるとそれが辛くなる旨も説明が入っていて、
「やらなきゃなとは思いつつもなかなか踏ん切りがつかない」
て人には非常に参考になる記述も多いのではないでしょうか。
どういったものを捨ててどういったものを残したのかも、理由とともにかなり細かく記述がありまして、ここは個人の職業や需要にもよると思うのですが、リストを作って「なにもかも一新したわけじゃない」点も具体的です。

本の巻末には「本文にはこう書いたけど、その後結局こうなった」という文庫版あとがきもあるのですが、それらも結局自分で実際に生活をしてみて、経験をしないと実感には変わらない部分だもんなあ、と思います。どんだけ好みだったり想像したりしても、生活の空間て実際の生活をしないと思ったようにならないですよね。一時的には良くても季節一巡りしてみないと、夏は良くても冬はだめだったー、とか。そこも面白いところではありますが、最初からガチガチにするのではなく変化を愉しむ姿勢がいいなと感じます。

わたしみたいにすべてを好き勝手出来る一人住まいはこういう点はラクなものですが、著者さんのように親御さん、旦那さん、お子さんや先々のお孫さんらとの関係なども視野に入ると、優先順位て判断つけるの難しくなっちゃいますよね。ほかをすべて捨てろとは言わないですが、そこはやっぱり自分についてをベースにして、ふわふわしている点は一度本腰入れて考えることが必要だったりもするんじゃないでしょうか。著者さんすごいよ。引っ越したら走り始めたりしてるよ。その記述の中で
「まずは自分の人生を自分で作ること」
とあって。うん、見習いたいな。途中での調整はあるだろうけれど、早めに構築しておきたいよね。

このお引越で勢いがついたのか、著者さん、今からさらに
・お母様が亡くなったあと
・旦那さまが亡くなったあと
で、それぞれ引っ越しをすることになるだろう、と予測も立ててらして、もちろんお手間ではあるんだろうけれど、やはり生活や年齢に応じた生活のダウンサイズて大事なことなんだな、と、先輩のご意見を旨に留めておきたいなと思います。また、料理家の本領発揮で、手軽に作れて栄養バランスもよろしいお料理のレシピも掲載されています。シニアの食生活は量の準備が不要なので、道具もストックも絞れるのね。なるほどね。

家や持ち物のことだけではなく、家族との距離感だったり自分との向き合い方だったり、多方面で勉強になる先輩のお言葉本でした。
似たようなことが気になっている人はぜひぜひ。

この記事が参加している募集

読書感想文

いただけたサポートは9割5分以上の確率で本に化けます。使い切ってみせる…!!