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いつも心に牛糞を

いつ頃からだっただろうか
おそらく、学生だった時分に言い出したことだったと思う。
なにか、腹が立つことややりきれないことがあったりむしゃくしゃしたりして心がどうしようもなくなるようなときに、頭の中で呟く言葉がある。

時にははげしく、ときには絞り出すように、わたしは脳内で呟く。
もちろん叫ぶ時もある(脳内で)

こんなふうに…

\ 牛糞なげんぞコノヤロウ!! /


牛糞。
牛の糞だ。

投げるイメージは花咲爺さん。つかんでは投げ!つかんでは投げ!である。違うのは、手に携えた籠ではなく、うずたかく積まれた、もしくはその辺に落っこってる(といっても積まれた感じになっているけど)モノを掴み取っては投げ!掴み取っては投げ!!するあたりである。カゴに入れて持つと重いんだもん…牛糞てけっこう水分あってじゅっぽりしてるから。

軽度な時なら堆肥塚の上にあるような乾燥してるのをポイポイ!って投げつけて終わりにしますが、そうでもないときはそんなもんじゃ済ませません当然。なんなら、フォークで投げます。フォークと言っても「農業フォーク」ってやつです。映画やアニメで農場の干し草に刺さってるアレです。でかいです。あれで本気で刺したら人が死にそうなサイズですから牛糞もけっこうとれますし、飛びます。わたしの手も体も汚れない安心感もあります。手投げですとどうしても自分も汚れますからね、牛糞。でも、フォークなら多少水分が落ちるのでまだまだ親切なんです。

その上位互換があります。スコップで投げます。それも、先が真っ直ぐで地面からちゃんと掬えるようになってるでっかいスコップです。当然、水分もゴシャァーッとすくいとれます。牛舎の床から。まったく親切じゃないです。慣れないと逆に柄の方に垂れてきてぎゃーってなりますが、こちらは練習済み、技術取得済みです。やろうと思えばわざと水分多めにバッシャー!ッと行けます。そこそこ爽快です。脳内だったら、後片付けもしないですみますしね。乾⇄湿⇄潤⇄液 この、バリエーションの豊富さが、そして適度にこびりついて、臭くて嫌なあたり!しっかりついてしまうとお風呂に入っても2、3日はほんのり香る酪酸臭というか牛くささも牛糞の魅力。脳内で投げつけるための最強ツールです、牛糞。


脳内牛糞の調達

と、いうわけで常時牛糞需要が見込まれているわたしの心の中にはいつもひとつの異空間―安全なアイテムボックスで牛糞がたくさんある汚い農場が保存されています。脳内での呼称は「牛糞農場」。そう、脳内牛糞は完全脳内生産脳内消費でエコ兵器。糞のみを武器として求められている我が農場の牛たちなので、ここの牛さんたちは皆大人です。バッキバキの成牛。ちょっと年増気味。なのでちゃんとくっさいビッチャビチャのうんこを大量生産してくれます。優秀な糞牛たちを飼っている設定です。そう、「牛糞投げるぞコノヤロウ!」とおもうたびに異空間の牛糞農場の扉が開き、その瞬間に投げつけるための牛糞バリエーションの全てがそこにReady to throw!!というわけです。牛さんたちの性格はちょいワルなので、農場主の憤りを察していい声でブモオオオオォォォォォ!!!と鳴きながら新鮮な武器を提供してくれたりします。その、やっちまいな!の掛け声を励みに、わたしは瞬時に適切な牛糞投げセットを妄想し、準備し、思うがままに投げつけるのです!!

くそ!テメェ!!!牛糞なげんぞコノヤロウ!!
ブモオオオオォォォォォ!!!

適度に牧歌的、適度に好戦的。
この農場を創業した自分をときどきめっちゃ褒めまくりたくなります。


牛糞バリエーションあれこれ

牛糞にはいろいろありますので、それらをきちんと使い分けしています。
この豊富さが牛糞の良いところなので、ちょっと熱く語ってみます

1.乾燥牛糞

古かたりして乾燥している牛糞だと、飛びません。
当てるほどではないけど、なんか投げたいときには有効です。
相手に見えないし。

カジュアルに、はい牛糞決定ー!はい投げとこー、ぽいぽい!ってよくしてます。お浄めの塩をまくくらいの気分なのかもしれません。欲しかった肉まんを目の前で最後の一個を買われた程度の時にちょっとしてます。あー、まじか。牛糞投げとこ。ぽぽいー!って感じです。


2.ちょっと古い牛糞

よく飛びます。

ちょっとくらい牛糞あびろ!でも、どうせあんまり当たらないしぱっぱってすれば落ちる程度だから…ごめん…でも投げる!ってときにちょうどいいです。

向こうだってむこうには見えないし。元々ボール投げ超下手なのもあり、あんまり当てないようにはしてるんですけど、背中にヒットした!とか思えるような投げ方ができることがあります。一瞬張り付いてぽろっと落ちますが、ちょこっとついてしまいます。拭いたりつまみ洗いしなければ電車には乗れません。その時に申し訳なく思わない程度にムカついた時に乾燥からこっちにグレードアップします。いや、脳内なんですけど。嫌なこと、でも痛いとこつかれたようなことを言われた時なんかにやってるかもしれません。


3.新鮮な牛糞

よく飛びます。しかし、手にもつきます。

空想上でも、手につくのはあんまり嬉しくありません。牛糞だまりに手を突っ込むのも躊躇します。それでもなげつけてやりたい!べっちゃべちゃの牛糞味わえ!くらいの気分の時に最高です。あんたには牛糞がお似合いよ!!クソクラエ!!なので、かなり怒りは深いです。

公衆の面前で軽く侮辱された時や説明したのに理解せずに誤解曲解のまま実行されてこっちのせいにされたときなどに多用しています。小さな量を多数投げつけたいときはコレですね。向こうには見えないし、洗う必要もないからね。でも、わたしの鼻にはやつに染み付いた牛糞臭がかぎとれますので、きちんとクソを喰らわせることはできているのです。Got it! こっちも汚いもん触ってまで投げてんだわかってやってんだゴルァ感もまたいいです。言いがかりつけられて説教されたりしてるときはにこにこしながら頭の上につむ、なんてこともしてたりします。乾燥してないぶんだけ、たくさん積めますし、汁も垂れてきていい感じです。はいはいそろそろやめないとお口に糞汁入っちゃうよー?です。


4.フォークで投げる牛糞

めっちゃとぶし、けっこうたくさんいけます。

フォークの利点は、距離です。そこそこ飛びます。うまく使えば手投げより飛びます。フンの山にザクッと刺して、遠心力をうまく使ってエイ!!って投げるのです。牛の糞は草食動物が故に繊維質が多いのでそんなんでもけっこう取れるのですが、投げるにはコツが要ります。全身を使います。下手なやり方をすると腰を痛めます。飛ばす時に、周囲に糞汁が飛ぶエフェクトもつきます。派手です。しかもちょっと広がってかかるので、命中したら全身汚染です。オイシイ。脳内なので、周囲は汚れませんし、腰も望まなければ痛めません。なんなら、思いっきりブンブン投げて、腰が痛くなるほどやった!と感じるのもそれはそれでオツなものです。脳内農場なので、追いかけても農場がついてきてくれます。いいスイングをしたら牛たちの声援をもらえるかもしれませんブモォ。いくらでも追いかけて牛糞で埋めることも可能でしょう。頭の上からドバーっと直がけなんてこともできます。人間の想像力は無限大、無限のパワーを秘めているので、諦めなければなんだってできるのです。そう、嫌なあいつを牛糞で頭まで埋めても普通に彼らは生還します。だって脳内なんだもん。やーいやーい!うんこ人間にしてやったぞー!!とか思ってもいいんです。脳内だし。割と気軽に使いますけど、1回投げて届かなくても「投げてやったぜー」だけで気分がかなりすっとしたりするので、一番費用対効果が高い気がしています。


5.スコップで投げる牛糞

とびません。そんなに量はいけません。

でも、液体が使えます。液体はえげつないです。糞汁だけでなく尿も込みなのでかなり臭いです。フォークを使って埋めた後に頭からかけるとか、そういう陰湿な手段に使えます。近距離から投げつけるのもいいですし、なんなら脳内の利点を最大限に利用して、「不思議なうんこ汁風船」を作ってスコップや投石器に乗せてジャイアントスイングするのもいいでしょう。最終兵器としての価値は膨大です。どうせなら、虫とかハエとかもトッピングで追加してもいいでしょう。ナイスミクスチャーができたら投擲準備!!というのもなかなかイカいます。人間の想像力は常勝すら可能にする魔法の世界なのですから。頭上までうんこで埋めた上にじわじわたくさん糞汁をかけるの刑は人生で数回施行したことがあります。無責任に職員全員を毎日のようにAM1−2時まで残業させていた某先輩とか、年齢的にやばい時期に婚約してた相手が多股かけて近所で他の女と半同棲してたうえに借金大王だったことが判明したときとか、その同棲相手に因縁つけられたときとか、当時の彼氏に頭のすぐ横あたりの壁を殴られて脅されたとかそういうやつです。牛糞汁漬け完了した相手のリストを思い返すと自分の人生の大事件が思い返されます……あ、思い出すだけで腹立つからまた牛糞汁ボンバーしとこ。ポチ。こいつらには脳内にボタンポチで牛糞爆弾を飛ばせるように設定してるので。ボタンポチ、牛糞どーん!! はい再封印バンっ!! です。じつはこれが、すんごく、便利。


牛糞農場のある暮らし

人間の時間や脳の処理能力は有限です。1日は24時間しかないし、その24時間で考え/感じられることには限界があるからです。それを、一番無駄に奪ってしまうものってなんでしょう。いや、スマホゲームとかいう答えも多分正解なのですけど、おそらく『他人や出来事に対する負の感情の処理』なんじゃないかと、思うのです。

終わってしまった恋愛についていつまでも引きずってウジウジしてしまう、とか前職の上司の最低行動が忘れられなくて現職でも疑心暗鬼になってしまう、とか、上記のわたしの場合あのクソ男について考えてしまうとか、そういうのって、なんの得もなく、さらには「過去の嫌だったことを繰り返し詳細に思い出すことによる記憶の強化」をしてしまうことになってしまいます。あんな男のことは、事実を箇条書きにして心の奥に注意事項や事実記録みたいな形で置いておくだけで充分……十二分で、日常に思い出すことにはデメリットが大きくなんのメリットもありません。有限な時間で楽しく気持ちよく生きていきたいのであれば、自分の時間や環境を極力楽しく、気持ちいいもので満たしていかなければならないのですから。だから、そこで、満を辞しての牛糞農場の創業です!!!


牛糞農場があれば、さっきみたいに

「思い出した! でもこれ牛糞案件!」 \牛糞農場召喚!!/  ポチ‼︎

はい、牛糞埋め完了♪ 封印⭐︎

ってできるのです。
これでまた、わたしの心の平和な世界は守られました。牛糞案件は牛糞農場を召喚して牛糞に漬けていずれ堆肥になって消え去る時まで再封印を繰り返すだけでいいのです。それ以上構う必要なんて、ないんです。それに堆肥、殺菌もできる偉い子だし。匂いもうまく発酵したらだんだん消えるんだよ、堆肥。そのころには、フルフラットな気分でそんなこともあったよね、って笑えるようになってるはずだしさ。そうやって、強力な心の栄養に醸せる日まで、ひたすら牛糞埋めをくりかえしていけばいいのです。

きみたちへ

ぽんちゃん、ぽこちゃん
君たちは、学校が楽しいかい?

楽しいならそれでいいんだけど、かーさんは、学校がダメだったんだ。死にたいと何度も思ったくらいに、辛い場所だった。

成績は良かったし勉強するのは好きだけど、周りの子たちと話が通じないし楽しいこともみんなと違ったから楽しくおしゃべりとかあんまりできなかったし、虚弱児だったので休みがちだったしで、お友達もあまりできないばかりかいじめまで受けてしまっていたんだよ。

でもね、それはそれ。今でも集団の人間は苦手だけど、というより苦手な人は多いけど、それって全部、「あの時のアレが、あのときのだれが原因で…」ってよりも、自分の心の構造によるものな部分が多いんだよ。自分はそういう「性質」をもっているっていうだけで、「いい」でも「わるい」でもない。その性質の扱い方を間違えちゃうと「性格」や「人格」を毀損してしまうようなことになりかねないんだけど、持って生まれた性質がそうなってる、それだけのことなんだ。言ってしまえば、そういうもんだと思って「対処」していくしかないモノな場合が多い、ともいえる。

だからね、だれからも好かれて、だれからも愛されて嫌われないのは無理なんだ

だって君たちだって、音楽の好き嫌いはあるでしょ?楽しく聴けるもの、意味がわからないもの、怖くて嫌なもの、あるよね?でも、それはそのままで構わない。でも、君たちが怖くて嫌と思っているそれこそ最高にカッコ良くて楽しいと思っている人たちもいる。その人たちもそのままで構わない。それと同じで、だれをも好きになることは難しいことだし、そんなことする必要なんて全くないんだ。

全ての音楽を好きになるためにはまず色々と知って、やって面白みを理解しなければならないように、全てを好きになるためには膨大な経験と知識と学習が必要になってくる。むずかしいよね。そして、とっても時間と労力がかかる。だから、みんなしない。だけどそのかわりに、人を認めて受け入れるようになる。好きでも嫌いでも嫌でも、受け入れる。存在を許すようになるんだ。もちろん、つきあいの距離感は苦手なら遠くなるだろうけれど、それは自由にしていいところだ。

きみたちはまだ若い。生まれてからそんなにたってないほやほやの魂を持って生きているんだから当然なんだけど、生まれてから今までに出会った人の数はまだまだ少ないし、大好きな人に囲まれて小さい時を過ごして、ちょっとずつ色々を知って大きくなってきているところだよね。だからね、苦手や嫌いに慣れていかないといけないんだ、これから。それはちょっと大変なことだ。だからね、君たちももっちゃえ「牛糞農場」を! かーさんみたいには牛の世話をしたことがないのであれば、馬糞農場だって、猫糞トイレだって構わない。お気に入りのうんこを考え出して、作ってさ、いつでも取り出せるようにしちゃってさ


うんこ、投げちゃえ。クソ食らわせちゃえ。
\わーい!くそくらえー!/


それで一旦スッキリさせておいとくの。必要以上に考えない。だってさ、きみたちがその子に牛糞投げてるのなんてその子には言わない限り永遠にわからないように、その子たちが考えていることも君たちには永遠にわからないんだよ。「こう思われたかな?」って考えるのは必要なことでもあるけれど、ちょっと、ほんのちょっとでいいんだ。

かなしいきもちにさせちゃったかな?っておもったら、じゃあこうしよう、これは良くなかったかもしれない!ここで終わりで充分だし、嫌なこと言われた!って思ったら、わたしがこういうこと言っちゃったからかな?って、次は気をつけよう、って思って、でも嫌だったから牛糞ぽいぽい!で、終わり!それで十分なんだよ。んで、次のときに仲良く遊べれば、それでいいの。そうやってちょっとづつ良くなっていければはなまる大成功だ。そのときに、牛糞投げちゃってごめん、って心の中で思えば、それもそれで大団円。完璧オッケーだよ。だって、バレてないし、ね。積極的に使って行こうよ、牛糞。かーさんは、それでいいと思ってるし、牛糞兵器の威力をもっと若いころに嫉妬けばよかったと思ってるんだ。きみたちの時間は、心は有限。でも、だからこそ、無限に楽しいものや素敵なものを詰め込んで、最高の心の世界を作って欲しいと、おもっているんだ。


あ、猫糞は時間経つとトキソプラズマっていう原虫(寄生虫)が危ないからできれば新鮮なのを使いなね。ふるいの投げるなら手袋するんだよー。ウンコじゃなくて納豆とか生ゴミとかでもいいかもしれないよ?君たちの好きなもんを投げりゃええ。んで、投げた話はかーさんが「よくやった!」って聞いてあげる。「それは違うんでなかろうか」という時もあるだろうけどさ。その日が今から楽しみだ。是非、牛糞よりナイスな兵器を見つけて報告して欲しい。人糞は考えたことあるけど、ちょっと人間の尊厳的にどうかと思ってやめたころもある。いろいろ試してもらいたいモノだ。


なんて思いながら、かーさんはジンジャースナップクッキー作ってるんですけど、この組み合わせはちょっとやめたほうが良かったかな……と、反省しているのでした…


あー。いいにおいだなー


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