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ある夜に出会った亡霊

さっきの話なんだけど

夜中の授乳後、再入眠しそびれて布団の中で携帯いじったりしながらむにむにしてたんです

そうしたら、ぽんちゃんがほんのり起きて布団と一緒にこっちにむけて芋虫みたいに移動してきたからそれを軽く抱き寄せたら

自分の鼻から、シュピン!って珍妙な音がした。
しゅぴん!というか、シャぽん!というか…
昭和アニメのショットガン系光線銃の発射音のような、音。
たしかにした。
たしかにしたし、その時の外れるような、抜けるような感覚も、おぼえてる
おぼえてた。

ついさっきまでは

でも
たしかにしたよな?どんな音だっけ?と考えている間に
何が起こったんだろあの抜けた感はとか考察している間に
音の記憶はどんどんあいまいになり
感覚の記憶もどんどんうすれ

したことすら、だんだんあいまいに溶けて

結局なんだかよくわからないもやもやになり
そして、完全にわからなくなった


この記憶すら、数時間のうちに消えるだろう

もし、どこかに即座に書いてたとしても「ふーん、そんなことあったっけ?(あいまい」で終わるだろう。


こうやって、とても面白く思ったことすら、消えてしまうのだ
風の中の、雲のように
あんまりにも、あっけなく


記憶は、発想は、アイデアは、こうやって生まれては消えていく
言葉も声も、曖昧になって消えていく。消えていってしまう。

文字は残る、残るけれども
書いた後に読み返しても、きっともう、しゅぴんもしゃぽんもわからない
その事実は、もう過ぎ去ってしまっているのだから


ああ、もう完全に思い出せない。

あったことさえ、消えてゆく


そんな小さな夜のお話


を、捉えてわたしははり付けたのだ
書き記すことで、言葉に落とすことで。
わたしはそれを、捉えて、ここに、はりつけた
本来はもう、ここにいないはずの、それは
あわれにも、ここに、晒されたんだ


そうだこれは、そいつの亡骸
あるはずなかったあいつの亡骸


張り付けられたあわれなソレは
確かな形も持たぬまま
よまれはするから再生されるが
とるにたらないそんざいなので、心に浮かぶがまたすぐ消える

亡骸 抜け殻 あいつのカラダ そいつの息吹
誰も知らない最初の音は
だれにも再現できずに、聞いてもらえることもなく、こうやって屍を晒し続ける


これは記録
自傷のような、自虐のような
賛歌の記録を、ここに、うちつける


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